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『三体III 死神永生』

やふぅー٩( 'ω' )و
今回は、読んだ本の感想を書きます。
※ ネタバレなし

劉慈欣 『三体III 死神永生』 大森 望/光吉さくら /ワン チャイ/泊功訳
  (早川書房 、2024)

ついに読み終えた、『三体』最終巻。

去年、文庫本版の発売日に家に届くようにネットで買った本。
ずっと楽しみにしていた最終巻!!
ですが、本読めない時期をひたすら更新していたので、
2025年の2月に最終巻をやっと読み終えた(という訳で2巻から最終巻読了まで長かった)

この本、時間も空間も超えていくので、感想文を書くのは至難の業。
まともに感想を書こうものなら、章分けしたくなるくらいに書くことがあるくらいのボリュームがある。
それは避けたいので、さらりと感想を書こうと思う。

文章構成は、相変わらず素晴らしいものがある。

上巻では、全巻までの話が短く纏められたあらすじから始まる。
あーそうだった、そうだった。
暗黒森林(2巻)で、これを超えるものはないだろう!!と思ったら、
3巻で「死神永生」 ドーーーン!!!!

上巻の始まりでは、コンスタンチノーブルが舞台。
魔女が出てきたりなど、は?ってなりながら、歴史の中での話が読んでいく。
三体は全体的に、そのタイトルの示す通り宇宙が舞台だが、宇宙規模で空間も時間もすっ飛ぶ話だ。

読み手にとって、カイロス的(時間)な話の流ればかりだと、話の中を彷徨いそうになるからなのか、歴史を追うことで地球での我々の時間(西暦時代、クロノス的)を思い出す。

脳だけ宇宙に飛ばしたりしていたけど、そういえば1巻では地球がメインで始まった、この壮大なスケールの物語。

時間を超えるので、I、II、IIIと話が進む度に主人公が変わる。
時間を超えるというのは、冷凍保存して100年単位で生きる時代を跨いだり、半世紀後に目を覚ますことがあるからだ。

下巻では、脳だけ三体人の手に渡った雲天明と、3巻の主人公である程心のやり取りから始まる。
これもまた、「昔、一緒に話を作ったよね」(雲天明と、程心)という、西暦時代のの話が語られるところから始まるので、途中「三体」を読んでいるこを忘れそうになるほど緻密に作られている。

3巻は、上巻の始まりでコンスタンチノーブル(歴史)
下巻の始まりは、作った話から始まるので、上下巻とも、最初はこれはどういう意図があるんだ?となる。

下巻の「お話」で雲天明が程心に与えたヒント(解釈)が気持ち良過ぎてたまらない。
話が進むほど、ページを捲る手が速くなる。
昔話にありそうな話の中に、宇宙で生き抜くためのヒントが散りばめられている。
話を作ることも、この話を譬えにする雲天明が天才過ぎだが、それ含めて全部頭の中に入っている、劉慈欣が秀才過ぎる。
想像力(≒創造)天文学、物理学、この話を書き纏め上げる文章力。
すご過ぎる。

2巻で恋愛要素が出てきた時には衝撃だった。
3巻の雲天明と程心の話は、恋愛的というか雲天明の片思いから始まる。
想像するような恋愛的な話ではないけれど、愛をテーマに考え(恋愛より大きなスケールで考えた場合)たら、個人的にこの話はハッピーエンドだと思う。
美しいとしか表現出来ない、古典的な愛の美しさだと思う。

さて、この物語は空間もすっ飛ぶ壮大なスケールの話である。
三体人がやって来て、一時は地球人と仲良くするも、結局乗っ取られて人類は全員オーストラリアに住めと言われることもある。
前作で、主人公だった羅輯(面壁者、執剣人)の作戦が活かされて(と書くのが適切かは不明)三体人と地球人は決別する。

3巻「死神永生」では、主人公の程心たちが時間を超え、木星の裏側で生きることを余儀なくされるところから、物語はさらに壮大さを増す。
まず、四次元という言葉が何度も出てくるあたりで想像力をかなり働かせることになる。
さらに、”紙切れ”(長方形膜状物体)と呼ばれる、人類存続の最大の危機となるものの存在。

「四次元が三次元に崩潰するように、三次元空間も二次元空間へと崩潰するのかもしれません。ひとつの次元が量子レベルに小さく折り畳まれるのです。あの二次元空間のスライスひとつが占めているの面はーー面しかありませんーー急速に拡大し、さらに多くの三次元空間がそこに落ちていくでしょう。われわれはいま、二次元に滑落していく三次元の宇宙空間にいる。最終的には、太陽系全体が崩潰ゾーンに入るでしょう。つまり太陽系は、厚さゼロの絵に変わってしまう」

劉慈欣『三体III 死神永生』大森 望/光吉さくら /ワン チャイ/泊功訳
  (早川書房 、2024)下、375頁。

”紙切れ”、クレジットカードほどのダークマター(暗黒物質)のようなものだろうか。
太陽系全体が崩潰するという、この物語の大きさが伝わるのではないだろうか。
とんでもない力の現象を避けて、人類は生き残れるのであろうか。
雲天明を含む、先人たちの叡智を超えた問題にぶつかることになる。
いよいよ、終わりを迎えるのかと思いきや、冥王星で200歳を迎える羅輯が登場する。
かつての面壁者であり、執剣人だった彼は老人となり墓守となっていた。
もうね、この辺から内心ツッコミを止めるわけだよ、追いつかんから。

生き残るのは無理かな?最後、どうなるんだろう?!
羅輯と別れた後は、想像つかぬまま、ページを捲るしかない。

ネタバレなしなので、これ以上内容については書かない。

1〜3巻で、どれが1番面白かったかと考えてみたが、結局のところはどれも面白かった。

1巻では、文化革命時に絶望した葉文潔が「こんな世界はぶっ壊してくれ」と、宇宙に発信する。
この時から、三体と地球(人類)のやり取りが始まる。

ぶっ壊してくれ!!と勝手に信号を送られて、世界中がどよめき、各国の物理学者などが集結し、400年後の戦いに備える。

最後まで読んで思ったのは、歴史とは人の想いが紡ぐものだということだ。
だから、1巻で三体人は思想を根こそぎ壊すことにしている。

生きていくために、死ぬ。
そういう意味で、3巻の「死神永生」(死神は永遠に生きる)も、読み終えた後にはタイトルの凄まじさに驚く。
三体人もまた、最初は自分の星では生きられないから、信号を発信した。
つまり、彼らも人類と同じく生命を望んだものたちだ。

生きるために死に、死ぬために生きる。
そうであるならば、死は生き続けているのだ。
死とは、生あるものに与えられているものである。
つまり、死が生き続けるというのは、生命が生き続けることでもある。
生命とは、それは人の想いでもあるのではないかと思う。


『三体』、何度も繰り返し読みたい面白い本の1つだ。







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kai@宇宙🚀note2022〜
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