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〔ショートショート〕書庫冷凍

屋外型トランクルームの中は、何故か外より寒い。ここは私の書庫、と言っても、ここにある本は全て私の手作り。彼との出会いから、エピソード別にパソコンに入力し、印刷した物を並べている。表紙も私の手描きで、桜や向日葵、秋桜に山茶花と、季節の花で彩ってきた。
彼が知らないこの場所に、見渡す限り彼との日々が並ぶ。誕生日にくれたペンダントのこと、初めてケンカしたこと、彼の部屋で朝を迎えた日のこと。全部覚えてる。

「他に好きな子が出来たんだ」
彼は言った。「そう」と言ったのは、そんな気がしていたから。ホッとしたように「これからは友達で」って彼が手を差し出したけど、無視してやった。それぐらい良いよね?

外は氷点下。想い出を凍らせるにはピッタリだ。私はコートを脱ぎ、薄手のワンピース姿になる。桜の下で初めて会った時の服、彼、覚えてるかな。
薬のせいか酷く眠くなってきた。崩れ落ちるように、冷たい床に横たわる。私の記憶が静かに凍っていく……。
(完・410字)


こんばんは。こちらに参加させていただきます。

何でこの時期にこんな話を、と聞かないでください💦私が聞きたいぐらいなので。なぜ、幸せなストーリーが書けなかったのか、ただ今自問自答しております。

たらはさん、こんなストーリーで恐縮ですが、何とぞよろしくお願いします。
読んでくださった方、どんよりさせてしまったらごめんなさい!読んでくださって、ありがとうございました。

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