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【おすすめ本】能力主義、市場経済、自分らしく生きる、評価経済、全ては繋がっている

知識人やインフルエンサーとされる人たちが言っていることが大体同じような世界観を描いており、それが能力主義の根本原因と解決策につながるものだと気づいたので、その世界観をイラスト化してまとめてみました

また、参考にした本の紹介と、今回の学びで得た個人的な教訓も書いてます。

能力主義や未来予測に関して、知識人やインフルエンサーとされる人たちが言っていること


橘玲さん
「『自分らしく生きる』という考え方が能力主義の根本原因だ」(無理ゲー社会 (2021)より)

岡田斗司夫さん
「これからは評価経済になる」(評価と贈与の経済学(2013)より)

内田樹さん
「学ばない子供たち、働かない若者たちの根本的な発想には等価交換モデルという思考の枠組みがある」「経済発展しない日本において幸せに生きるには贈与経済くらいしか解決策がない」(下流志向 学ばない子供たち 働かない若者たち(2007)評価と贈与の経済学(2013)より)

西村ひろゆきさん
「これからは愛される人間が生き残る」



彼らの発言に共通する「能力主義などの根本原因となるイデオロギー」と「現在と未来の世界観」を集約したイラスト


現在・将来のイデオロギーと世界観をイラスト化した。正確には、現在は「将来のイデオロギー(贈与/評価経済、相互扶助)」への過渡期だと思われる

・現在のイデオロギーと世界観

読書ノート-47

補足説明:
○なぜ市場経済(等価交換モデル)と自己実現至上主義が「能力主義」を生むのか?


・等価交換モデル
「自分が得た利益(能力)は自分が投資したコスト(時間、労力、努力)と交換した結果である」と考える
・自己実現至上主義
なによりも自分の自己実現が最優先であり、他人は他人、自分は自分という「自己責任論」と全て「個人の自由」で片付ける思考

自分が今恵まれている(能力をもち裕福である)のは、自分の選択と努力の結果であり、自己実現である。
今貧しく苦しい生活を送っている人は自分に投資(努力)をしなかったからであり、個人の選択と自由の結果で自己責任だ。
という能力が高い人間に都合に良い論理で全てを説明しようとしてしまう。そして、(遺伝子、生まれた国の所得レベル、幼少期の友人に恵まれたなど)など個人ではどうにもならない要因を無視する。

「能力主義」の誕生

○「自分が損しない」を追求すると結果的に損するのはなぜか?
「等価交換モデル」という枠組みでは「自分が損しない」の追求は、合理的に見える。
しかし、問題は「価値の尺度」が適切なのか?という点。人は防衛本能があり、無意識のうちに自尊心を守ろうとしてしまう。結果、「自尊心は守りたいが現実は変えられない→認識(価値の尺度)を歪める」ということが行われる。そして、そのことに気づかない。自分が等価交換モデルで思考していると気づかない限り。
例えば、歪んだ物差しで測った結果を元にいくら合理的に判断しても、結果は歪んだものになる。物差しが歪んでいるから。

「自分が損しない」の追求は「等価交換モデル」の追求であり、それは「価値の尺度の歪み」の問題と「等価交換が成立する取引しか行わない機会損失」が生じるため、合理的な判断をしているのに損をする結果になる

・未来のイデオロギーと世界観

読書ノート-48

補足説明:
○贈与/評価経済、相互扶助の社会になるのが自然なのはなぜか?


要するに、「1人で生きていける時代が終わった」ということ。
高度経済成長期であれば、「1人暮らし」は物の消費が増えるので、経済成長と物の消費と個人の給与水準の向上がうまく噛み合って好循環に入っていた。
しかし、経済成長しない「成熟期」に入った時、「1人暮らし」は経済的、環境的無駄が多いと多くの人が気づきつつある。

・シェア(とコミュニティ)
・相互扶助(助け合い)
・贈与(恵まれている・上位の者から、貧しい・下位の者への見返り求めぬ贈り物)
・贈与の連鎖(贈与をもらう側が、時を経て次の世代に贈与のパスを贈る側になる)
これらの方が効率的で現実的な社会・経済状況だと気づく人が増え、相互評価システムが出来始める。

「贈与/評価経済」、「相互扶助の社会」の誕生


おすすめの書籍(今回主に参考にした書籍)


能力主義の問題提起と言ったら、マイケル・サンデル教授の「実力も運のうち 能力主義は正義か?」。ベストセラーなので聞いたことがあるという人は多いと思います。


マイケル・サンデル教授の「実力も運のうち 能力主義は正義か?」の後に出版され、サンデル教授の書籍を分析したうえで、サンデル教授を「哲学芸人」「明確な解決策を提示できていないし、するはずもない。だってエリート層の自分(サンデル教授自身)が損するから」と痛烈に皮肉っているのが、橘玲さんの「無理ゲー社会」

根拠が怪しく著者の主観と思われる意見も見られるが、サンデル教授を論理的に皮肉る人はあまり見ないし、部分的には鋭く合理的な指摘もあり、サンデル教授の「能力主義は悪か?」という問題提起に対する一つの回答として面白い。


岡田斗司夫さんと内田樹さんの対談本である「評価と贈与の経済学」は、橘玲さんの「『能力主義』の根本原因は『自己実現至上主義(自己実現がなによりもまず優先されるべきだという価値観)』である」という主張に対する、

・補足的な説明(自己実現至上主義と市場経済の「等価交換」の考え方が結びついた結果、「自分が損したくない」を追求し、個人で生き残ることを考え出したことが不幸の始まりだ)

・解決策と未来予測(未来の主流の経済システムは贈与経済 or 評価経済であり、自己実現より相互扶助を優先する社会になる)

を提示していて、サンデル教授の話、橘玲さんの話からさらにつながって面白い。相互扶助や評価経済って何?など基本的な概念を知りたいときなどもサクッと読める入門書としても使えるのでおすすめ。



最後に

上述の人たちは軽いノリで話を聞くくらいでちょうどいい人も多いかもしれませんが、それでも、見えている将来の世界観や主流のイデオロギーが似ているというのは面白いと思い、この記事を書きました。

シェアリングエコノミーだとか、デジタルデータ化できるものを無限に複製できるから限界費用がゼロに近づいていく、などのテクノロジーによる経済や社会の変化なども、今回イラストで書いた「イデオロギーと世界観の変化」という観点からある程度説明できるように思われます。なので、私個人としてはいろいろな人が見えている世界観はきっとこれだけど、うまく言語化できている人が少ない(あるいは自己利益のためにあえて言っていない)のではないかと思っています。

長々と私の主観的で直感的な話に付き合っていただきありがとうございました。


追記:イデオロギーと思考の枠組みを学んで得た個人的な教訓

自分は無意識のうちに「等価交換モデル」で自分自身に対しても、他人に対しても考えて、「自分が損しない」という基準で動いてしまい、結果的に自分の可能性や人間関係を狭めていたなと気づきました。

相互扶助(助け合い)部活の先輩後輩関係のような「上の者が下の者の面倒を見る」という「贈与」の発想に幸せに生きる、未来の社会の本質があったんだなとハッとしました。

おしまい

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