名を捨てた神。「真・女神転生Ⅳ FAINAL 」
人外ハンター。
悪魔と神の戦いに巻き込まれた東京。
空が見えない「岩盤」に囲まれた
陽の届かない街で自分は
「ナナシ」と呼ばれている。
東京中を闊歩している悪魔狩りを生業としている「人外ハンター見習い」の一員だ。
幼なじみの「アサヒ」は
ハンターとして活動させてくれない
商会のマスターに毎日不満たらたら。
ある日、
サポートと言う意味でのハンター活動なら
OKだと許可がおり、アサヒは浮き足だっている。
ハンターには「スマホ」が欠かせない。
スマホはすでに過去の遺物であり、
持つ事はそうそう容易くない。
そうした「遺物」はあちこちに落ちているので、
人外ハンターを支える意味でも遺物漁りは大切な仕事だ。
その中で「壊れたスマホ」が見つかった。
画面は割れ、使えないかも知れないが、修理すればなんとかなるかも知れない。
スマホがあれば、「悪魔召喚プログラム」が使え、東京をうろついている悪魔との戦いも有利になる。
「これでハンターになれるかも!」
アサヒは浮き足立ち、一度待機場所に戻った。
そこにいるはずのない悪魔。
この薄暗い東京では
食料が不足していて
人間は悪魔の肉を食べる事で飢えを
満たしている。
自分達の指導役である先輩ハンター、ニッカリさんは手慣れた手付きで悪魔を捌いている時、
「この辺の悪魔ならそうそう強くない。
オレらがサポートするからやってみるか?」
「行きます!」と即答するアサヒ。
アサヒは、なんとしてもハンターとして認められ、活躍したくて仕方がない。
手柄がどうしても欲しいのだ。
アサヒが腕を引っ張り、悪魔との戦闘に挑む。
低級悪魔を退け、一息ついたその時。
明らかに格の違う悪魔の声がした。
ここにいるはずのない上級悪魔だ。
他の悪魔は皆言葉使いが荒いが、
この悪魔は違う。
丁寧な言葉が、知能の高さを物語っている。
「逃げろ!」とニッカリさんは促すが、
悪魔のオーラに押され身動きが取れない。
そいつは、容赦なくあっさりとニッカリさんと
マナブを燃やし尽くした。
2人の断末魔の叫びが、辺りを包み込む。
「理不尽だと、不条理だと感じているのでしょう?」悪魔は、落ち着いた口調で語りかけて来る。
「なぜ人間を襲うのか」と。
問いたところで所詮、悪魔達にとっても
人間は食料でしかないのだ。
「それのなにがいけないのですか?」
答えたいが
今はこの状況すら理解出来ない。
こんな所になぜこの悪魔が居るのか。
なぜこんな事になって居るのか…。
考えても恐怖で思考がまとまらない。
次は
貴方だと宣言した悪魔。
悪魔を使役できる「スマホ」が使えない中、
悪魔は自分に手をかけた。
抵抗する事も出来ず
あっけなく切り裂かれ、地面に叩きつけられた。
魔神との出会い。
「ナナシ…!ナナシ…!!」
アサヒが声を絞り出しながら近づいて来るのが
分かった。
しかし、声を上げる事も出来ない。
力が抜けていく。意識が遠のく。
泣き喚くアサヒの声が、虚しく響いている…。
気がつけば、そこは「黄泉」と呼ばれる場所かも知れないし、違うかも知れない。
分からないが、確信があるのは
自分は死んでしまったと言う事だ。
天国か地獄かはわからないけど
おそらくここはそう言った場所に違いない。
あてもなくもやの中を
歩くと薄黄色い改札口が見える。
耳を澄ますと自分を呼ぶ声がしてきた。
改札を抜け、線路らしき道を辿って行くと
そこには見知らぬ男が立っていた。
自らを「魔神ダグザ」だと名乗る
背の高い悪魔だ。
ダグザは
「俺の声を聞いてここに来たのだろう?」
「小僧。お前の様な者を待っていた。」
「俺の言う事を聞けば現世に戻してやる。」
「早くしないとあの幼なじみがどうなるかは
わかっているだろう。」
「俺のマリオネットとなれ。そうすればあの悪魔にも負けない力を与えてやる。」
選択肢は無かった。
断れば彷徨う魂としてゲームオーバー。
素直に聞くしかない。
「お前は今から俺の神殺しとなれ」
言っている意味が分からないが
早くしないといけない様だ。
なによりアサヒが。
いつもどんな時でも「ナナシナナシ!」と
慕ってくれている幼なじみ。
助けたい。早く。
そうして自分は「神殺し」として
生まれ変わった。
神殺しとして。
目が覚めると、正に今、
悪魔がアサヒに手をかける寸前だった。
訳の分からない力が湧いて来る。
怒りのまま戦っていたら、悪魔は
気がついた様だ。
「貴方、力を得ましたね?
これは復讐に燃える魔神の力…。ふむ。
まぁお腹は満たしました。今日はもういいでしょう。」
そう言い残し、悪魔は去った。
悪魔を撃退した後も
自分は各地のハンターたちと共に
東京中を駆け回った。
自らが招いてしまった多神連合との戦いも
天上の悪魔も地獄の悪魔も倒した。
この東京に「平和」が訪れた瞬間。
人間が人間の為に生きる世界を手に入れた。
それもこれも神殺しとしての力だ。
だけどそれも、
仲間達のバックアップがあっての事だ。
ひとりでは、到底成し得ないクエストなんだ。
この時まで、ダグザの神殺しだった事は
すっかり忘れていた。
宇宙卵。
地元の錦糸町ハンター商会で祝杯を
あげることになり、
仲間たちと共に会場に向かう。
そこには共に戦ってくれた天上の人間であるにも関わらず、東京の民の為に戦っていた
人間界のヒーロー「フリン」の姿もあった。
フリンが
勇ましくけたたましく祝杯を上げる。
フリンにとっても、これは正に待ち望んだ結果だ。多少声を荒げても、不思議ではない。
しかし。
あの「フリン」が。
いつも冷静でどちらかと言うと静かな青年。
そのフリンが、会場中に割れんばかりに
声を上げる。
何かがおかしい。
フリンが叫ぶ度に
力が抜ける。周りのみんなも様子がおかしい。
まるで「魂」が抜け落ちるようだ。
意識が薄れていく。
その瞬間。
そこにいた全員が倒れている…。
仲間も…人外ハンターの人々も
ツギハギさんもフジワラさんも…。
かろうじて仲間達は意識を取り戻したが、
朦朧としている…。
そこに、
フリンが近寄って来た。
ゆっくりと。
まるで獲物をジワジワと追い詰める様な
仕草だ。今がチャンスだと言いたいかの様に
フリンが囁く。
「後はお前だけだ…。」
その瞬間、フリンは姿を変え
悪魔として現れた。
…シェーシャ。
人間の魂を集めて「宇宙卵…新たなる宇宙」を
産み出す存在だ。多神連合が「新たなる創生」のために使役した悪魔だ。
少しずつ姿を変え、その度に仕留めたはずだ。
まだ生きていたのか。
「必ズ生キ返ルカラナ…」
と言い残したが
ただの負け惜しみだと思っていた。
人々を利用し、効率良く魂を集める事を
学んだシェーシャは、見事にフリンに化け
人々の魂を奪う事に成功したのだ。
「言っただろう?俺は何度でも甦ると。
そしてお前を必ず食ってやると…!」
復讐に成功したシェーシャは
笑いが止まらない。
残るは…自分だけだ。
返り討ちにしてやるつもりだったが、
力が抜け身動き出来ない。
シェーシャは
口が裂けるほどの大口を開け
自分を捕食しようとした。
アサヒ。
「ナナシ!」
次の瞬間、なにかが覆い被さっている…。
それはすぐに
「アサヒ」だと理解した。
そこにはアサヒの形式を持ったものがいない。
跡形も無く喰われてしまった…。
無情にも
「アサヒだったもの」が転がっている。
もう「ナナシ!」と呼ぶ声は2度と聞こえない。
アサヒの体すら残っていない。
トレードマークのゴーグルだけが
血の海の上に投げ捨てられていた。
ダグザの狙い。
「美味い魂だった。もう充分だ」
そう言い残しシェーシャは目的を達して
「宇宙卵」の創生に入った。
シェーシャは「宇宙卵」として
姿を変える。
アサヒを犠牲にしてしまった自分が情けない。
もし、新たな宇宙卵が孵ってしまったら
この世界は丸呑みされる。
破壊しなければならない。
東京のためにもアサヒのためにも。
事の一連を眺めていたダグザが。
今まで静かに見届けていた
魔神が、いよいよだと語りかけて来る。
「小僧。時は近いぞ。いいか、選択を誤るなよ」
選択?破壊の事か?
いや違う。
ダグザの狙いは、新たな宇宙で自らが
「創造主」として生まれ変わる事だ。
そのために自分を「神殺し」
として操り続けているのだ。
ダグザは「宇宙卵」を奪還するのが目的だ。
破壊か。奪還か。
揺らぐ想いを抱えたまま、
多神連合を撃破して、宇宙卵に近づく。
選択と覚悟。
ダグザの狙いと、多神連合の連中も目的が最終段階に入りいよいよラストステージだ。
またまた魔神が語りかけて来る。
「覚悟は出来ているか…小僧。」
意味ありげにダグザは頻繁に語りかける。
並いる悪魔達を倒し、
宇宙卵の最高層へと向かう。
しかし、まだ本物の敵がいる。
多神連合のリーダー的存在「クリシュナ」
彼を倒さねば「コア」の元には辿り着けない。
それに破壊しなければ卵は孵ってこの宇宙は
消えて無くなる。
早く辿り着かなければ、
どの道クリシュナが「救済」してしまうだろう。
甘く、ゆったりとした声で。
複雑な構造の宇宙卵の中を歩き続け
残るはクリシュナの撃破だけとなった。
ここまで来れたのは
頼もしい仲間達の存在が大きい。
どんな時にもサポートしあい、
声をかけて「人間が人間の為に生きる世界」を
夢見て戦った仲間達。
「さぁ!行きましょう!」
1番年長者の
ノゾミの掛け声で全員が息を合わせた。
士気は高い。このまま全員でクリシュナの元へと
向かうはずだった…。
時は来た。
全員でクリシュナ撃破を目指したその時。
ダグザが現れた。
「そろそろ頃合いだ。
どちらに与するか、選べ。小僧。」
選べ。
先ほど言っていた「覚悟」の意味か。
「選択を誤るな」の答え合わせか。
それは、二者択一の究極の選択だ。
もし、
仲間を選べば、この命は魔神の物だ。
このまま魂だけ抜き取られ、
仲間達と人間界を守ることは叶わない。
魂だけの存在になり、
最後まで戦うことが出来なくなる。
人間が人間の為に生きる世界…。
そう夢見てきた。それは今も変わらないはずだ。
アサヒだっていつも望んでいたじゃないか。
自分のコタエは、決まっている…。
しかし。魔神は待ってはくれない。
「俺か?くだらん仲間か?早く選べ。」
それはつまり、卵の破壊か奪還か。の事だ。
「どうした?もう結論は出ているのだろう?」
イラだった口調で選択を迫るダグザ。
仲間達との馴れ合いに水を差すダグザだ。
何者にも与しない事を望んでいるダグザだ。
仲間を選べば容赦無く自分を切り捨てるだろう。
「命とは孤高で在るべきだ」
ダグザの言葉が頭をよぎる。
つまり…魔神を選べば…それは…。
もう戻れない。
自分は…悪魔に魂を売った。
卵の「奪還」を選んだのだ。
それを選んだと言う事は…。
今までずっと一緒だった仲間達を
ひとり残らず灰にすると言う事だ。
思い返せ!と言う仲間も入れば、
「それがリーダーの選択なら…」と理解してくれる者もいた。
ひとりひとりが思い思いの
言葉を最後にかけてくる。
だが…
そのどれもが、自分にはもう届かない。
最後にノゾミを手にかけ
「アサヒちゃんに合わせる顔があるの!?」
と言い残し、彼女はこの世から居なくなった。
アサヒ…。
手に持った形見のゴーグルが虚しく映る。
「終わったか小僧」
その一言で全てを察した。
もう終わった事だ。
これから宇宙卵を孵し、新たな創造主になれば
どの道、仲間達も無事ではない。
ならば。
自らの手で仲間を葬ったのは…
せめてもの「償い」だ。
もう、戻れない。
真の支配者。
「オレたち」は宇宙卵を手にした。
しかしこれで終わりではない。
この宇宙の創造主を倒す時だ。
YHVH。
この神が、今の世界、この宇宙を支配している。
肉体の軛を作り
魂の永遠の輪廻を促すもの。
それ自体が、この宇宙の法と秩序を作り出している。
YHVHがいる限り、新たな宇宙など創生できる
はずがないのだ。
だがクリシュナとの戦いで、
少しの間、休まねばならなかった。
魔神も自分も力を蓄えておく必要があった。
来る決戦は、すぐそこまで来ている。
名を捨てた神。
広大無辺の宇宙を彷徨い、本来の姿に戻った
「サタン」を退け、
その神々しい扉の向こうに、YHVHはいる。
YHVHが居座る、神の玉座を奪う。
そうすれば、新たな宇宙で新たな神が誕生する。
ダグザが「創造主」として
この宇宙に君臨する時が。
フリンを自分の「神殺し」として仕え、
YHVHを無に返したその時。
魔神は語り出した。
「終わったな小僧…。
これで晴れて俺は自由になれる。」
「これまでの俺ら神々は、「名前」を与えられ
「役割」を与えられ、
万物を支配する「神」として崇められている」
「だがそれは、人間が人間達のために「神」を利用し、「役割だけが神」だと認識するようになってから名前があてがわれた。」
「名があって初めて「神」とされる」
「役割こそが「神なのだ」と」
「しかし、だ。」
「神とは本来、意識せずともそこにいる存在なのだ。名前どころか役割すらも必要のない、自由な存在だったのだ。」
「これが本来の「神」の姿だ。」
名も役割もない、いや、姿形など元々は
存在しないものなのだ。」
「これで俺を認識するものはいなくなった。
神どころか人間さえ、草木でさえいなくなったのだから。」
「これが本当の俺の姿だ。俺は本来の姿に戻りたかったのだ。」
「誰にも何にも縛られない「真の自由」の姿へ。」
「ありがとうな、小僧…。」
そういい告げる言葉と共に、魔神は姿を消した。
手足が、自由に動く。
魔神の「マリオネット」としての役割が
終わった瞬間だ。
なにもかもが、終わったのだ。
今までの東京も、神も悪魔もいない。
天上も地獄も存在しない。
人間も動物もいない。
生来あった、
何物にも縛られない存在に還ったのだ。
自分だけの意思が生まれ、
何者にも与しない。
自分は
「ナナシ」でも無くなったのだ。
真の自由とは、孤独なのだ。
あとがきのようなもの。
今回のお話しはおしまいです。
最後まで読んでくださりありがとうございます♪
メガテン4F、めちゃくちゃ好きで6周目で〜す。
4と4F、リメイク来ないか待ちまくりです!
ATLASさん、お願いしますね!
ちょっと長くなっちゃいましたね〜。途中で離脱されないか不安で、2回に分けようか考えましたが、(ちょいとメンドーで)突っ走りました(笑)
ずいぶん前に書いたものですが、熟成下書き的なものを掘り起こしてみたら意外にいいんじゃね?って思いまして。ちょっと覚えてないところ、ままありますけど…。
メガテン4Fほんと楽しいので激推しです!
なにより「マーメイドたん」初登場ですからね!
こう言うの楽しいっす。
まだまだ甘い所がたくさんありますが
コンゴトモヨロシク。
コケでした〜。