芸の高みを目指す者が見る世界はこんなにも美しく寂しい/吉田修一『国宝』
歌舞伎のハードルってだいぶ高いけれど、えいやと飛び込んでみると思ってるほどの難しさはなくて、面白い楽しい美しい!にあふれてます。
でも、この「えいや!」が難しい。
周りに興味ある人とか詳しい人がいればまだしも、そもそも飛び込んでみるほどの興味を持つに至らない。
で、そういう時に小説というのは偉大な力を発揮するのです。
では、ぐぐぐーっと歌舞伎の世界に引き込まれて、かつ歌舞伎とは何ぞやがよくわかるものはないものか。
そうして見つけたのが吉田修一さんの『国宝』。
超ざっくりどんな話かというと、
ヤクザの家に生まれた少年が歌舞伎の世界に入って、そこの跡取り息子とわちゃわちゃしながら高みを目指していくお話です。
こう書くと、ハートウォーミング感ありますね。青春大爆発してそう。でもそゆのじゃなかったです。読んでて、すごく辛かった。ぐーっと胸が締め付けられた。辛かったけど、読む手を止められなかった。沼に引きずり込まれながらも必死に前に進んでいくような感じ。
数多の苦難を乗り越えながらも生きていく人間ドラマが好きな方にはおすすめです。「歌舞伎ってこんな素敵な世界なんだ!きゃーっ!私も観に行こう!」みたいな感じにはなりませんので悪しからず。でも「こんだけ人生かけて作り上げられる舞台とはどんなものか」という感じで興味を持ってもらえるんじゃないでしょうか。
実際、旦那はこれまで玉三郎さんの特別公演以外はあんまり興味を示さなかったのですが、読了後に「襲名披露公演行ってみたい」と話してました(わーい)
この『国宝』、歌舞伎の世界の描写がものすごく細かい。巻末の参考資料一覧にずらりと並ぶ書名を見ればどれほど勉強されたかがわかりますが、それだけにあらず。四代目中村鴈治郎さんについて全国の劇場をまわりながら、稽古場から楽屋、舞台袖まで3年間も取材されたそうです。すごすぎる。
もともと大ファンとかいうわけでもなく、知識ほぼ0の状態から始まったというのだから驚きです。
そして文体もかなり特徴的で、講談を聞いているかのような語り口で進んでいきます。最初はちょっと読み慣れなくて違和感があったけれど、読み進めていくうちにこれがまた癖になるというか、歌舞伎らしさをより強めてくれる。
あと、「幸せ」ってなんだろう、って考えさせられます。あんまり言うとネタバレになっちゃうからもごもごしておきますけれど。
ちなみに映画化されるみたいですね。予告編がえらいかっこよい。公開楽しみだなぁ。
ということで、歌舞伎に興味がある人もない人もぜひ読んでみてください~