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吉田秀和「LP300選」(「名曲三〇〇選」)関連の振り返り

とにもかくにも。
「吉田秀和チョイス」の300選を動画コミで見ていくという当初目標は、前回までの記事である程度達成したと思います。

この記事は、その振り返りと言うか、思いついたことを、思いついた時に書き足して行くスタイルの記事にするつもりです。
だから「完成形」みたいなことは考えません。どこまでも未完成な記事です。

※こちらにも念のため。記事内に貼っている演奏類は、楽団公式動画、著作権切れの録音などに限っています。




スペシャルサンクス的に:まず、次の5つのYouTubeチャンネルの動画には極めて助けられました。感謝。「神」。

hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)https://www.youtube.com/@hrSinfonieorchester

EuroArts
https://www.youtube.com/@Euroarts

Brilliant Classics
https://www.youtube.com/@BrilliantClassics

オペラ対訳プロジェクト
https://www.youtube.com/@Opera89

Deucalion Project
https://www.youtube.com/@deucalionproject2407

* * * * *

Classical Music//Reference Recording(CM//RR)はあまり使わなかったけれど、覚えておくと役に立ちそう。昔の録音を見事な音質で蘇らせています。
https://www.youtube.com/@classicalmusicreference

上ほどのインパクトはないけど、地味にありがたい
Restoration Archive
https://youtube.com/@rs3darchive

あとは、

France Musique concerts
https://youtube.com/@francemusiqueconcerts

Südtirol in concert
https://youtube.com/@suedtirolinconcert

wocomoMUSIC
https://youtube.com/@wocomomusic

DW Classical Music
https://youtube.com/@dwclassicalmusic

WDR Klassik
https://youtube.com/@wdrklassik

AVROTROS Klassiek
https://youtube.com/@avrotrosklassiek

……とかが、なかなかクオリティの高いコンサート動画を


どうやら(うすうすの感じなのですが)フランス国立図書館(BNF)が、手持ちの古いレコードを再生した音源を YouTube に "放流" しているっぽいですね。
ただ、そのうまい引っ張り出し方を見つけられません。あれこれ検索しているうちに、引っかかったら儲けもの……ぐらいの感じです、今のところ。
「bnf collection」とかで検索しても、あんまりはかばかしい結果には




岡田暁生著「CD&DVD51で語る 西洋音楽史」は、「LP300選」と似たアプローチ。

とは言え、こちらはこちらで論の立て方が面白いので、「300選」好きの方は比較対象として、この本も読まれると良いかも。

(→こっちでも一本、書いてしまいました。)

【上の稿を書いているうちに確信しましたが、岡田先生、絶対に「LP300選」を強く意識してますね。この本で取り上げられているのは「LP300選」が「たまたま語らなかった曲」ばかり。実にそういう曲ばかりが絶妙に(?)選択されているのです。
これが、吉田先生の名著に対する謙遜からきているのか、あるいは一種の対抗心(吉田先生の語らなかったところから、自分流の音楽史語りを構築するのだ、みたいな)からきているのか、は分かりませんが。どちらに受け止めても興味深いです。】




こうやって、300もの名曲を、基本的に無料で視聴できるような記事を作るのって、音楽演奏で生活している方から見れば腹立たしいかもな、と思います。

それでも、あえてこういう記事を作ったのは。

一つには私が「LP300選」に出会った時以来の夢想──
「300曲全部揃えたレコード棚を作ってみたい」「300曲全部のCDを揃えて、mp3にエンコードして、パソコンのフォルダにずらっと並べたい」、等々──
を、ついに実現できる機会が来た気がしたからですが。

(その点では、幸いにも、かつての子供時代の夢想以上の形にできたと思います。)

後になって、こんなことも思いました。これは自己弁護に過ぎないかもしれませんが……。

「今、自分がやらなくても、こういうことはいずれ誰かがやるだろう。それも──ロクに知識も無いばかりか、ことによると、音楽への愛さえ持ち合わせていないような人間が、単なる小遣い稼ぎのために、クオリティの低いページを作ったりするかもしれない。」

(今後、AIがますます発達すると、それくらいはパソコンが勝手にやってくれるようになるかもしれませんね。)

「そんなことになって後悔するくらいなら、今、自分がやる。」

そんなことを思いました。

さらにもう少し踏み込むなら。
「LP300選」(名曲三〇〇選)に登場するほどの、音楽史上の重要曲は、これからは全人類が当たり前のように無料でアクセスできる、知的共有財産になるのだ。そうあるべきなのだ……と。
そんな壮大なことを思ったりもしました。




※著作権がらみのことを変に確定的に書くと、あとで(単に、シロウトの勘違いというだけでなく、諸々の力学が作用して)話がひっくり返るおそれがありそうだから、ここにこっそり書きますが。

あくまで日本国内に限って言えば。
・1967年(この年を含む)までにリリースされたレコードについては、「演奏家の著作権」は切れている(作曲家の著作権はまた別)。
・1953年(この年を含む)までに公開された映画は著作権が切れている。
(今後は、例えば1954年公開の映画は2025年1月1日に著作権切れとなる……等々。)

……という理解で良さそうっぽい?(確定的には書きません^_^;)。

ところでクラシック音楽系には特によくある「ノイズを除去したリマスター版を再発売」みたいなものはどう考えるかですが。

とりあえず、次のサイトの記述を参考にしようと思っている……とだけ書いておきます。
(2010年の文章ですが、今日までにガラッとルールが変わったとも思えませんので……。)
https://techvisor.jp/blog/archives/1101

海外に目を向けると、ご近所さんであるアジアの各国・地域には著作権の保護期間が50年という国も多いようです。そういう国に滞在する機会があったら、「ここでは既に著作権切れ」なブツを堪能しまくるのも悪くないかも(?)。




「LP300選」からは漏れているけれど、自分なら絶対にこれは入れたいという曲は、どんなのがあるかなぁと考えて……

パッヘルベルのカノン、グリーンスリーヴズ、モーツァルトのディベルティメント(K.136〜138)のことは、以前に語りました。

また、ブラームスのヴァイオリンソナタ第1番はズルして300選に紛れ込ませました(^_^;)。

* * * * *

音楽史という観点では、宗教改革時にルターらがたくさん作ったというコラール(本来は単旋律のものであるらしい)も見逃せないのでは、と思いはじめています。
その後の音楽に与えた影響という点で、ある意味では、グレゴリオ聖歌に迫るくらいの重要性があったのではないかと(?)。

まぁ私には詳しいことは分かりません。
そういうCDとか動画(あくまで音楽史的な目線に適うもの)も、どれだけあるのかよく分からないです。

とりあえず。ルター作で、代表的なコラールだという "Ein feste Burg ist unser Gott" 「神はわがやぐら」の動画を貼っておきます。


イザークの「インスブルックよさらば」 "Innsbruck, ich muß dich lassen" はコラールに転用され(O Welt, ich muß dich lassen)、さらにバッハやブラームスの曲にも用いられたようです。


これに関しては、次の動画がいろいろ勉強になりました。




トゥリーナ(Joaquín Turina)のピアノ三重奏曲は第1番も第2番も「名曲」だと思います。

第1番

上はハイフェッツらによる、1967年の録音のよう。

第2番


* * * * *

ショパンのピアノ・ソナタ第2番は、私の好きな曲というわけではないのですが、第3楽章の有名な葬送行進曲だけの価値でも、入れておきたいような。


* * * * *

シューマンの交響曲が選から落ちたのは、まぁしょうがないのでしょうが、時々聴きたくなるので、一応まとめ動画を。バーンスタインの1960年の録音とのこと。


ついでに(苦笑)メンデルスゾーンの交響曲全集も。これは1967年の録音。


* * * * *


プロコフィエフの弦楽四重奏曲は第1番も第2番も、出だしはすごく好き。
ただ、特に第1番は途中から今ひとつ興味が薄れたりすることも。
とりあえず参考までに。

第1番


第2番


プロコフィエフの古典交響曲が300選から漏れているのも残念。
個人的には、いっそ交響曲全曲を、「脱線」扱いで貼りたいぐらいだったのですが、良い「まとめ動画」が見当たりませんでした。

とりあえず

交響曲第1番(古典交響曲)

もう一つ。(次の2つはURLの形で)

https://www.youtube.com/watch?v=Oct-7UMwqpM

交響曲第2番

https://www.youtube.com/watch?v=3xIsfjCxPKE

交響曲第5番


個人的な思い出話をしますと。
ゲルギエフ/ロンドン交響楽団がプロコフィエフの交響曲の全曲演奏を東京・サントリーホールでやったことがあって、それは全部聴きにいったのですが。
(今調べたら2008年のことですね。)

ある日、天皇・皇后両陛下(2024年現在では上皇・上皇后両陛下)が聴きに来られたんで、さすがにびっくりしました。
(私は、皇族の方々のオーラにひれ伏す的な話は全く好きではありませんが、それはそれ。)

そのすぐあと、(当時の)天皇陛下が体調を崩されたとのニュースが出て。
「これはゲルギエフの爆演にアテられたのでは」などという「説」が、まことしやかに流布したものでした(一部の音楽ファンに)。


それから有名な「ペーチャと狼」

次の動画はプロコフィエフにこの曲を委嘱したナターリヤ・サーツが案内と語りを務める貴重なもの。
これは「ちゃんとした権利者」からクレームがつくことなど、およそ考えられないと思うので、下に貼っておきます。

(ソ連崩壊後は、旧ソ連時代の文化資産も市場価値が暴落=タダ同然となって、「勝手にしてくれ」的に捨て置かれているようなところがあるようです。良くも悪くも……。)


* * * * *

ハチャトゥリャン(Арам Хачатурян / Aram Khachaturian/ Արամ Խաչատրյան)は、私、ひところすごく好きで。

この人はもちろん「剣の舞」で有名だけど、それを含むバレエ「ガヤネー」(ガイーヌ)(Гаянэ / Gayane / Gayne / Գայանե)は、組曲の自作自演盤とか、あるいは、チェクナヴォリアン(Tjeknavorian / Чкнаворян / Ճգնավորյան)指揮の全曲盤とかが最高です。
バレエも、作曲者指揮による映像とか残っていて、これはすごくいいんですが。

ただ、この作品、「民族的」なノリをしっかり出せる演奏者/バレエ団でないとダメダメなんです。
とは言え、そんな団体は明らかに限られるので。事実上、旧ソ連の、それも一部のバレエ団決め打ちで作ってるような作品なのかも。

そのせいか、バレエのDVDとか見ても、なかなか「これ」という感じにはならなくて──管弦楽作品としてはともかく、バレエのレパートリーとしては残らなかったのも、まぁ仕方のないことかもしれません。
「スパルタクス」はそれなりに残っているようなのですが。

(追記:そう言えば忘れてましたが、この作品、あとで改作されているんでした。まったくの改悪でしかないというのがもっぱらの評価のようですが。この改作にもいろいろ理由はあるんでしょうが、「○○バレエ団決め打ち」みたいなところから脱したいというのも、ひょっとしたら理由にあったのかもと、今にして思います。)

追記その2:
チェクナヴォリアンの演奏が下のサイトで試聴できるじゃないですか! 騙されたと思って、一度聴いてみてください。

「つるぎの舞」はDisc 2枚目のトラック9ですが、同じDisc 2枚目のトラック1「レズギーンカ」も良いです。
ハチャトゥリアンが指揮しているバレエの映像で見るとさらに良いんですけどね。これは次のDVDの特典映像でした(Amazon の販売ページより)。https://www.amazon.co.jp/Gayne-Ballet-DVD-Bolshoi-Theatre/dp/B000RW3YOK

正直、「メイン」のラトビアのバレエ団の上演の方は……。ボーナスの自作自演の映像がすべてをかっさらっていくようなDVDでした(^_^;)。

追記その3:
吉田秀和先生が「ガヤネー」を酷評している文章を見つけてしまいました。とりあえずの感想は「若い頃にこの文章読んでなくて良かった」と(苦笑)。
(ここはあとで大幅加筆の考えあり。工事中。)


ガヤネーの話が長くなりました。あとは、ヴァイオリン協奏曲も、何度も聴いているとちょっと飽きる面がありますが、なかなかしっかりと作られた名曲。

「日本国内の著名な企業・団体が公式で上げている動画はアリとする」(261〜280の回)の流儀によりまして、次の動画を。


* * * * *

ある意味、ハチャトゥリャンと「行き方」が似ているかもしれず、にもかかわらず、人気があるような、無いような伊福部昭。
これは「ゴジラ」のテーマがあまりに有名になってしまったことの弊害なのかもしれません。クラシック音楽の作曲家というより、何か「イロモノ」的な目で見られがちというか(東京音大の学長にまでなられた方だというのに)。

でも、いちいちの引用は避けますが、吉田秀和がヤナーチェクのところで言ってる評価は、ほとんどそっくりこの方にも当てはまると思います。

そんな次第で、「交響譚詩」は日本人の作った最高の交響作品の一つだと思います。
「土俗的三連画」「タプカーラ交響曲」も(やはり、何度も聴いているとちょっと飽きる面はあるけど)、傑作と言って良いでしょう。
個人的にはタプカーラ交響曲を初期稿でも聴いてみたい気がします。

とりあえず、ナクソスジャパンの公式動画から
タプカーラ交響曲の第1楽章と


(私自身はそこまで好きでもないですが)日本狂詩曲の第2楽章を。


* * * * *

日本人の作品と言えば、矢代秋雄の「交響曲」も名作だと思います。
ただ、良い動画が見つからないので、ここでは名前のみ。

日本人の交響曲で思い出しましたが、黛敏郎の「涅槃交響曲」は「傑作」だろうか?……と。時々、「いい」と思うこともあるのですが、ちょっと評価に自信がありません。

(黛敏郎氏については……ある時たまたま立ち寄った東京藝大の売店で、お店のおばさまと立ち話する機会があって。その時、ちょっと興味深いコメントを聞かせてもらえました。それについては、いつか機会があったらどこかにこっそり書くかも。)


佐藤眞のカンタータ「土の歌」は、「LP300選」的に言うなら、名曲というよりは通俗名曲の範囲かも(新世界交響曲もこのカテゴリ扱いなので、お許しを)。とは言え、一度はちゃんとした演奏で聴いておきたい曲。何度も改訂されているようですが、個人的には最初の版が一番ではと思います。
(ストラヴィンスキーとかでもそうですが、「演奏を容易にするため」とかの理由で作られた版は、実演ならともかく、録音で聴くリスナーにとっては、わざわざ選ぶ理由はないですね。)
その点では1967年(?)の岩城宏之指揮の録音で聴くのが一番でしょうか。初出時のレコードの型番は「日本ビクター SJV-1514」で、この時点ではカンタータ全曲が(最終曲と同じ)「大地讃頌」という題だったようです。


* * * * *

現代曲もちゃんと押さえるべきなんだろうなと思いつつ、全く最近の動向とか分かっていません。

ミニマルミュージック系はひところ気に入ってそこそこ聴きましたが……。

ステーブ・ライヒの「ディファレント・トレインズ」"Different Trains" は、まず問題なく「名曲」でしょう。ほかにも、魅力的な作品がいろいろあるけれど、なかなか「愛聴」の域に達しません(しっかりと「掘っていない」せいもあるでしょうけど)。

ジョン・アダムズ(John Adams)の歌劇「中国のニクソン」"Nixon in China" は私にとってはいろいろな意味で興味深い作品。
それを別にしても「名曲」だと思います。

フィリップ・グラス(Philip Glass)の「浜辺のアインシュタイン」"Einstein on the Beach" は、時々、就寝時にかけて、そのまま寝る、なんていう用途に使ったりします(^_^;)。
この曲をCDできっちり「鑑賞」なんて、とてもする気が起きませんが、舞台で見るとまた違うんでしょうか……?

下の動画はホール公式のもの。抜粋。


* * * * *

シュトックハウゼンの「ヘリコプター弦楽四重奏曲」は、「イロモノ」として見る分には面白いと言いますか、動画をたまに見ると、結局最後まで鑑賞してしまうことも。
「愛聴」というのとは違うし、「名曲」かどうかも、疑問というか、私にはよく分かりませんが……。

* * * * *

アルヴォ・ペルトは評判良いですが、私には今ひとつピンと来ない感じ。
これもまだ「掘り方」が足りないせいかもですが。

* * * * *

次の曲をここに入れるのは全く場違いなのでしょうけど。

ギリシャのシンセサイザー奏者ヴァンゲリス(Vangelis / Βαγγέλης Παπαθανασίου)のアルバム「天国と地獄」"Heaven and Hell"。
これは分類上はもちろんポピュラー音楽。

ただ、私はこれを(言うなれば)「別位相のクラシック音楽」みたいに受け止めていたりします。

興味のおありの方は、お聴きになると良いかも。


あと、ヴァンゲリスは映画のテーマ曲、とりわけ「炎のランナー」"Chariots of Fire" のテーマですごく有名なのは、言うまでもないでしょう。
(ちょうど次の予告編で流れている曲)


* * * * *

最初が「宇宙の音楽」で始まった話だから、最後を「〆る」のはジョン・ケージの「4分33秒(4'33”)」が良いかも。
この「曲」も宇宙に遍在しているかもしれません。
私はこの曲を「愛聴したい」とは特に考えないですが、実際には日々愛聴しているような気もします(苦笑)。

(工事中)


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