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【読書日和】カクヨム「死ねない死者は夜に生きる」(霜月透子著)を読んで
この作品は、それぞれの目線が変わりながら進んでいく。それが、その人たちの気持ちを表し、心が見えるようだった。
「颯と咲」。「武雄と蘭子」。そして要。それぞれのラブストーリーと絆の物語。とても悲しいラブストーリー。そして絆。
環境や境遇が違えど、人を好きになる心は同じなのではないか。人を好きになればなるほど、相手が心に沁み込んでくる。
誰しもに訪れる「死」。でも愛する人を突然失ってしまったら。苦しい、悲しい、そんな時、失った相手が現れたらどうするのだろうか。人でなくなっていたとしても、手を差しのべられるのだろうか。でも颯は差しのべた。人でなくなっていたとしても、大切な相手だから。きっと側にいたかったに違いない。でもサキは? 人でなくなった自分を自覚して、颯の側にいられるのか。いたいと思うのか。きっと苦しいだろう。側にいられても、いられなくても。
そして「武雄と蘭子」。「颯と咲」に隠れて見えるが、こちらも密やかなラブストーリー。そして別の絆で結ばれている要。しかしそれは、とても希薄なもの。「要と蘭子」の切れそうな絆が、とても悲しい。「ランコとサキ」。そして「武雄と颯」。それぞれが交差する。とても悲しい形で。もう戻れない。それぞれのあり方が違うから。同じ時を重ねることの大切さが心に沁みる。
出来るなら、それぞれ元に戻って欲しい。それは悲しい願い。「颯と咲」のラブストーリー。そして「武雄と蘭子、要」の絆。
悲しい。切ない。苦しい。そんな感情に襲われる。
この作品は、「死」というものを題材とした、究極のラブストーリーだ。愛とは何か。そんなことを考えさせてくれる作品でもあった。