【アニメ感想】『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』 ★★★☆☆ 3.8点

 人間を捕食する鬼を討伐するため、鬼狩りとなった少年・竈門炭治郎の活躍を描くダークファンタジーの最新作。個人的に本作のウリは、①高クオリティなアニメーション、②饒舌な戦況分析描写、③浪花節、の大きく3点であると考えているが、本シリーズはTVアニメも第3弾とあって、これらのウリを完全に掌握した感のあるシリーズとなっている。


 まず、アニメショーンについてはわざわざ言及する必要もないだろう。美麗な作画、スピーディで派手なアクションシーンの乱れ打ち、CG作画を組み合わせた縦横無尽のカメラワークと、そのクオリティは劇場アニメレベルの高水準で、世界トップレベルのアニメーションと言って過言ではないだろう。

 次に2点目。鬼滅の刃はジャンプアニメの系譜にある能力バトルアニメで、その基本フォーマットはこれまでの数あるジャンプアニメに則っているのだが、本作がユニークなのは主人公サイドが常に圧倒的な劣勢に置かれている点である。主人公の炭治郎が所属する鬼狩り部隊「鬼殺隊」には柱と呼ばれる絶対的な強さを誇る幹部戦闘員たちが所属しているが、その柱たちですら、敵対する鬼に対して優位に立てるほどの戦闘力は有していない。そのため、鬼との戦闘においてはどれだけ味方側が増員されても、戦況は常に劣勢なのである。

 そのような状況の中で、炭治郎たちは一瞬の油断が死につながる戦いの中で、相対する鬼の攻略法をなかばパニック状態になりながら、脳をフル回転させながら見つけなければならない。このパニック状態の中で限られた体力と筋力をやりくりしながら突破口を探るスリリングが、鬼滅の刃の面白さの核であり、味なのである。本作で恒例の炭治郎の饒舌な脳内戦況分析も、「全部口で説明してしまってけしからん」とよく非難されるものの、個人的にはパニック状態の脳内表現として非常にリアリティがあると思っており、作品の緊張感を大いに高めている良い演出法であると見ている。

 そして、最後にもう1点、本シリーズで特に印象的だったのは登場人物たちの回想シーンの多さ。これまでのシリーズでも敵味方双方の過去を描く回想シーンは多用されてきたが、本作は1シーズンに時透無一郎、不死川玄弥、甘露寺蜜璃、半天狗の4人分の回想シーンと特に多く、シーズン後半は戦闘と回想の繰り返しと言っても言い過ぎではないほどである。

 登場人物たちの暗い過去をじっくりと描くその演出は、あまりにも露骨な浪花節で若干苦笑してしまうのだが、本作の良いところはこれを照れなく全力でやり切っているところで、露骨であっても美しいアニメーションと渾身の演出で「うちはこういう味でやってますんで!」と提示されると一周回って気持ちが良いというものである。


 さて、原作の中でも最も地味な「刀鍛冶の里編」をこれだけの高クオリティで提供できた時点で、原作最終回までのアニメ化はほぼ確実となったと見てよいだろう。次作となる「柱稽古編」のアニメ化も発表され、最終章となる「無限城編」のアニメ化への期待も高まるばかりである。

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