吉田秀和「LP300選」(「名曲三〇〇選」)講読・鑑賞支援(No.261〜280)
(プロコフィエフ 〜 ベルク)
この回の前置き
この「企画」は、番号順にはこだわらずに書いています。前回は、まず「281〜300」 を先に「片付ける」ことにしたのですが、今回はそこから遡ってます。
その「281〜300」の回にも書きましたが、現代が近くなると、作曲家の著作権の問題も出てきます。
昔の作曲家の曲なら、演奏の方の著作権だけ考えればよく、楽団とかの公式動画や、1967年までの古い録音を見つけられれば、それで済んだのですけど。
ただ、ここに来てどうもよく分からないことが出てきました。
今回「登場」のストラヴィンスキーは1971年に亡くなったので、まだ著作権が生きています(2024年現在)。これは日本に限らずEU諸国でも同じだと思います。
(下に補足)
こんなことを書きましたのは……。
現実的にはストラヴィンスキーの動画など、いくらでも転がっていないか?……と思い。パッと確認してみたところ。
「春の祭典」なんかは、仏・独のオーケストラの演奏が公式で思いきり堂々と上がっていますね。
(↑例として掲げましたが、もし然るべき方面からお叱りを受けたら、上のリンクはすぐ消します。)
もちろん、ストラヴィンスキーの曲を演奏するにあたって、オーケストラは何かしら然るべき支払いをしているでしょう。
演奏自体については当然として、おそらくは動画のアップロードに関しても、別途。
それはそれで良いとして、さて、ではその動画を私の記事に貼り付けて紹介するのは、問題ないのか、何かしらの問題があるのか?
私にはさっぱり分かりません。
ただ、当面の間は無難に、「作曲者の著作権が生きている曲は、原則、動画を貼るのは避ける方向でいこう」と考えています。
【追記:日本国内の著名な企業・団体が公式で上げている動画は、さしあたり例外として扱おうと思います。これは常識的に妥当なラインではないかと。】
(補足)
がんばって検索したら、次のようなドイツ語記事が出てきました。
https://irights.info/artikel/musikindustrie-wie-das-urheberrecht-sich-anderte-3/9748
長いですが(もちろん?機械翻訳で読んでます)、2.2のところにこうあります。
「20 世紀初頭には、保護期間は 50 年に延長され、最終的には 70 年に延長されました。
たとえば、イーゴリ・ストラヴィンスキー(没年1971年)の作品は2041年まで、ドミトリ・ショスタコーヴィチ(没年1975年)の作品は2045年まで保護され、相続人の同意がある場合にのみ使用および編集できます。」(機械翻訳)
というわけで、「日本と違い、ドイツでは著作権が切れている」とかいうような話ではなさそうです。
No. 261- 280
261 プロコフィエフ(Sergey S. Prokofiev / Сергей Сергеевич Прокофьев)「ヴァイオリン協奏曲第1番」
261a プロコフィエフ「ヴァイオリン・ソナタ第1番」
もう一つ。
262 スクリャービン(Alexander N. Skriabin / Александр Николаевич Скрябин) 《ピアノ・ソナタ》
本文とリストに名前が挙がっているのは、結局、3番と6〜10番。本文の書きぶりに力が入っていることも考え合わせ、それだけは全部貼ることにします。
3番 op.23
6番 op.62
7番 op.64
8番 op.66
9番 op.68
10番 op.70
263 ストラヴィンスキー(Igor F. Stravinsky / Игорь Фёдорович Стравинский)「ペトルーシカ」(Pétrouchka / Петрушка)[ペトルーシュカ]
上に書いた「日本国内の著名な企業・団体が公式で上げている動画はアリ」の暫定基準より、次の「さわり」動画を。イープラス。
もう一つ。ナクソス・ジャパンのあげている短い抜粋。
巻末リストで、ピアノ独奏用の編曲(=『ペトルーシュカからの3楽章』)も参考にあがっています。これも同様に。アイエムシー音楽出版。
ストラヴィンスキー作品について付言。彼が「バレエ・リュス」と組んで作った曲は、やはりバレエとして鑑賞しないと、その真価が分からないと思います。これはもちろん、オペラやバレエ音楽全てに言えることではあるでしょうが、「バレエ・リュス」関連の作曲家たちの曲を聴く時には、特に意識した方が良いと思うのです。
264 ストラヴィンスキー「春の祭典」(Le Sacre du printemps / Весна священная)
ナクソス・ジャパンが作品冒頭から16分ほどの抜粋動画をあげています。
もう一つ。早大公式。
新国立劇場があげている次の動画は、「新解釈」とでも言うんでしょうか、元の「バレエ・リュス」の踊りとは大きく違うようです。が、それはそれで、舞台芸術の今日的なありようとは言えるでしょう。動画前半はドビュッシーの「牧神の午後」(これもニジンスキーの振付とは異なるよう)。「春の祭典」は 2:40 あたりから。
265 ストラヴィンスキー「兵士の物語」(L'Histoire du soldat / История солдата)
これも、次の「さわり」動画を。ホリプロステージ。
なお、HMSで本曲を扱っていることを申し添えます。
耳による音楽史 第7-10 …… p728。
(もう一つ、個人的な思い出として。「デーモン小暮」らの語りによる日本語版CDは、装幀も含め、なかなか良かったです。)
266 ストラヴィンスキー「結婚」(Les noces / Свадебка)
巻末リストには次のような記載があります。
267 ストラヴィンスキー「詩篇による交響曲」(Symphonie de Psaumes / Симфония псалмов)(詩篇交響曲)
268 オネゲル(Arthur Honegger)「交響曲第3番」(「典礼風」"Liturgique")
下はムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の演奏(1965年)。
もう一つ。自作自演盤。音は悪いですが、貴重な記録でしょう。楽章ごとの頭でサブタイトルが読まれているのも興味深いです。
268a オネゲル「交響曲第5番 三つのレ」"Di tre re"
下はバウド指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団による1966年の録音のようです。
269 オネゲル「火刑台上のジャンヌ・ダルク」"Jeanne d’Arc au bûcher"
次の動画は概要によると、1963年「オランダ・フェスティバル」における録音とのこと。ハイン・ヨルダンス指揮、ブラバント管弦楽団。
また、次の録音は1943年のものとのこと。
これはこれで貴重な記録(ただし、プロローグが入っていないよう)。
※この作品はロッセリーニ監督による映画版も作られています。ただ、1954年の制作なのでまだ著作権が残っています。
私の理解では2025年1月1日に著作権が切れるのかなと。であれば、割ともうすぐです(2024年現在)。
その日を過ぎて、特に問題なさそうであれば、動画を探して貼ってみたいとは思います。
参考盤 オラトリオ「ダビデ王」"Roi David"
(スペイン語?)
(英語)
* * * * *
この項の巻末リストの記載を書き写すと、以下のようなもの。
小沢征爾指揮ロンドン so., 合唱団,ゾリーナ,クリューンズほか CS-SOCO 123〜4(ただし英語版テキストによる)(廃)。
フランス語版では、ボド指揮チェコ po., 合唱団,ボルジョーほかによるレコードがある C-OQ 7389〜90。
参考盤
オネゲルのオラトリオ『ダビデ王』
アンセルメ指揮スイス・ロマンド o. SLC 1954〜5 or 米国盤 London STS 15155/6。
270 ミヨー(Darius Milhaud)「クリストフ・コロンブ」"Christophe Colomb"
巻末リストの推薦盤としては
「演技者ジャン・ルイ・バロー,マドレーヌ・ルノーほか,ブレーズ指揮のオーケストラ 英国盤 London International TW 91084〜5(廃)。」
271 ミヨー バレエ「世界の創造」"La Création du monde"
ナクソス・ジャパン公式より。
272 マルタン(Frank Martin)「チェンバロ、ハープ、ピアノと管弦楽のための小合奏協奏曲」"Petite Symphonie concertante pour harpe, clavecin, piano et deux orchestres à cordes, Op. 54"(小協奏交響曲)
273 シェーンベルク(Arnold Schönberg)「中空にかかれる庭園 op. 15」"Das Buch der hängenden Gärten"(架空庭園の書)
もう一つ。
(上の動画はなるべくダイナミックレンジを大きく取るようにしているようで、冒頭など音を大きくしないと聴きとりづらいかも。)
274 シェーンベルク「五つのオーケストラ曲 op. 16」"Fünf Orchesterstücke"(5つの管弦楽曲)
275 シェーンベルク「月に憑かれたピエロ op. 21」"Pierrot lunaire"
もう一つ。
276 シェーンベルク 歌劇「モーゼとアーロン」Opera "Moses und Aron"[モーゼスとアーロン]
(上は推薦盤と同じ、ロスバウト指揮、北西ドイツ放送交響楽団の1954年の録音のよう。)
* * * * *
巻末リストの推薦盤の記載は以下のようなもの。
ロスバウト指揮 NDR o. 米国盤 Columbia K 3 L 241(廃)。ギーレン指揮オーストリア放送 o. ほか 米国盤 Philips 6700084(6500084?)。ブレーズ指揮 BBC so., 合唱団,ライヒ,キャシリーほか CS-SOCO 143〜4。これはいままでに出たあらゆるレコードを凌ぐ名演。
277 シェーンベルク「ワルシャワからの生き残り」"A Survivor from Warsaw"(ワルシャワの生き残り)
※巻末リストのこの箇所で、たくさんの補足あり。
以下に紹介 or 貼ってみます。
ピアノ曲集
上はグールドの演奏(概要欄にトラックリストあり)。この中で最後に録音されたのが、「2つのピアノ曲 op.33a&b」で、1965年11月とのこと。
ここではポリーニの演奏も激賞。
弦楽四重奏曲
ニ長調
第1番
第2番
第3番
第4番
この箇所で、以下のようなコメントあり。
「また最近、カラヤン指揮ベルリン po. による《カラヤン,新ヴィーン楽派管弦楽曲集》が出た(MG 9763〜6 or P-MG 8106〜9)。これはシェーンベルクの『交響詩ペレアスとメリザンド』『浄夜』『管弦楽のための変奏曲』,ベルクの『3つの管弦楽曲』『抒情組曲からの3楽章』,ヴェーベルンの『管弦楽のためのパッサカリア』『5つの楽章』『6つの管弦楽曲』『交響曲』を含み、なかでも特にシェーンベルクの初期の音楽詩の美しさは言語に絶する。」
「ペレアスとメリザンド」
(下の動画は埋め込み不可のため、URLの形で貼っておきます。)https://www.youtube.com/watch?v=5ChHR8tT8cQ
「浄夜」
「グレの歌」
※ここの「追記」でツェムリンスキー「弦楽四重奏曲第2番」op.15
(脱線)
個人的なオマケとしまして、シェーンベルク「室内交響曲」。これは p176[219]で引き合いに出されている曲(ここでは第1番のことかと)。
278 ベルク(Alban Berg) 歌劇「ヴォツェック」Opera "Wozzeck"
もう一つ。
279 ベルク「三つの管弦楽曲」"Drei Orchesterstücke"(管弦楽のための3つの小品 op. 6)
280 ベルク 歌劇「ルル」Opera "Lulu"
* * * * *
巻末リストの推薦盤の記載は以下のようなもの。
ヘフナー指揮ヴィーン po. 米国盤 Columbia SL 121(廃)。ベーム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ。リア,フィッシャー=ディースカウほか P-MG 8164〜6 or 米国盤 Grammophon 2709029。ブレーズ指揮パリ・オペラ座 o. ほか P-MG 8396〜9。ベルクが死んだあとで見つかった作曲の覚え書きをもとにして、第三幕がチェルハの手によって補完されたが、このレコードはそれにもとづく全曲盤。単にめずらしいということだけでなく、演奏も水準の高いいいレコード。
※「Arnold Schönberg Center」というサイトを見つけました。
https://www.schoenberg.at/index.php/en/
これが、どういう「素性」のところだかはよく分からないのですが(ファンサイトの一種かも?)。
とりあえず、
Archive → Historical Recordings でそこそこいろいろな録音が聴けます。
ただ、ずいぶん「回線が細い」ようで、あまり使い良い感じではありません(執筆時点では)。