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「ファンベース」をアイドルの起用✕ガムの販売に転用してみた①

今回は佐藤尚之さんの著書「ファンベース 支持され、愛され、長く売れ続けるために」による、中長期的に売上や価値を上げていく方法を基に、企業がアイドルを起用してガムを販売する工程を考えていく。


売上が伸びない、売上が安定しない、最近売上が落ちてきた...。
本書はそんな悩みを考える方に読んでいただきたい。
小売や流通、メディア、行政などの生活者相手だけでなく、広告会社やコンサル会社、企業とは関係のないコミュニティ運営者にとっても有益な本である。もし最後までこの記事を読んで、興味を持ったらぜひ手に取っていただきたい。
※URLは記事の最後に載せてあります!


佐藤尚之さんは、「ファン」について以下のように定義している。

ファンとは「企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を支持している人」

「この機能欲しかったんだ!」や「このメーカーの味、自分の好みに合う!」「ほかの商品と比較してデザインが良い!」などの商品自体に価値を感じている方もいるし、企業姿勢や社会貢献性に惹かれたり創業者が大好きといった場合も考えられる。もちろん「なんとなく自分に合ってる気がする」のように、無意識かつ感覚的な支持も含まれている。

ファンベースでは、そのような「ファン=支持者」を大切にするための戦略が多岐に及ぶエピソードと共に記されている。


若者をはじめとした国民の多くがSNSに触れている現代、凄まじい情報量が世に溢れ、人々に一度リーチ(到達)したとしても、あっという間に忘れられてしまう。ネット上でバズった広告も、数時間や数日経てば、人々はすぐに次のトピックスへと気持ちを映してしまう。

この本では、人々にリーチして認知を獲得した後に、どのようにしてその気持ちを維持し、「ファン=支持者」にしていくのか。また、どのようにファンのライフタイムバリュー(LTV)を上げていくのかを知ることができる。


今回、私は「ファンベース」の考え方を「アイドルの起用✕ガムの販売」に転用して考えてみようと思う。はじめはコミュニティ運営だったり、スポーツブランド商品の売上などに置き換えて考えてみようと思ったが、ご存じの通り「抽象→転用」をおこなう際には“なるべく遠くから”構造をとってきた方が斬新なアイデアが創出されるのだ。


イメージとしては、右肩上がりに認知を拡げているアイドル(日向坂46ってご存じ?)が、とあるガム(ここでは“太陽のガム”とする)の売上を伸ばすために彼女らを広告に起用したと仮定して話を続ける。


まずは、売上を伸ばすための前提となる考え方をザックリ説明します。

リーチして認知を獲得したあとにどうするのか。どうやってその気持ちを継続させ、ファンにしていくのか。どうやってライフタイムバリュー(LTV)を上げていくのか。それらをあらかじめ構築したうえでリーチしないと意味がないと思うのです。

モノやサービスを売るときに、瞬間的なリーチをしても期待した成果を望むことが難しい。中長期的な戦略を練って、認知(好意)を積み上げていかないと人々の意識から消え去ってしまう。

したがって、短期(単発)施策をやめろという訳ではなく、短期(単発)施策と中長期ファンベース施策をつなげて資産化することが大切になってくる。

そこで大事になのが、「予算の分散」という考え方をするのではなく、短期(単発)施策と中長期ファンベース施策を積み上げるイメージで設計することによって「相乗効果」を生み出すこと。

アイドルを起用して、目先の認知度を上げるために単発のキャンペーンを不定期に実施するのではなく、全体設計から逆算して施策を練ろう、というのが導入メッセージである。


では、売上に直結する話をしていこう。

「パレードの法則」や「20:80の法則」をご存じだろうか。ビジネスで「全顧客の上位20%が売上の80%を生み出している」ことを指す。

業界やファンベースの施策をおこなっているか否かで差が生じるだろうが、「少数のファンが売上の大半を支えている」ことを理解していただきたい。従来の企業戦略は新規顧客獲得のためにキャンペーンなどをおこなってきた。しかし、この先物理的に顧客が減っていくことを考えると、既に商品やサービスを買ってくれている人をファンにした方が賢明と言える。

具体的な例で話をすると、既に“太陽のガム”を認知し、ほかに陳列されるガムよりも味や見た目、制作工程や企業の想いなどに関心を持ち、購入してくれている既存顧客をファンにするのだ。

※新規顧客が物理的に減っていく~と説明したが、詳しい背景を知りたい方は本書を手にすることをオススメする。ウルトラ高齢社会や人口急減などについても、データを用いながら詳しく説明されている。


ファンを大切にしなければならない理由として、新規顧客が減っていくことも1つの要因ではあるが、それだけではない。超成熟市場と呼ばれるUSPが追随され、陳腐化し易い現代において、浮動層(ファンでない)をしっかりファンにしておかなければ、「よく選考を研究した後発」にすぐに取られてしまうためである。

また、世の中に流れる情報が膨大に増え、企業が商品の情報を伝えようとしてもほとんど見てくれなかったり、そもそも主要SNSユーザーの約20%にあたるヘビーユーザーがSNSの総利用時間の約80%を占有していることも背景にあり、拡散を狙った宣伝は効果が限定的であることも要因だ。

“太陽のガム”がほかの企業にとって代われない製品であるならば話は変わってくるが、数年後には安価化され、あっという間に陳腐化する現代では、「他社との差別化」や「SNSにおけるバズる広告」はあまり有効打ではなくなってきている。


また、「ファンが新しいファンを作ってくれる」という狙いもある。価値観の近い友人、特に類友がツボにハマる商品・サービスは自分もツボにハマる可能性が高い。昔から口コミの絶大な効果は語られてきていたが、情報や商品が溢れかえっている今、更に重要度が増したのである。

何者か知らない“誰か”ではなく、価値観の近い人が愛用し、自分の言葉で届けるメッセージは、どんな企業の魅力的なキャッチコピーや、著名なインフルエンサーの言葉よりも刺さる。著者はこれを「オーガニック・リーチ」と呼ぶ。


いくらファンでも、何の脈略もなく商品やサービスについて話さないため、ファンがオーガニックなオススメをするきっかけをつくることが大切である。

「パレードの法則」について説明した通りで、ファンというのは少数な存在である。したがって「全員にファンになってもらいたいと望んではいけない。」全員をファンにしようとしてしまうと、ファンができにくいし、今いるファンが離れてしまうことも考えられる。

著者は以下の3つをファンの支持を強くするための施策としている。

ファンの支持を強くするための3ヶ条
・その価値自体をアップさせること→「共感」を強くする
・その価値を、他に代えがたいものにすること→「愛着」を強くする
・その価値の提供元の評価・評判をアップさせること→「信頼」を強くする

①「共感」を強くする


ファンは既に企業やブランド、商品の価値に共感している。
我々はファンの言葉を傾聴することを出発点に、「共感ポイント」を強化することを意識することが大切である。

「共感ポイント」を強化するために3つ、著者は施策を講じる。

1つはファンの言葉を傾聴し、フォーカスすること。他者動向や市場動向を見て、「ファンが価値と感じているポイント」はここだろう、と発想するのではなく、ファンを一定数集めて話し合うファンミーティングを実施しよう。

実はファン自身もどこに魅力を感じていているのか、はっきりしていない場合も往々にしてある。同好の士が集まることで、「偏愛」「発見」が再現され、ファンベース施策として効果が期待できるのだ。


2つ目はファンであることに自信を持ってもらうこと。実はもっと他に自分が求める価値にぴったりな商品があるのではないか、と不安になっている場合がある。ここで、自信を持ってもらうために3つの重要な要素がある。

・アクセスしやすく(探しやすい)
・リンク元にしやすく(シェアしやすい)
・より自身がもてるように(共感しやすい)

大勢の人が認知するマスメディアに露出することも、ファンに自信を持たせてくれる。「ほら、こんなCM流れてるよね?あれだよ!」のように。テレビ番組や新聞記事に取り上げられることも同様である。


3つ目は、新規顧客より優先すること。マーケティングや広告に関わる人たちは特に、無意識に「新規顧客を喜ばせること」を優先してしまう。そうではなく、ファンである既存顧客を優遇し、「あなたは大切な存在です」と伝えることが大事なのだ。


これらを「アイドルの起用✕ガムの販売」の例で考えてみよう。

まずはファンミーティングを開催し、ファンとの対話を通してファンの言葉を傾聴してみたい。実践するとしたら、
・ガムの制作工程を知ってもらう見学ツアー
・ガムに付属された応募券を集めて新商品の試食会
・数量限定の特別ボトル購入者対象のイベント
・実際の商品企画室でファンミーティング など

ガム単体の企画でもこれ以上に豊富にある。
更にここにアイドルの要素も掛け合わせてみる。
・ガムの制作工程を知ってもらう見学ツアー✕サプライズゲストとしてアイドルの生ライブ
・ガムに付属された応募券を集めた人だけが参加できる新商品の試食会✕アイドルとも感想シェア
アイドルの写真がパッケージ化された特別ボトル購入者対象のイベント
・実際の商品企画室でファンミーティング✕アイドルのサイン会

ただしここで注意しなければならないのは、
「ガムの商品自体に価値を感じている人」
「ガムを製造販売する企業の想いや姿勢に価値を感じている人」
「起用されたアイドルに近づけることに価値を感じている人」
少なくとも3つの属性のファンが一同に集ってしまうことである。

ファンミーティングというのは、熱量の高いファン(20%)のみが揃うことによって「偏愛」「発見」が価値となる。


ならば、少し常識からズレてみよう。


広告のために起用されたアイドル。本来であれば、自分たちが実際に商品を使用していなくてもCMやテレビ番組にて紹介することも多々あるだろう。

しかしこれからは「個の時代」といわれ、「信用貯金」なるものが重要視される社会へと変遷を遂げている。

そこで、自分たちが起用される商品は責任を持って「愛用」することを条件とした魅せ方をしたらどうだろうか?

もちろん、自分たちグループが実はその商品を使っていないけど認知度を上げたいから了承した、なんていえば信用がガタ落ちすることは目に見えている。しかし、アイドルグループ全員が「毎日愛用している」というブランディングをしてみたらどうだろうか。

1人ひとりがブログで紹介するも良し、ライブやコンサートの前に口にしている風景を見せるも良し、ファンミーティングで商品の魅力を他のファンと一緒になってシェアするのも良いだろう。

そうすると、どうなるか。

ファンミーティングを開催した時に、「アイドルが目的だったファン」が「ガムの魅力も語れるファン」へと変わるのではないだろうか?

「会いにいけるアイドル」として一世を風靡したアイドルもいたり、AKB48をはじめとして坂道グループは握手会を開催してファンと「空間をシェア」している。

応援しているアイドルと何かをシェアすることに価値を感じているのであれば、同じガムを口にして興奮する(すみません、ほかに言い方がなくて笑)ことも十分考えられる。

3つ目の「既存顧客を優先すること」にも繋がることで、「応援しているアイドルとガムの魅力について話ができる」「ほかにガムに愛着のある人と出会える」「価値を感じている企業の想いや姿勢について語ることができる」などといった、同じ“ガム”という商品を用いて既存顧客に特別な体験を提供することが可能になるのだ。


②「愛着」を強くする

次にブランドや商品を「ほかに代えがたい」ものにするためにどうしたらよいか?考えてみよう。

ここでいう「ほかに代えがたい」というのは、他社製品との差別化を図るUSPであると考えてしまう人もいるが、そうではなく体験価値情緒価値に注目したものである。

・商品にストーリーやドラマを纏わせる
・ファンとの日常的な接点を大切にし、改善する
・ファンが参加できる場を増やし、活気づける


創業ストーリー苦労物語開発ストーリーなどをもっと前面に出そう。
商品の背景に「人」がいることをどうやって感じさせるか?がポイントになる。

転用すると、ガムの制作工程や創業ストーリーをファンに詳しく知ってもらうことが大事。
・ガムの梱包をつなげると1枚の絵になる。
・QRコードを読み込むと1分程度の紹介動画のリンクへ飛ぶ。
・アイドルが公式HPにて紹介メッセージを“自分の言葉で”話す。
・アイドルと企業の担当者との対談の様子をアップする。 など

何気なく購入に至った商品の背景を知ることにより、ほかに代えがたい愛着が形成される。もしもアイドルが自分と同様、もしくはそれ以上の「偏愛」で商品についての魅力を話していたらどうだろうか。

自分の愛着のある商品を好む人(それが関係性の希薄なアイドルだったとしても)にとっては、同じ20%に属する「ファン」なのである。その価値の提供元の評価・評判をアップさせることに繋がる。

また、ファンに日常的な愛着を持ってもらうためにSNSという接点が重要になってくる。単に企業から一方的なお知らせを発信するだけでなく、SNS担当者は、ほかに代えがたい愛着をつくる貴重な存在なのである。

愛着をつくろうと思えば、SNS担当者がアイドルも巻き込んで
・関連CMについて魅力をシェア
・ガムのパッケージを活かしたアートを楽しむ
・制作工程の人とのやりとりを公開
・新商品についての情報を少しずつ解禁
・新商品についてアンケートに回答してもらう など

意識するのは接触回数を増やすことやファンでも知らない情報も時折混ぜること、ファンも商品開発の一員だと錯覚させること、アイドルも巻き込むことでほかのファンだけのコミュニティと比較して特別感を出すこと、毎日投稿を継続することで商品のことを思い浮かべる時間をつくることなどが考えられる。

最も大切なのは、(この企業の)この商品を好きになって良かった、そう思ってもらえることではないだろうか。


③「信頼」を強くする

最後に、ファンに信頼される要素を1つずつ増やしていくことについて考えてみる。

ファンの支持を強くするためには企業の評価・評判を上げることが求められる。決して一朝一夕では得られないものだが、丁寧かつ誠実に培われた「信頼」が重要な要素であるといえる。

・それは誠実なやり方か、自分に問いかける
・本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
・社員の信頼を大切にし「最強のファン」にする

リターゲティング広告や迷惑メルマガ、うっとおしい動画広告など...
どれくらいの頻度や距離感なのか正解はないにしろ、適切な接触頻度は想像できるであろう。不祥事があった際にも隠すことなく、自社サイトに整理して明らかにする。

そんなことをしたら、商品を買ってくれる人が減って売上が落ちてしまう、そう考えてしまうかもしれない。しかし、語りかけるべき相手は上位20%のファンなのである。たいして興味のない80%に注力するのではなく、上位20%に誠実な姿勢であるべきだ。

社外で信頼されなかったら、社内で社員に信頼されないといけない

著者がそう残すように、まずは社員がその企業の商品について「共感」「愛着」「信頼」を形成するチャンスをつくる必要がある。オーガニックな言葉で人に語れる社員を増やし、「最強のファン」にすることが社外への信頼へと繋がるのである。

それは社員だけでなく、広告に起用しているアイドルでも同様のことがいえる。トップダウンで指示された通りに価値を提供するのではなくて、まずは内部の「最強のファン」を増やすことが大事になってくるのではないだろうか。


いかがだっただろうか。
今回は「ファンベース」を基に「ガムの販売✕アイドルの起用」で考えてみた。タイトルにもある通り①ということで、今後発展版の②も投稿したい。

ザックリとした大枠はnoteに載せた通りだが、詳細のデータを参考にしたかったり、「ファンベース」を基に自分のアイデアや普段の業務に活かしたい!と考えるならば、手元にあって損はしないと思う。

まとめ

最後に「アイドルの起用✕ガムの販売」に転用してみて、私なりの考えを綴ろうと思う。

この記事の中でも何度も説明した通り、「ファン」を増やすためには「誠実さ」が重視されることは認知していただけたと思う。それは、CMや動画広告において不快感を与えないことも該当するが、起用するタレントや著名なインフルエンサーを起用する際にも同じことが言える。

タレントやインフルエンサーは、「有名になりたい」や「お金がほしい」といった目先の利益のために仕事を選んでいては「誠実さ」が欠けてしまい「信用」を失いかねない。

これからはタレントも仕事を選べるだけの収益モデルを考えなければいけないし、企業側もCMに出演するだけだったり、テレビ番組で宣伝するだけでなく、一緒に「ファン」をつくっていくスタンスへと変えていかなければいけないと思う。

結果的に認知信頼獲得に結び付き、長い目で愛される存在となり、「ファン」が増えるのではないだろうか。

今後は「あの人だから仕事を頼みたい!」という考え方にシフトするように、「あの企業だから信用して購入する」という「ファン」を増やす必要がある。

「個人」だけでなく「組織」としても、「ファンづくり」のための新たな取り組みが求められてくるのではないだろうか。

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