- 運営しているクリエイター
#逆噴射小説大賞2021
熱波師戦争、あるいはアウフグトゥスの乱
《熱波到来》以前のファランクスの歩兵が見れば、それは自分達に対する侮辱と受け取ったに違いない。
厚手の布を手に提げた薄着の男達の一団が、密集陣形を取りながら一糸乱れぬ行進を続けている。逞しい彼らの肉体は数百度の外気に晒され赤銅色に輝き、身に纏った短衣には「熱波魂」「豪風招来」「サンタナ」と極太の書体で認められている。
「下がれ!熱の民が無許可でエア・スクリーンへ接近することは誓約で禁じられてい
ワンサウナ、ワンユニヴァース。
池袋『かるまる』のケロサウナから、サンダートルネード水風呂に入る。やっぱシングルはすごい。体をふいて外気浴へ。心臓の鼓動が全身に広がり、意識が、あーととのう、宇宙を感じる、というか宇宙だ。宇宙が生まれている。ビッグバンだ。宇宙はめちゃくちゃ熱い何かが一気に冷えてできた。熱→冷。サウナだ。俺の中で宇宙が生まれるのも道理か。脳内の宇宙で銀河ができる。あれは地球だ。マグマが冷やされて固まり地球になる。
もっとみる竜をサウナに入れるには
熱と蒸気の吹き出す火口を、周囲の山ごとすっぽりと覆う天幕。巨大なテントサウナだ。自衛隊のヘリと、地上の観測施設から、多くの人間が固唾を呑んでそれを見上げている。
「開きました!」
観測手が叫んだ。テントの入り口が開き、中からサウナハットをかぶった竜が出てくる。文字通り山を巻く巨体。全身の鱗が蒸気で濡れ、美しく光を反射している。
竜は体をのたうたせ、かつて登別の市街地だった場所を破壊しながら、