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キャプテン・スカーレットな彼女

そわそわしている彼女の前に皿を置く。ほかほかと湯気を立てる穴だらけの物体に、彼女は露骨に警戒していた。

「大丈夫だよ。クランペットっていう人畜無害な食べ物。ほら、これをかけるとより美味しい」

琥珀色のシロップをたっぷりかける。シロップがクランペットに染み込んでいく様子を、彼女は食い入るように見つめていた。その彼女を、僕が見つめる。

彼女は数百年前の雪山で起きた雪崩に巻き込まれて、ついこの間まで氷漬けにされていた。複製蘇生技術で蘇ったばかりの彼女は、まだ記憶や人格の分野が安定していない。

雪山から掘り起こした冷凍状態の遺体から細胞を採取し、その細胞を正確に分裂させ、並べることで元の人間に戻すプロジェクト。彼女はその成功例の一人だ。僕は心理学者として参加した。単純に、大昔の人間と対面してみたいという興味から。


彼女はフォークを持ったが、そのまま固まっている。短い黒髪と褐色の肌を持つ彼女の正確な出身地は不明なまま。独特な響きの言葉を話す彼女だが、そもそも無口なので、言語から出身地を割り出すことは難しい。

僕はクランペットの端を少しちぎり、口の中に放り込んだ。彼女は僕を凝視する。笑顔で口を動かし呑み込んだ。咀嚼を見届けた彼女は、安心してくれたのか、同じようにクランペットをちぎり、口の中に入れる。

みるみる目を輝かせていく。

二重に生まれた彼女の精神は、オリジナルの通りなのだろうか?それとも、全く異なる新しいものなのだろうか?僕は気になって仕方がないが、当の彼女は笑顔でクランペットを頬張っている。

お気に召してくれたようだ。明日もクランペットを焼こうか。今度はフルーツソースを添えてみよう。

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水月suigetu
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