ねこまよ

十年以上前に遊んでいたELLARKが楽しかったので、それを思い出してリザルト風の小説を…

ねこまよ

十年以上前に遊んでいたELLARKが楽しかったので、それを思い出してリザルト風の小説を書いていきます。

記事一覧

流れついて早半年

 何度も見た夢。何度も想像した世界。  いつか戻れるかな? あの世界に。  けたたましく鳴るアラームに手を伸ばす。時刻は6時。私は目を細めながら現実逃避する。  …

ねこまよ
12日前
2

邸宅の草刈り

 誰も受けない依頼がある。  その依頼は一週間前から掲示板に貼られ続け、誰の目にも留まらなかった。報酬はたったの20マルク。そう、庭の草刈りである。  ギルドの掲示…

ねこまよ
2週間前
3

ニレ川南

 冒険者の一日は日雇い労働者のようなものだ。宿で簡単な朝食を摂り、昼は依頼をこなし、夜は再び宿で夕食を頂き、寝る。家でもあれば生活拠点として自由にできるのだが、…

ねこまよ
2週間前
1

フィナージュ平原

 フィナージュ街中心部にある冒険者ギルド。  ギルドに登録した人は冒険者という扱いとなり、依頼を受諾できるようになる。冒険者ギルドの掲示板は常に大量の依頼で埋め…

ねこまよ
2週間前
2

クラカト草原の散策

 街の城門の近衛兵を通り過ぎ、道なりに進む。  茶色の地面は踏み固められ、草一つ生えていない。人の往来が激しい証拠だ。先ほど通り過ぎた馬車の車輪の跡も残っている…

ねこまよ
5か月前

流れついて早半年

 何度も見た夢。何度も想像した世界。
 いつか戻れるかな? あの世界に。

 けたたましく鳴るアラームに手を伸ばす。時刻は6時。私は目を細めながら現実逃避する。
 いつの間にかずり落ちた掛け布団。暑さを感じてベッドの脇へ落としたのかもしれない。気付けば、お腹も出ている。私は皺が寄ったパジャマを伸ばしながら目を擦った。
 カーテンの隙間から漏れる光を見つけて、カーテンを両サイドに開いた。途端に飛び込

もっとみる

邸宅の草刈り

 誰も受けない依頼がある。
 その依頼は一週間前から掲示板に貼られ続け、誰の目にも留まらなかった。報酬はたったの20マルク。そう、庭の草刈りである。
 ギルドの掲示板に貼られた数々の依頼を一頻り眺めたあと、日焼けして茶色になった依頼に目が留まった。だが、それが何であるか内容を吟味する必要はなく「ああ、アレか」と私の中で合点がいく。受けずの依頼、だ。

 依頼は大きく分けて五つある。
 討伐、採集、

もっとみる
ニレ川南

ニレ川南

 冒険者の一日は日雇い労働者のようなものだ。宿で簡単な朝食を摂り、昼は依頼をこなし、夜は再び宿で夕食を頂き、寝る。家でもあれば生活拠点として自由にできるのだが、その家を買うお金はいっぱしの冒険者の懐事情では厳しい。安宿で食う寝る依頼しかできない私にとっては夢のまた夢だ。
 少し離れた鉱山へ採掘に行き、一攫千金を狙うという手もある。金鉱石が掘れるという噂のラシオ鉱山。ツルハシとスコップを携えた労働者

もっとみる
フィナージュ平原

フィナージュ平原

 フィナージュ街中心部にある冒険者ギルド。
 ギルドに登録した人は冒険者という扱いとなり、依頼を受諾できるようになる。冒険者ギルドの掲示板は常に大量の依頼で埋め尽くされており、もちろん冒険者たちで賑わっている。私も例に漏れず、掲示板の一端を眺めては依頼を見定めていたところだ。
 簡単な依頼の代表格は『民家の雑草抜き』だ。ギルドに依頼することではないと思われるが、日中仕事に明け暮れる家主にとって家周

もっとみる
クラカト草原の散策

クラカト草原の散策

 街の城門の近衛兵を通り過ぎ、道なりに進む。
 茶色の地面は踏み固められ、草一つ生えていない。人の往来が激しい証拠だ。先ほど通り過ぎた馬車の車輪の跡も残っている。
 とは言うものの、道から少し外れると手入れのされていない草原がどこまでも続く。幸い、草木の背丈は低く、人の姿が隠れるほどではなかった。
 草を掻き分けながら奥へと向かう。さて、そろそろ見える頃だが……。
 草木の丈が意図的に刈られた小さ

もっとみる