#35 デザインの学習を成功させるコツ:「才能はだれにでもある。そこは疑わない。」
だれでも「自分には才能がない」とか、「才能がある人が羨ましい」と感じることがあるかもしれません。「才能」という言葉は、「デザイン」とセットでよく検索されているようです。今回は、デザイナー夫がデザイン講座で教えるデザインを学ぶ上での大前提:「才能はだれにでもある。そこは疑わない方が良い」についてレポートします。
「才能はだれにでもある」とは?
「才能って何?」という深〜いテーマはここでは書きません。まずここでは、
・デザインに必要な能力は幾つもあること
・みんな才能を持っているけど、個体差があること
この2つの大前提に気付いてもらうために、デザイナー夫が普段の授業で伝えていることを書きたいと思います。
デザインの能力は複合的で個体差がある
そもそもデザインに必要な能力とは何でしょうか?
例えば、観察力・バランス感覚・色彩感覚・思考力・共感力など、幾つもあります。つまりデザインの才能と一口にいっても、それは複数の能力が組み合わさった複合的なものだそうです。
つまり「デザインの才能」とは、「ある・ない」の話ではないようです。そして、能力には個体差もあります。ある人は観察力やバランス感覚に長けているかもしれませんし、ある人は色彩感覚が優れているかもしれません。デザイナー夫曰く、自分を他の人と比較して持っていないものを嘆くよりも、持っているものに注目するほうがずっと建設的です。
では、「自分が得意なことってなんだろう?」と考えたことがあるでしょうか?
だれにでも不得意分野があるように、みんなそれぞれ得意分野も持っているものです。それでも(デザインに限らず)何かを学ぶとき、多くの人は自分の「不得意分野」に注目しがちではないでしょうか。できていないところはわかりやすいですし、恥ずかしく感じるものだからです。
逆に、自分の「できること」にはあまり注目しないかもしれません。確かに謙遜さは美徳です。得意と思う分野も、他の人と比べると普通ぐらいに感じるかもしれません。それでも「自分にはこれができる!」という意識は、学びや成長のためにとても大切なことのようです👀不得意分野を改善して平均値を上げるよりも、得意分野(才能)をさらに伸ばすほうが、実は効率的なんだそうです。
「能力」を伸ばす仕組みこそ、教育のテーマ!
『良いデザイナーになれるかどうかが、天賦の才能だけで決まってしまうのであれば、デザイン教育にはあまり意味がありません。むしろデザインの才能(自分のもっている良いもの)を、体系的な訓練によって伸ばし拡張できるからこそ、教育や学校というシステムが成立するのだ』とデザイナー夫は言います。
では、どうすれば才能(自分の持っている良いもの)をさらに伸ばすことができるのでしょうか?いくつかの秘訣があるようです。
一つは、『創造やデザインに見られる基本的な型』を知ることです。デザイナー夫が教えている美大の授業や「デザインの出前授業」では、その『基本的な型』をわかりやすく説明しています。デザインの基本的な型を学ぶ大切さについてはこう言っています。
創造に見られる「型」を意識的に自分のデザインに組み込むことで、美大生の多くが、飛躍的に能力を伸ばしてゆく様子を現場で見てきました。もちろん反復練習が必要ですが、「型」を意識できているかどうかで成長の速度が全然変わります。(ストアカ講座紹介ページより引用)
そして、もう一つの秘訣は、最初に述べた「自分が持っている良いもの」に注意を向けることです。実際「自分は才能がないのではないか」と疑問に思うこと自体、時間の無駄であるとデザイナー夫は言います😲
美大の場合、15週間に及ぶ1学期の中で、デザイナー夫は学生一人一人に注目し、それぞれの得意分野を見つけ、それを学生に気づかせています。どのようにそうしているかというと?
褒め言葉のサンドイッチ
学習者に自分の優れた能力を自覚させる一つの方法は、ズバリ「褒めること」です。
美大の授業では、ほぼ毎週のように講評会がありますが、先生からのコメントとしてデザイナー夫が心がけているのは、積極的なフィードバックをすることです。作品のどこが特に優れているのか、きちんと根拠も説明して伝えています。
学生たちは、とかく見た目の造形力に注目しがちです。しかしデザイナー夫は、綺麗な見た目のさらに奥にある思考力や発想力、分析力なども、褒めているようです。デザインのプレゼンだけでなく、普段から学生のことをよーく観察し、褒める点をいつも探しています。
完成したプレゼンだけでなく、そこに至る分析や試行錯誤の過程、さらに時間を守ることへの意識などを評価された学生たちは、自分の「デザイン力」が表層的な上辺だけのものではないことに気づき、とても嬉しそうです。そういうとき、学生たちは「目を輝かせて」いるそうです。他の学生も、それを聞いてクラスメイトの優れた能力を認め、学び合う機会になっているようです。
この1年は自宅でのオンライン授業だったので、【デザイナーの妻】は、学生たちの表情こそ見れないものの、嬉しそうなやり取りは何度も聞くことができました。
デザイナー夫は、ひとしきり褒め言葉を述べたあと、改善できるポイントを一つか二つサラッとコメントし、最後にもう一つ褒め言葉を述べてフィードバックを締めくくります。褒め言葉に挟まれたアドバイスほど、学習者にとって受け入れやすいものはないと【デザイナーの妻】は感じます。
積極的なフィードバックを受けられる環境の大切さについては、観察日記#21で詳しく書いています。よかったらご覧ください。
自分の努力を思いきり褒めてもらったり、作品が喜ばれた経験は、デザインの学習に不可欠です。それは「自分の才能」に気づかせてくれます。「自分はこの分野で力を発揮できそうだ」と感じることは、モチベーションをぐんぐん高めます。最初は、小さな芽にすぎなかった能力も、気が付くとその人にしかできない「才能」に成長してゆきます。実際、得意分野に引っ張られて、自然と不得意分野も底上げされていくとのことです!
そんな素敵な気づきが、デザインを学習されている方にもたくさんありますように!観察日記#35、読んでくださってありがとうございました!
追伸:今回のレポートは、デザイナー夫の「デザイン出前授業」で50回以上、そして美大の授業でもずっと聞き続けている内容でしたが、とても大切な点なので、デザイナー夫に推敲・校正作業をお願いして完成させました。
使わせていただいているイラストの製作者は、なのなのなさんです。