からびやうくうかん、にて
大の字で横たわった君は、教授のように淡々と話し続ける。
森羅万象の最小単位は、「糸」らしい。
君は普段飲み込み続けている言葉を、時折ダムのように放流させる。誰も傷つけない言葉に変換して。
君の理屈っぽくて冗長な話し方は、あまり好きじゃない。話は嫌いじゃないけれど。
宝物の琴の絃を指で弾く。微かに、ピアニッシモで響かせる。君の声がギリギリ聴こえるように。平坦な調子の弱々しい声が、絃の音色と、いい塩梅で混ざり合うように。
ろーれんつ、しゅれでぃんがー
聞いたことがある単語。手を止める。あ、やっぱり分かんない。また滑らかなナイロン絃を薬指で震わせる。
生ぬるい風が吹いてきた。私のくしゃみが出て、君の話が止まった。
静寂。
白い天井を眺めてる君の目尻が光ってる。
君曰く、6次元が折り畳み式の、10次元から成るらしい複雑怪奇な現と、私達は昔から相性がよろしくない。
そろそろと、絃を震わせる作業を再開する。君の鼓膜に伝わせる幽かな振動に、ずっと話していてよと祈りを込めて。
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