2023年読んで面白かった本(人文社会科学多め)

年末に書くやつを書きました。今年出版された本は少なめ。


社会科学

現代経済学 ゲーム理論・行動経済学・制度論

経済学と一口にいってもいろいろあって、どこから手をつけていいか分からなくなるが、本書を読めば、これまで経済学が辿ってきた流れと、各分野の特徴が分かる。おすすめ。

プロパガンダ[新版]

古いけど現代にも通じる示唆があり、面白かった。
この本自体が著者の職業のプロパガンダとなっている点も面白い。

歴史

検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?

この夏話題になってたブックレット。ネットで言われるナチス擁護論について検討している。短いのでサクッと読める。読書案内もついてて親切。

戦争の地政学

今年出た本。地政学に関してははじめにこれを読んでおけば間違いないと思える良書。というか他の本はビジネス向けのライトすぎるものだったりして体系的に学べる書籍が少ない。

興亡の世界史 地中海世界とローマ帝国

古代ローマ史には世界史のすべてが詰まっているといっても過言ではない。
ローマ史はコンテンツ力が高すぎる。特にハンニバルとスキピオという2人の超天才がぶつかり合うポエニ戦争は、完成度の高い物語を読んでるような気持ちになる。
世界史入門者はローマ史から見ていくといいかもしれない。飽きずに読める。

サピエンス全史

今年文庫化されたので改めて読み直した、とかではなく、完全に初読。内容については今更特に語ることもないであろう。人類史の面白さを再認識させてくれる良本だった。
この本を読んで家畜の扱われ方があまりにもかわいそうだったので、ヴィーガンになろうとしたが、食べ物に気を遣うのが本当に難しくて、結局今までと変わりない食生活を送っている。私は弱い…。

人文

人文知1 心と言葉の迷宮

東大文学部の先生方による全編書き下ろしの人文知シリーズ第1作。
この巻では言語に関する話が扱われる。とても面白いのに読んでる人が少なそうなのはなぜなのか。書籍情報から内容があまり分からないこと、値段が微妙に高いことが原因な気がする。

哲学・思想・宗教

はじめてのウィトゲンシュタイン

Kindleの日替わりセールで安かったので購入した。
ウィトゲンシュタインは名前だけ知っているくらいでその哲学については1ミリも知らなかったが、『論理哲学論考』7節の「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」というキラーフレーズがかっこよすぎて、理解したいと思ったのが学習のモチベーションになった。

本書はウィトゲンシュタインの人生を概観しながら、前期、中期、後期の思想について取り扱う。思想はもちろんのこと、本人の人生がなかなか面白いので、伝記としても楽しめる。

ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考 シリーズ世界の思想

『はじめてのウィトゲンシュタイン』を読んで岩波文庫の『論理哲学論考』に挑戦したが、難しすぎて2節で挫折してしまった。
なのでまずは解説書をと思い角川選書の『ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考』を読んだ。
ところどころ難しい箇所はあれど、「論考」を理解するための助けになってくれる本。

社会契約論/ジュネーヴ草稿

岩波文庫版と光文社文庫版があるが、光文社の方はジュネーヴ草稿も収録されていてお得じゃん?と思ってこちらを読んだ。実はジュネーヴ草稿はまだ読めていないが、内容は大体同じだと思う。

わたしがここで調べたいと思ったのは、人間のそのあるがままの姿において捉え、考えられるかぎりで最善の法律を定めようとした場合に、市民の世界において、正当で確実な規則というものがありうるかということである。

ルソー(2008)『社会契約論/ジュネーヴ草稿』, 中山 元(訳), 光文社, p.17

ルソーの結論としては「できらぁ!」ということだった。それを実現するのが社会契約。
個人的に、市場経済をルソーの社会契約説のアナロジーとして考えてみるのが面白かった。

唯識の思想

大乗仏教マジですごいな、という感想。昔からこんな体系的な思想があったことに驚く。
西洋哲学では19世紀に入ってから考え始めたことを、東洋ではかなり昔から考えていたりする。


世界哲学史1, 2

ちくま新書から出ている世界哲学史シリーズの1, 2を読んだ。1, 2は古代の思想について扱っている。
時代、地域を超えて哲学を網羅的に学べて、なおかつ難易度のバランスがちょうど良い。

ニコマコス倫理学

アリストテレスが幸せについて本気出して考えてみた本。翻訳者による解説が超丁寧。解説のおかげで読み切れたまである。
これまでいろいろ検討してきた内容を最終章で全部捨てて、「結局一人で思案する生活が一番いいよね!」とアリストテレスが謎に結論づけた理由についても、ちゃんと解説してくれている。

啓蒙思想2.0〔新版〕──政治・経済・生活を正気に戻すために

直感は便利だけど弱点もあるから、やっぱり理性でコーティングしなきゃだめだよね、ということを主張する本。現在の自分の思考のバックボーンになった感じがする。

文芸・小説

今を生きるための現代詩

詩って全然わからね〜!と思い、手に取ったのが本書。詩の世界へのハードルを下げてくれる良書。

プロジェクト・ヘイル・メアリー

記憶喪失の主人公が目を覚ますところから物語が始まるので、何を書いてもネタバレになる。エンタメ作品として面白かった。

悪童日記

以下の動画で小島秀夫が一瞬反応していた本。

なんかタイトルに聞き覚えがあるなと思ったら家にあったので読んだ。
淡白な書き味でとても自分好みだった。レトリックで殴ってくる本よりこういう本が好き。

プログラミング

なっとく!関数型プログラミング

関数型プログラミングについて丁寧に学んでいける良書。
モナドなどなんだのという専門用語でいきなり殴ってくるようなことはしないので、安心して読んでほしい。ただプログラミング自体が初心者の人にはおすすめしない。ある程度開発経験ある人向き。
多くのシステム開発ではオブジェクト指向型プログラミングが使われていると思うが、近年は関数型プログラミングのエッセンスが言語機能として取り入れられているしているので、関数型プログラミングにまったく接点がない人は少ないと思う。そういった意味で、全開発者におすすめ。

漫画

税金で買った本

https://magazine.yanmaga.jp/c/zeikindekattahon/

図書館で働く人たちを描く漫画。
図書館の仕事のつらさ、ギスギスした人間関係など、ちょいちょい闇の部分が出てくるのが良い。
主人公の石平くんは好奇心旺盛な不良少年。自分の好奇心を満たすためなら手段は問わない、その姿勢を見習いたい。

スケルトンダブル

これを入れるためにこの記事を書いたといっても過言ではない。
数日前にジャンプ+で初めて読んで、即全巻購入した。面白すぎる。
いわゆる能力バトルもの。一見すると淡白なのだが、実はすごく人物描写や物語が練られているように感じる。ワールドトリガーが好きな読者は好きだと思う。まさしく遅効性SFです。流行れ。

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