
凍らない理由(詩)|hidemaro
南極のさかなはうごかない
うごかないけど、凍らない
「この子、この水族館で生まれたんだって」
南極のさかなの前には、僕らしかいなかった
「南極のさかなは、南極を知らないんだね」
細い指が、分厚いガラスをそっとなぞる
凍らない理由も知らないまま
南極のさかなは冷たい水の中でじっとしていた
平日16時の館内放送
喫茶スペースに忘れられた腕時計が時を刻む
僕らも知らないまま、分厚いガラスに囲まれている
「南極には、ペンギンもいる」
今日の空と同じ色のスカートが翻る
汗ばんだ細い指に腕を引かれて、僕は足を前に進める