映画雑談『バブル』
いろんな映画サイトのレビューでボロクソに言われている映画『バブル』。駄作だとか爆死だとか、映画好きの一人として気の毒に感じるほどの悪評です。しかしいったい何がそんなにダメなのか、観てみないことにはわかりません。百聞は一見に如かず、私の好きな言葉ですbyメフィラス。
というわけで恐る恐る観てみると、意外なほどに私はけっこう楽しめました。確かに生涯の価値観を変えてしまうほどの名作というわけではありませんでしたが、そんなに目くじらを立てるほどのひどい作品でもありません。年間に何百と作られている映画の中で、存在しても良いレベルは保っていると思います。上から目線でごめんなさい。
数々のネガティブな評価は、もしかすると批判的思考に対して心のハードルを下げるための意図的なキャンペーンだったのかもしれません。だとすると私もまんまと乗せられてしまいましたかね。まあ、楽しめたのだからオーライです。
(以下、ちょっとだけネタバレあります)
単なる気泡ではない『泡』やヒロインであるウタの正体等々、多くが謎のままだということが、どうやら不評の一因のようです。しかしそれらにロジカルな説明のないことで本作を全否定するのはもったいないと思います。
本作を楽しむポイントはパルクールの疾走感であり、主人公たちの成長譚の部分でしょう。
良くも悪くもウェルメイドなボーイミーツガールとして主人公とウタは心を通わせます。しかし直に触れ合うとウタは泡になって消えてしまいます。この辺の設定の説明もありませんが、ここでつっかえていてはいけません。おとなげないです。さらに、二人のもどかしさと切なさを描写するには各エピソードが突然かつ性急すぎて十分とは思えませんが、大人なら脳内で補完してあげましょう、なんていったら優しすぎるのでしょうか?
パルクールの見せ方に関しても、けっして満足しているわけではありません。
これは極めて個人的な好みでしかないのですが、疾走感を出すなら演出にしろ音楽にしろ、もっと攻撃的な力強さが欲しかったです。カッコよくいうなら、ロックが足りませんでした。少年少女の心の動きをパルクールに乗せて描く割には情緒に訴えようとしすぎていて(私は使わない言葉ですが「エモい」というヤツを狙ったのでしょうか)、私には食い足りませんでした。
アクションゲームを見ているようだとのレビューも散見されますが、なるほど同感です。漂う瓦礫を踏み台に駆け上がるところなんか『GRAVITY DAZE』というより、懐かしの『SHINOBI』を思い出しました。古すぎて、これまたごめんなさい。とにかく、そんな古い記憶が蘇るような映像だったということです。気鋭のクリエイターが作っているはずなのに、新鮮なように見えて既視感があることは否めません。
いや、あまりにも評判が悪いのでひねくれ者の私くらいは味方になろうかと思いましたが、書いているうちに悪口になってきました。これまたまた、ごめんなさい。観ている間は好意的に受け取るようにしていた軽みも、時間が経って思い返せば安易で物足りなかったという感想に変わります。まあ何の責任もない立場で言っております。絵はきれいでした、とフォローしておきます。
批判も期待の裏返しと捉え、これからも若いクリエイターには恐れることなく個性を信じて作品に取り組んでいただきたいです。この際、やり過ぎなくらい振り切ってほしいですね。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、私の好きな言葉ですbyメフィラス。