【オリジナル小説】スターダスト
初めて自分の曲を作ったのは、高校一年の時。
中学時代の小遣いと、バイト代を貯めて買ったギターで自由に作った。
音楽作りの法則とか、小難しいことは頭に入らなかったからプロから見れば鳥肌が立つようなしっちゃかめっちゃかな曲だと思う。
それでも、俺が楽しければそれで良かった。
高二になった時、軽音部が設立された。
同じクラスの大和が一年の頃から水面下でずっと部活を作ろうと動いていたらしい。知ってすぐ飛び込んだ。部室に入ると顔は知っているけど話したことの無い面子が揃っていた。ドラムの大和、ベースの大輝、シンセサイザーの颯太。
そこでみっちり音楽を学び、文化祭に向けた四人バンドを結成し、当時流行っていた曲を三曲ほど披露した。祭り気分で浮かれた奴らが集まっていたお陰もあって、名前のないバンドでも大いに盛り上がった。ステージの上でギターを弾きながら歌い、歓声を浴びる心地良さを知ったのもあの時だ。
「なぁ、大和! バンドってマジで最高だな! このまま世界取れるんじゃねぇの?」
「涼! お前の歌すげぇな! お前ならイケるかもな!」
「卒業したらさ、ライブハウス借りてライブしてみねぇ?」
「いいじゃん! 十八から成人だもんな、俺らも使えるようになるんだ!」
そんな中で書いたオリジナルの曲。高一の頃と比べたらちゃんと歌として成立していて、自分が成長している実感を得れた。全細胞が震えたもんだ。
「タイトルどうしようか…颯太アイデアある?」
「涼が言ってたスターダストがいいなぁ 」
「この歌、絶対ステージで歌いてぇ! なぁ、大和」
「わかる。俺らの集大成って感じするもんな」
でも、順調だったのは夏休み前の話。部活は強制的に卒業させられた後やれ大学受験だ、就活だと現実が迫ってきて俺達が練習に集まる機会はどんどん減り、最終的には無くなった。
「いつかライブやりたいな!」その言葉だけは言い続けて。プロになる道も考えたけれど、ネット上に歌動画を上げても全然伸びない再生数が無理だと言ったんだ。
※
「あれから二年経っちまったけど、ライブは一回やらねぇか?」
大学帰り、急遽大和に呼び出されて俺と大輝と颯太は顔を合わせた。夏の終わりのぬるい風が吹く。陽が沈もうと山に隠れ始める。
すっかりスーツを着こなした大和が俺達に頭を下げる光景は、第三者からしたらオヤジ狩りに見えるかも知れない。
「一回でいい。プロになった気分を味わいたい」
卒業して、就職した大和はなんだか別世界の人間みたいで俺達の方から距離を置いていた。でも、そんな事はないのだとこの時やっと気がつく。
軽音部としてバンド結成出来たのも、俺達のオリジナル曲を作れたのもコイツのお陰。そう思うと無視出来ない。
大輝も颯太も意見は同じだったみたいで声が揃った。
「「「やろうぜ、俺達のステージをよ!」」」
顔を上げた大和の目の輝きは星が宿っているようだった。彼の後ろの空で一番星が光っていたけれど、そんなもん霞んでた。
※
三十人規模の小さなライブハウス。照明もスピーカーも備え付けのもの。ステージは十五歩も歩けば袖幕に入ってしまいそうなほど狭い。
それでも、俺達四人にとってみればこれまでに無い最高の舞台!始まる前から俺の中の魂が熱を放ち、ぶるぶると震える。
観客はこの日の為に集まってくれた高校時代の友達達がほとんど。今日来てくれた奴らには最高の舞台を届けて伝説が出来る瞬間を見せてやるぜ!
センターのスポットライトの下、マイク前で一回深呼吸して叫んだ。
『それでは聞いてくれ! "スターダスト"!!』
著/作詞 ちょんまげネコ
曲/歌 涼 (ジラルダ)
JOYSOUND 配信中
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