【映画レビュー&イベントレポート】久しぶりの現地開催!花開くコリア・アニメーション2023レポート!
2023年5月13日(土)に大阪・プラネットプラスワンさんにて、久しぶりの現地開催となった『花開くコリア・アニメーション2023』が開催されました。
花コリとは?
基本的には韓国の短編アニメーションが観られるイベントなのですが、合わせて日本を含むアジア圏や、長編作品の上映もあったりします。
プラネットプラスワンさんはちょっと小さな映画館なので、救急車が通ったりするとちょっと聞こえてきちゃう感じもするんですが、あのギュッとした感じはたまに足を運ぶと味に感じたりもしています。
今回全プログラム鑑賞してきたので、各プログラムと特に良かった作品をざっと紹介しますね。
韓国短編プログラム①「世界のかたち」
現実とファンタジーを行き来する短編と中編の以下5作品が上映。
シリアスな「死」の物語からコミカルな作品まで一つのプログラムの中で、作品の色に幅のあるプログラム。
人形物語(2022)/ パク・セホン監督
ストップモーションの人形たちが監督の居ない間に動き出すストップモーションアニメーション版『トイ・ストーリー』。笑わせつつクリエイターにとって泣かせる話でもあり秀逸。作中ではストップモーション界のレジェンド人形として、“あの”古典ストップモーション人形が出てくるのも面白かったです。
魔法が戻る日の海(2022)/ ハン・ジウォン監督
恋人だと思っていた男に奥さんと子供がいる事が発覚したり、その男に欠陥マンションを契約させられていたり、父親には面接当日に事故を起こされ足を引っ張られ……と人生を追い込まれた女性・セジンを描いた話。出来事や情報の見せ方のスマートさに加え、嫌な話の感じの良い見せ方が見事。そして話のキーとなる“望むだけで何でも手に入れられる魔法”がどう物語に作用していくのかが尽く上手い!ソウル・インディ・アニフェストの大賞作品なのですが、それも納得の巧みさでした。
韓国短編プログラム②「喪失のかたち」
“失われたもの、また戻ってくるもの”に関する作品をまとめた6作品が上映。
テーマがテーマなだけに、オカルティックな作品も多い、“闇属性”寄りのプログラム。そういう作品が好きなので、今回の花コリでは一番のおすすめなのですが、一番のおすすめの『建築家A』は闇とは真逆の優しい作品でした。
角質(2022)/ ムン・スジン監督
皮を被って友達との交流に努める少女を描いた短編。
“皮”のゴム感といい、全体的に漂う湿っぽさといい、中身の妙にリアルなオフの顔といい、とても厭でとても良い。ベタでイメージしやすいネタながら、異様さの見せ方に惹かれます。
AMEN A MAN(2022)/ キム・ギョンベ監督
童話「幸福な王子」をなぞりつつ偽善をテーマに描いていくちょっとブラックな短編。そういうラストに持っていくのか!という面白さと闇に飲まれていく描写の不気味さと曲線の気持ちよさにシビれました。ツバメ少年がヒーローみたいでルックがカッコいいです。
呪う少年(2022)/ キム・ジンマン監督、チョン・ジヨン監督
可愛い人形による穏やかなアニメーションかと思いきや、タイトル通りマジで少年が呪いはじめちゃう黒魔術作品。ただし因果応報的で暗くなく、最後に少年に“返ってくる”もの含めて、優しく愛らしい作品でした。
建築家A(2022) / イ・ジョンフン
個人的に一番の掘り出し物。建築家をやめた男とその男に建築を依頼するおばあちゃんの話......なんだけど、建築素材に「思い出」を使う独特な世界観をスッと飲み込ませる“巧さ”と可愛く綺麗で洗練された“絵”が組み合わさって、たまらない心地よさの作品に仕上がってました。素敵な25分。
アジア短編プログラム「アジアのかたち」
こちらは日本やインド、中国やイスラエルなど韓国以外のアジア作品が揃ったプログラムです。
結構いろんな映画祭や企画などで上映機会のあった作品も多いので、そういったイベントに足を運ぶ人には既視感のあるプログラムかも。
マザー(2021)/ スバルナD監督
割礼の慣習をテーマにした短編。「この慣習どうなんだよ?」って思っている側なので、まじまじと見せられて辛くもあり、それをアニメーションにしたことの有意味さを感じております。
山火事(2021)/ 小川泉監督
アニメーションスープでも観てきた日本作品。
前回観たときは山火事の赤や黄が痛烈で印象的でしたが、顛末を知ってる今回は逆に青色の静けさに惹かれたり。
今回の花コリ大阪の部では小川監督がインタビュアーをされてたり、案内をしてくれてたり、何だかそれだけでもスペシャルでした。お疲れ様でした。
聖なるホロコースト(2021) / オシ・ワルド監督、ノア・バーマン=ハーズバーグ監督
こちらも以前別の映画祭で鑑賞済みだった作品。
ドイツ人のジェニファーとイスラエル人のノアが親密な関係になるのですが、ジェニファーの祖父が悪名高いナチスの黒人司令官の孫娘であったと知り、人生が激変する。本を出したり、一躍時の人となるのですが、その変化こそが不和を生み出していくという作品。
テーマやストーリーの面白さも見応えがあるのですが、ルックはもちろんのこと、演出や音楽に至るまで、実はすごいリッチに感じられる、とても完成度の高い作品です。
韓国長編プログラム「笑いのかたち」
そして今年は長編プログラムがある!
どちらもコメディ作品であり、長編と言っても60分ない作品なので中編ぐらいの気持ちで観れます。
私に近づくと(2022)/ チャン・ヒョンユン監督
快作。新たな会社に転職した女性となぜかベッドマットになってしまう上司のラブコメ。会場内に笑いが漏れるほどマット男の見た目や変身の間が良い。女性は何者なんだ、とか元カレどうなった、とか投げっぱでベタなラストに着地するのも笑えます。ルックで最初は不安に思いましたが、全然好きになれる作品でした。
ちなみに『魔王の娘、イリシャ』(↓)の監督ということで映画ポスターがカメオ出演してましたね。
秘密のパートナー、マイケル(2022)/イ・ヨンソク監督
冴えない友人三人組がハンバーガーショップを立ち上げたものの、そこから謎の白骨死体と3億ウォンを発見して……という“コミックスリラー”。お世辞にも見た目のチープさは拭い切れていない上に、その見た目で日本アニメみたいなギャグ演出を繰り出してくるので、戸惑いは強く感じたり。
一方で、観たことないタイプの作品だとは強く感じまして、本作が「ソウル・インディ・アニフェスト」の長編部門で観客賞を受賞しているというのも驚きでした。
というわけで、秀作・傑作揃いの素晴らしい回でした。ホントは交流会もあったのでそちらまで混ざりたかったのですが別件にて今回はここで離脱。次回こそはぜひ参加させてください......!
来年もまた大阪に来てくれることを期待してます。
そして、名古屋での開催がまだ残っています。
2023年5月20日(土)と21日(日)にシネマスコーレで開催されますので、東海圏の皆様はぜひ足を運んでみてくださいませ。
イベント自体がオススメです!
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