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少しづつ要求を拡大させる

Nibble(ニブル)交渉術は、交渉の終盤で小さな追加要求を少しずつ出して、交渉相手から追加の譲歩を引き出すテクニックです。「ニブル」という言葉は「少しずつかじる」という意味から来ています。
例えば、「We sat drinking wine and nibbling olives.」とか。

交渉におけるニブルとはどのようなものか、以下説明します。


Nibble交渉術の基本的な特徴

  1. 交渉の終盤に使用
    Nibbleは、主要な条件がほぼ合意に達し、交渉が終了に向かうタイミングで用います。この時点では、相手が「これで終わりにしたい」と考えていることを利用します。

  2. 小さな追加要求
    要求は比較的小さく、全体の合意内容に対してわずかな影響しかないものにします。たとえば:

    • 割引の追加

    • 配送コストの負担

    • 保証期間の延長

  3. 相手の負担を最小限に見せる
    相手が「大きな問題ではない」と感じるように配慮します。このため、追加要求が受け入れられる可能性が高まります。


具体的な例

ビジネス契約の詳細がほぼ固まったタイミングで、次のように要求します:

  • 「今回の契約に、サポートチームの追加トレーニングセッションを含めてもらえませんか?」


Nibbleの利点

  1. 大きな交渉の破綻を避ける
    要求が小さいため、相手が、大筋の合意を破棄しかねないリスクを冒してまで、追加要求を拒否する可能性は比較的低い。

  2. 付加価値の最大化
    小さな譲歩でも、それらを積み重ねることで、得られる価値を増やすことができる。

  3. 相手の心理を利用
    「この交渉を早く終わらせたい」という心理を利用することで、小さな要求であれば通りやすい。


Nibble交渉術を使う際の注意点

  1. 要求が過剰でないこと
    多すぎる追加要求は相手に不信感を抱かせ、交渉を壊す可能性があります。

  2. タイミングを見極める
    主要な条件が合意される前に小さな要求を出しすぎると、交渉全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

  3. 信頼を損なわない
    Nibbleを頻繁に使うと、「信頼できない」と思われる可能性があるため、慎重に使うべきです。


Nibbleを使いこなすためのヒント

  • 事前に計画する
    どのタイミングでどんな追加要求を出すかを事前に考えておきます。

  • 相手の感情を読む
    相手が合意に向けて前向きであるかどうかを確認します。

  • 小さなお願いとして伝える
    「少しだけお願いしたいのですが」というニュアンスで伝えると効果的です。


Nibble交渉術は、交渉の終盤で小さな利益を追加するためのテクニックです。上手に使えば、全体の交渉結果を改善できますが、過度に使うと信頼を損なう可能性もあるため、状況や相手を見極めて慎重に適用することが重要です。

具体的な事例で見てみましょう。

以下は、A社(顧客)とB社(サービス提供者)の間で行われるビジネス交渉の場面です。A社の担当者がNibble交渉術を使って、最後の譲歩を引き出そうとしています。


交渉の背景

  • A社はB社から物流サービスを購入しようとしている。

  • 基本的な条件(価格、納期など)はほぼ合意に達している。

  • A社の担当者(田中)は、最後にB社の担当者(山本)からさらなる譲歩を引き出したいと考えている。


会話シナリオ

交渉終盤の場面

山本(B社):
「田中さん、それでは、月額30万円で契約期間は1年間、納期はご希望どおりのスケジュールで合意ということでよろしいでしょうか?」

田中(A社):
「はい、その条件で進められるのは非常に助かります。」
「ただ、最後にもう一つだけ、ちょっとしたお願いがありまして……」

山本:
「何でしょうか?」

田中:
「今回の契約に、データレポートの作成を月次で無料提供いただけると大変ありがたいのですが、いかがでしょうか? 物流の効率化に役立つと思いますので。」

山本:
「データレポートですか。通常、追加オプションとして別途料金がかかりますが……」

田中:
「理解しています。ただ、これからの長期的なパートナーシップを考えると、付加価値としてご提供いただけると、さらに良い関係が築けると思いまして。 今回の契約も決して小さくありませんし。」

山本:
「……少々お待ちください。確認させていただきます。」

(上司だろうか?確認の電話の後:)

山本
「わかりました。今回は特別に、月次データレポートを無料でご提供する形で進めさせていただきます。」

田中:
「ありがとうございます。これで非常に満足のいく契約内容になりました。引き続きよろしくお願いします。」

山本:
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」


ポイント

  1. タイミング:
    合意寸前の段階で追加要求を出すことで、相手が「これで終わらせたい」と感じる心理を活用しています。

  2. 要求の規模:
    要求は「小さな追加価値」としてアプローチしています。「大そうなことではない」と共通認識に持っていけるレベルです。

  3. 未来を強調:
    長期的な関係を持ち出すことで、譲歩に価値があると感じさせています。

  4. ポジティブな締めくくり:
    要求が通った後は、感謝の言葉で交渉を締めくくり、この契約と譲歩がポジティブに捉えられるよう促しています。


このような形で、Nibbleは交渉の終盤で効果を発揮するテクニックとして活用できます。

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