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anarita
〔ショートショート〕秋の空時計
約束の秋が来た。でもお兄ちゃんは帰ってこない。
10才年上のお兄ちゃんは、隣の国から私たちを守るために、遠くに行ってしまった。いつも優しくて、大好きなお兄ちゃん。出発の朝、あんまり私が泣くから、お兄ちゃんは空を指さして言った。
「空にも時計があるんだよ。ほら、今の空はとても濃い青色で、雲はモクモクしてるだろう?これは夏の空なんだ」
つられて私も空を見た。
「あの青が少し優しくなって、空が高くなったら秋。空が教えてくれるよ。そしたらきっと、帰ってくるから」
「ほんと?約束だよ?」
「うん、約束だ」
お兄ちゃんはとびきり優しく笑って、私の頭をクシュッとすると行ってしまった。
あれから私は、毎日空を見ていた。早く秋になるよう何日も何日もお祈りして、やっと空の色が優しくなって、ずっと高くなった。でも、お兄ちゃんはまだ帰らない。
「お兄ちゃんの空時計、壊れてないかな」
心配しながら、私は今日も空を見ている。
こんばんは。たらはかにさんの、「毎週ショートショートnote」に参加しました。
まだ手探りで、これで良いのか試行錯誤中です。でも、書くきっかけを頂けて嬉しいので、ちょこちょこ参加させていただこうと思っています。
たらはかにさん、読んで下さった方、有難うございました。