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ワインを飲むと頭痛がしたり、蕁麻疹がでる理由とは? 〈文献紹介〉ワインに対するアレルギー反応および不耐性

ワインを飲むと、頭痛や蕁麻疹、さらには呼吸困難などの症状が出ることはありませんか?

ワインは多くの人にとって楽しみの一つですが、一部の人には過敏症や不耐性反応を引き起こす可能性があります。かく言う私もその一人です。すべてのワインではないものの、蕁麻疹が出たり、口の周りが赤くなったり、頭痛がしたり、胃腸の調子がわるくなったりすることがあります。

何が原因なのかを突き止めるために、成分分析を行ったり、科学的に研究された論文を読み漁っています。

スイスの研究者が「ワインに対する過敏症」についてまとめた論文を見つけたので、その内容をご紹介したいと思います。


ワインと過敏症:その背景

2006年にデンマークのコペンハーゲンで行われた調査によると、アルコール飲料(特に赤ワイン)の摂取後に過敏症反応を経験する人の割合は約8%にのぼります。この調査では、以下のような症状が報告されました[1]:

  • 上気道症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり):7.6%

  • 下気道症状(咳、呼吸困難、喘息発作):3.2%

  • 皮膚症状(紅斑、かゆみ、蕁麻疹):7.2%

また、喘息や鼻炎を持つ人は、アルコールによる気道の過敏症反応を起こしやすいことが確認されています[2]。

ワインに含まれるアレルゲンと不耐性の原因

ワインが引き起こす反応には、大きく分けて以下の2種類があります:

  1. 免疫学的なアレルギー反応(IgEを介した反応)

  2. アレルギー反応ではない反応(不耐性反応)

それぞれの原因となる成分を見ていきましょう。

1. アレルギーの原因となる成分

ワインには、以下のようなアレルゲンが含まれています:

  • ブドウ由来のタンパク質

  • 清澄化に使用される成分(魚ゼラチン、卵白、乳製品(カゼイン)など)

  • カビ(特にBotrytis cinerea)

  • 昆虫由来のタンパク質(ブドウの圧搾時に混入する可能性あり)

スペインのある研究では、若いワインを飲んだ後にアナフィラキシーショックを起こしたケースが報告されています。これは、昆虫の毒素がワインに混入し、アレルギー反応を引き起こしたと考えられています[20]。

この論文は、ワイン醸造の界隈でも話題になったようです。その当時、ワインメーカーである夫(元)の弟からこの論文を紹介されて、読んだ記憶があります。これは、また別の機会にご紹介したいと思います。

2. 不耐性反応を引き起こす成分

エタノール、アセトアルデヒド、酢酸

ワイン中のエタノールやその代謝物(アセトアルデヒド、酢酸)が原因で、アレルギーに似た症状を引き起こすことがあります。

フラボノイド(ポリフェノール)

赤ワインに含まれるポリフェノール(例:カテキン、アントシアニン)は、偏頭痛の引き金になることがあります。

ポリフェノールって、体にいいとばっかり思っていたのですが、びっくりです。

ある研究で、赤ワインに敏感な19人を集めてきて、何が入っているかわからなように茶色のグラスから赤ワインとウォッカをストローで飲んでもらうという実験をしました。

なんと、80%の方が赤ワインを飲むとすぐに頭痛が出たそうです。同じアルコール量のウォッカでは症状が出なかった[33, 34]。

ウォッカの方が絶対に頭が痛くなりそうですが、違うんですね。
チョコレートを食べると頭が痛くなる人達がいて、同じメカニズムではないかと考えられています。

亜硫酸塩

亜硫酸塩(SO₂)は、古代ローマ時代からワインの保存料として使用されています。喘息患者さんの場合は、亜硫酸塩が胃で二酸化硫黄となり、これが気道を刺激して気管支収縮を引き起こすことがあるそうです[39, 40]。

ヒスタミンなどの生体アミン

近年、ワイン業界では、ワイン中に含まれるヒスタミンなどのバイオアミンが、頭痛の原因として注目されています。ですが、ヒスタミンが原因だという論文と、ワイン中のヒスタミンの濃度は低いので問題ない、という論文と、研究者の意見は対立しています。

ヒスタミン、チラミン、カダベリン、プトレッシン、スペルミン、スペルミジンなどの生体アミン(バイオアミン)は、ワイン、シャンパン、果汁の製造中にマロラクティック発酵によって作られます。

ヒスタミン濃度が高い原因は、
・貯蔵庫の衛生状態が悪い
・マロラクティック発酵が制御されていない
・病原菌から身を守るために生体アミンを増加させるブドウ品種

ヒスタミン含有量はワインの種類によって大きく異なります。
・ロゼワイン:少ない
・白ワイン:少ない
・赤ワイン:多い
・シャンパン:多い

ヒスタミンを多く接種しても、普通のヒトは大丈夫
通常、ヒトはヒスタミンなどの生体アミンを接種しても問題ありません。ヒスタミンは、消化管内の酵素ジアミンオキシダーゼ(DAO)によってなくなるからです。

ヒスタミン不耐症症候群
くしゃみ、胃腸障害、蕁麻疹、特に頭痛が見られます [ 42 ]。
ヒスタミン不耐症の人は生体アミンを分解する酵素(ジアミンオキシダーゼ:DAO)の活性が低いため、症状が出やすくなります[42]。

さらに、アルコールはDAO活性を阻害し、生体アミンの分解を阻害し、腸壁の透過性を高めるため、生体アミンは血液中に取り込まれ、脳の血液脳関門を通過できるようになります。ヒスタミンは脳に入り、血管拡張させ、頭痛を引き起こすそうです。

まとめ

私はヒスタミン不耐症なんでしょうか?
チーズが大好きで、よく食べますが、確かに、偶にに痒い時がある。。。
ちょっと古い鯖を食べると、蕁麻疹が出たりします。
麹やお醤油も合わないものがあったりします。
それを考えると、やっぱりヒスタミン不耐症なのかも?
先日、気が付いだんですが、美味しいと思って飲んでるワインって、痒くても気にならないんです(笑) 

ワインによる過敏症や不耐性反応は、さまざまな成分が原因となる複雑な現象であることは、この論文を読んでよくわかりました。

醸造法やブドウの種類によっては、高くなることもあるようです。
最近は、バイオアミンを高くしないよう工夫するノウハウも報告されているようです。

ワインを飲んで頭が痛くなったり、蕁麻疹が出たりするヒトは、
・飲んでも大丈夫な生産者を選ぶ
・初めてのワインメーカーのワインは、ロゼや白ワインを選ぶ

などの工夫により、ヒスタミンの高いワインを避けることはできるかもしれません。私もいろいろ工夫してみたいと思います。


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参考文献

Allergic and intolerance reactions to wine
B Wüthrich 1
Allergol Select. 2018 Sep 1;2(1):80–88. doi: 10.5414/ALX01420E

以下、上記論文の引用文献番号をそのまま引用しています。
1. Linneberg A Berg ND Gonzalez-Quintela A Vidal C Elberling J Prevalence of self-reported hypersensitivity symptoms following intake of alcoholic drinks. Clin Exp Allergy. 2008; 38: 145–151.
2. Vally H Allergic and asthmatic reactions to alcoholic drinks: a significant problem in the community. Clin Exp Allergy. 2008; 38: 1–3.
20. Armentia A Pineda F Fernández S Wine-induced anaphylaxis and sensitization to hymenoptera venom. N Engl J Med. 2007; 357: 719–720.
33. Littlewood JT Gibb C Glover V. Red wine as a migraine trigger In: Clifford FC(ed).Advances in headache research. London: Libbey & Co Ltd; 1987. 123-127.
34. Littlewood JT Gibb C Glover V Sandler M Davies PT Rose FC Red wine as a cause of migraine. Lancet. 1988; 1: 558–559. [DOI] [PubMed] [Google Scholar]
28. Wüthrich B Adverse reactions to food additives. Ann Allergy. 1993; 71: 379–384.
41. Dalton-Bunnow MF Review of sulfite sensitivity. Am J Hosp Pharm. 1985; 42: 2220–2226.
42. Jarisch R Histamin-Intoleranz – Histamin und Seekrankheit. 2. neubearbeitete und erweiterte Auflage. Stuttgart – New York:Georg Thieme; 2004.

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