柔らかく温かな言葉が、だれかの首を絞める真綿になる可能性について
「おまえが『早稲田に行きたいです』って言ったんやろ、だからおまえの責任や」と親父は言った。実際にはそれは「言わされた目標」だったのだが、親父はそれを言質としてぼくを殴り続けた。
子供はこちらが思っている以上に、いろんなことを理解している。どう振る舞えば怒られないか、機嫌が悪くならないか。植え付けられた恐怖心は、年齢が上がるとともに相手の感情を鋭敏に察するセンサーへと進化を遂げる。そして、求められている言葉を瞬時に差し出す癖がついてしまうのだ。
「早稲田に行きたい」とたしか