2021年9月 詩「存在生命意義線」「消失」
詠題:「火」
存在生命意義線 森田玲花
爪先に灯るような劣情から髪全体にこびりつく情念まで、全部まとめて飲み込んでみせてよ。どこにも行けない形状記憶のカッターで、地平線に一本の血潮の線を引く。バンクシーのように誰にも知られない天才になりたかったあの頃を、順番にエスカレーターで荷運びしたら、重量オーバーになって秋が来た。欲しいと願うなら差し出しなさいとどこかの神が言うほど、両手に差出せる言葉は残っているのか。天井いっぱいに詰めたテトリスのまま、百円自販機並みに安っぽい愛を求めている。
まぶたの裏の瞬きが空に還るとき、私はようやくすべてをゆるせる人になる。
消失 ねむみえり
アンタレスが赤赤と燃えている頃
あんな星になるのだと言って
進路希望を出した君の話を
誰も真面目に聞いてくれなかったね
あなたたちの悩みはちっぽけなものです
この宇宙に比べればと生物教師がにこやかに告げて
その呼吸で君の命が
吹き消されてしまったのを僕だけが見ていた
僕たちの数が増えたり減ったりしても
誰も気付かないでスクランブル交差点を渡るから
モールス信号で教えてほしい
君がそこに到着したことを
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