図書館に 集う翁や コロナボケ
老境自在(31)
今日もまた図書館に行った。いつものように図書館の入り口近くにある新聞と週刊誌コーナーのソファーに座り、週刊新潮を読んでいると、背後から諍いの声が聞こえてきた。館内は静まりかえっているので、「新聞は1度に1紙しか読めないのに、2紙持ち出すなんて迷惑だ」と甲高い老人男性の声がハッキリ聞き取れた。怒られた人は反論はしていないようだった。振り返ると1人の老人がそそくさと図書館を出て行くのが見えた。
やれやれと思いながら週刊誌を読み続けていると、また背後の席からなんだか険しい声が聞こえてきた。「図書館ではマスクを付けなければならないのですよ」と老人男性の声。そこにちょうど通りかかった職員がいたらしくて、「私の方でお客様にはお話ししますので」、「申し訳ないのですが、マスクを着けていただけないでしょうか」と若い男性の声。「話すわけではないのだから、マスクをする必要はないでしょう」と苛立った女性の声。女性は席を立ったようだったが、その後どうなったか分からなかった。
こんな諍いが起こるのは、老人のわがままによるものか、それともコロナ禍で人々にストレスが溜まってることによるか。歳を取れば取るほどわがままになっていくのを自分も実感している。歳とともに我が身のことを御することで汲々とするようになり、他人のことを慮る余裕がなくなる。
一般的には、コロナ禍で人々にストレスが高まっているのは事実であろう。しかし、老人はもともと行動力が衰えているので、緊急事態宣言が出たからと言って行動パターンに大きな変化があったわけではないだろう。だとすると、老人のストレスが特に高まっているとは思えないので、諍いは老人のわがままが引き起こした可能性が高いことになる。このように考えると、今日たまたま出くわした諍いは、今に始まった訳ではなかったのではないかと思えてくる。職員の対応が落ち着いている感じがしたのは、あのような諍いには慣れていたからだったのかもしれない。