
Photo by
gemini6rabbit
【菜種梅雨】
凍える程ではないけれど
寒い雨が降り続いて
みな一様に憂鬱だと言う
幸せに思っていた
雨に包まれて
何者かにそっと護られているようで
湯掻いた菜の花を
若い頃は分からなかった美味しさを
微かな苦味と甘さを
貴方が口にする
叙情的な言葉達を
聞き漏らすまいと耳をこらす
額に入れて飾って
インクの匂いのする本に挟んで
湯船で鼻歌に歌って
泣いていると何故
分かってしまうのだろうと
ほつれた糸をかがる夜
カセットテープの緩んだリールを
鉛筆で巻き取るように
手繰り寄せたなら
声が聴きたいと
目を見て動きかけた唇
その淡いルージュに
まだ愛しているを読み取って
雨音を聞きながら
想いの長さの黒髪を梳いて