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ワイン中に含まれるヒスタミン含量について 文献整理中
私は、10本に1本ぐらいの割合で、飲んだとたんに、頭痛がして、口の周りが痒くなり、それが広がり体中が痒くなり、さらに口の周りや手に発疹ができることがあります。ひどい時は、その翌日から3日から1週間、下痢が続きます。
これって、ヒスタミン食中毒の症状と似てますよね。
(1)ヒスタミン食中毒
消費者丁のページに記載されているところによれば、
「ヒスタミン食中毒の症状は、食べた直後から1時間以内に、顔面、特に口の周りや耳たぶが紅潮し、頭痛、じんましん、発熱などがあげられます。重症になることは少ないですが、発症した場合には、抗ヒスタミン剤が効果的です。速やかに医療機関に相談しましょう。」と記載されています。
ワインを飲んだ時に出る痒みがワイン中のヒスタミンが問題かも、と思い始めたのは、2006年頃からです。その頃から、ワインの品質もきちんと管理が必要なんじゃないの?と思い始めました。それ以外にも、研究者として感じとってしまうアルデヒド、酢酸エチル、フェノール、グアヤコールなどの香りも気になり始めました。もともと、フェノールやグアヤコールの香りは、1995年頃からローヌワインを飲んだ時に感じて苦手でした。それが、醸造の問題だと知ったのは2006年頃からでした。そんな事を感じている時に、今は亡きボルドー大学の富永 敬俊 先生にお会いし、私が感じていることが間違ってないことを実感しました。このお話は、またいずれ書きたいと思います。
(2)ワインの成分検査って、どうなってるんだろう?
カルフォルニア、オーストラリア、ニュージーランドでは、ワインの成分検査をする国から認定された検査会社があるようです。また、ワイナリーの組合が検査するシステムになっていたりするようです。残念ながら、日本にはゼロ。最近、基本的な検査をやるようになったところ自治体は数県あるようです。
2016年に、アントレープレーナー育成プログラムを受講した際に、トレーニング用の題材として、ワインの品質検査をシーズにしました。ビジネスモデルを作って財務計画を立ててみたんですが、見事に赤字!ビジネスとして成り立たないという結果になってしまいました。あれ~、無理?
でも、ずっと頭の中に引っかかっていました。なんとかできないかな?
そして、ついに会社を作り、ワインの品質検査をやることにしてしまいました(笑) ビジネスモデル、どーするんだ~(笑)
ま、なんとかなります。一応、ビジネスモデルイノベーション協会の認定コンサルタントです!
すみません。前書きが長くなりました。
(3) ワイン中のヒスタミンの濃度 文献調査中
① スペインの研究論文「Bioactive Amines in Wines. The Assessment of Quality Descriptors by Flow Injection Analysis with Tandem Mass Spectrometry」(Mir-Cerdà, A.; Saurina, J.; Sentellas, S.)に記載されているワイン中のヒスタミン濃度について
一般的なヒスタミン濃度:
ワイン中のヒスタミン濃度は通常、1から10 mg/Lの範囲
この論文のサンプル中の平均ヒスタミン濃度は2.6 mg/L
ワインの種類ごとのヒスタミン濃度:
未発酵のブドウ果汁からワインになると、濃度は2-10倍に増加。
未発酵のブドウ果汁中の濃度は0.06から0.3 mg/L
ベースワインでは、濃度は上昇し、最終的にスパークリングワインではヒスタミン濃度がさらに高くなる。
熟成の影響:
長期熟成により生体アミンの濃度は一般に減少。
品質とヒスタミン濃度の関係:
最高品質のワインは、濃度が最も低くなった。
低品質のワインは、濃度が高かった。
健康リスク:
ほとんどのサンプルでヒスタミン濃度は10 mg/L未満であり、健康への影響は無視できるレベル。
② スペインの研究論文「Level of Biogenic Amines in Red and White Wines, Dietary Exposure, and Histamine-Mediated Symptoms upon Wine Ingestion」に記載されているワイン中のヒスタミン濃度について
赤ワインのヒスタミン濃度:
平均値: 2.36 mg/L
中央値: 2.45 mg/L
95%のワインが、 9.32 mg/L以下
白ワインのヒスタミン濃度:
平均値: 0.76 mg/L
中央値: 0.28 mg/L
95%のワインが、 2.41 mg/L以下
赤ワインの特徴:
赤ワインは白ワインよりも生体アミンの濃度が高い。
特にプトレシンとヒスタミンの濃度が高い。
これはマロラクティック発酵(MLF)が主要な要因と思われる。
保存状態の影響:
不適切な保存状態は生体アミンのレベルを増加させる可能性があり、これは高デカルボキシラーゼ活性を持つ細菌の作用によるものと考えられる。関連する症状:
ヒスタミン濃度が高いワインを摂取すると、一部の感受性の高い個人では頭痛、顔の紅潮、めまい、吐き気、血圧の変動、脈拍数の増加などの症状が現れることがあります。
*高デカルボキシラーゼ活性を持つ細菌とは
特定のアミノ酸から二酸化炭素を除去してアミンを生成する酵素(デカルボキシラーゼ)を高い活性で持つ細菌のことを指します。これらの細菌は、アミノ酸のデカルボキシル化を通じてバイオジェニックアミンを生成します。
乳酸菌 (Lactic Acid Bacteria):Lactobacillus属やOenococcus oeni
エンテロバクター科細菌 (Enterobacteriaceae): EnterobacterやKlebsiella
その他の発酵に関与する細菌: Photobacterium属やMorganella morganii
2つの論文を見ても、数値はほぼ同じですが、健康への意見は相反しますね。
(4) 食品中のヒスタミン濃度
チーズもヒスタミン含量が高いと言われますし、日本では鯖などが高いと言われます。具体的にはどのくらい含まれているんでしょうか?
① 食品衛生学雑誌 日本のヒスタミン食中毒事例における魚種およびヒスタミン生成菌に関する文献情報解析
2022 年 63 巻 3 号 p. 109-116 DOI https://doi.org/10.3358/shokueishi.63.109
によれば、
魚類: サバやマグロなどの赤身魚では、ヒスタミン濃度が高く、最大で1267 mg/100g。
発酵食品: 納豆、しょうゆ、みそなどの大豆発酵食品では、ヒスタミン濃度が数十mg/Lから数百mg/L 。
② 消費者庁のページの中ほどに、魚種別ヒスチジン含有量のグラフが記載されています。これは、日本食品標準成分表からデータをまとめたもののようです。魚の種類によって様々のようですが、高いものは2000mg/100gに達してます。
(5) まとめ
こうして文献を見てみると、ワイン中のヒスタミンは、食品に比べてかなり低いことがわかります。それに対する考察は、少しの濃度でも問題だ、いや、この程度では影響ないと、意見が分かれています。
私自身のケースとして、ヒスタミン中毒症状がでることがあるワインのヒスタミン濃度はいくらなんだろう、と、疑問に思いました。
それで、ワイン中の成分を調べることにしました。検査結果は、別の記事に記載します。