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【詩】バタフライ 三角みづ紀さんの詩の教室講評

バタフライ    長尾早苗

にんげん以外のものに
なりたかったことがある
いるか、かえる、さかな
三兄妹で通った水泳教室では
タイムベストを更新すること
フォームの正しさを学び
学校の水泳は好きじゃなかった
ただバタフライがあれば
わたしはいるかになれた
教室の重い空気には
闇が横たわり
(おまえには何もできない)
呼吸するのも難しいほどだった
水の中であれば
わたしはいつだって自由になれる
いるかになって
今日も太陽と友達でいる

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今回はコロンビア・梅田からの中継でのZoom授業でした。

三角先生の授業は四元康祐先生のポッドキャストで勉強していましたが、三角先生はゆっくりおっとり話す方でとてもよかった。

今回のテーマのお題は「プール」。10編の中でもみなさんとてもうまくて、チャット欄をみながらうんうん頷いていました。

わたしの「バタフライ」にもじっくりと向き合っていただき、ありがたかったです。

講評では主にこの詩は「過去形が多く使われている」ことが発見でした。
そして「過去形の中に現在形がまざっている」ことも評していただきました。

みなさんのチャット欄を見ていて、確かにそうだと思ったのは第二行までの「にんげん以外のもの」は「どうぶつ」だけじゃないという点と、最終四行から終わりまでの解釈のちがいです。

確かに「水の中」の方が呼吸がしにくいはずなのに、語り手は「水の中」が好き。現在形で語られているのはつまり、特殊な環境でないと語り手は自由になれないのではないかということでした。
そういった不穏さも、また詩の持ち味ということでみなさんに読んでいただき、ありがたかったです。

今は治ってきた低体重でしたが、昔、10代のはじめにかけては食べ過ぎで運動不足だったので、水泳教室に三兄妹で通っていました。わたしは特訓して努力し、フォームとタイムベストを正しく更新することが好きでした。

今は全然水泳に行っていません。
今泳いだらカナヅチかもしれません。

体育というものがからきしダメだったので、夏は得意な水泳がありうれしかったです。
いろいろなことを小学生の時感じていました。教室に横たわる空気とか。

詩の中では幻想的な部分と現実の部分を描写する点において、どれだけ「書かないで表現できるか」を生活と地続きのことばから発見できて面白かったです。

来月の課題にも、ゆっくり取り組みたいと思います。

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