【本】『神聖喜劇 第五巻』 (大西巨人/のぞゑのぶひさ/岩田和博/幻冬舎)
こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。
今日は五巻を読みました。
主人公の東堂は、伍長と隊長に呼び出されて詰問されます。
いつも通りの東堂の驚異の記憶力と論理的思考で乗り切ります。
東堂のことは凄いなぁと思うけれど、本当にこんな人がいたら、論理的に話すまえに、ぼこぼこに殴られてしまうのではないかなーと心配になります。
前巻より、同期の冬木に何らかの嫌疑がかかっていることについて、東堂はみんなの見聞きしたことを総合したり、新聞社に勤めていた頃の友人に問い合わせるなどして、調査していました。ついに彼は冬木のつらい過去を探り当てます。江戸時代から続いてきた差別が原因ともいえるようえす。東堂らは冬木の無罪を確信したいのですが、冬木はなにか隠し事をしている風でもあります。
火砲訓練の様子は、漫画だとわかりやすいです。
火砲は七人で一台を面倒みるようです。そして七人のうち「二番砲手」が、花形のようです。もちろん東堂は「二番砲手」です。
日ごろから東堂に何かと因縁をつけて罵倒する大前田軍曹も、二番砲手の名手です。
その鮮やかな手際に東堂は日ごろの因縁はおいておいて大前田軍曹を尊敬します。東堂は休み時間をつかって、手早く照準を合わせるための自主練をしました。
実弾射撃の日、三班がそれぞれ一発ずつ射撃し、東堂は自主練の成果が実り24500メートル先の筏に見事命中させました。大前田軍曹が珍しく東堂を褒めました。普段は曲がったものの見方をする軍曹が、時々見せる公明正大さに、東堂は不思議に胸を熱くします。
冬木が濡れ衣を着せられそうになっている件は、まだ宙にういたまま、六巻へつづきます。
この本の解題にて高田理恵子が、高学歴二等兵が戦後日本の文学や思想に影響をもたらしていることについて書いています。(二等兵とは一番下のランクなんですね。)作家の名をメモしておくと、本書の原作者である大西巨人をはじめとして、大岡昇平(スタンダールとレイテ戦記の人。11月頃、神奈川近代文学館で展示していましたね)、丸谷真男(岩波新書がうちにあったような)、竹内好(加藤周一の本で見たことある)、会田雄次、富士正晴、古山高麗雄、小島信夫(第三の新人)、田中小実昌(チャンドラーを翻訳した人)。()内はわたしの拙い認識です。知らない作家はちかいうち読んでみたいと思います。
■本日の一冊『神聖喜劇 第五巻』 (大西巨人/のぞゑのぶひさ/岩田和博/幻冬舎)
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