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誰でも使える交渉術! 『交渉相手の背後を探る』

交渉の本質は「交渉相手の背後」にある状況、関係性、目的、制約などを理解することにあります。相手の背後を理解し、相手の真のニーズや意図を引き出さない限り、表面的な取引に終始してしまい、本当の意味での合意には至らないことが多いです。では、具体的に相手の背後を意識し、知るためにはどうすべきか、考えてみましょう。

1. 事前リサーチを徹底する

  • 相手の会社や組織、業界の動向について詳しく調べる。

  • 相手の立場にいる人が、どのような課題やプレッシャーを抱えているかを予想する。

  • 相手の会社の最新ニュース、プレスリリース、製品発表なども有効な情報源です。

2. オープンエンドの質問を活用する

  • 「なぜ」や「どのように」が始まる質問を多く使い、相手の本当の動機や懸念を探る。

  • 「何が重要か?」「どのような状況が理想か?」など、直接的な質問よりも広い範囲で意図を探るようにする。

例: 「このプロジェクトで最も重視しているのは何ですか?」と質問することで、相手の隠れた意図や真の関心事項が見えてきます。

3. 相手の非言語的サインに注目する

  • 相手の表情、声のトーン、ジェスチャー、間の取り方などに注意を払う。

  • 特に、話題が変わるときの反応や、ある話題に触れたときの微妙な変化を見ることで、相手の関心や懸念が推測できることがあります。

4. 仮説を立て、試しに投げかける

  • 相手の背景について、仮説を立て、その仮説が正しいかどうか試す質問や提案をしてみる。

  • 「もしかして、〇〇が懸念されているのではないでしょうか?」といった形で仮説を投げかけると、相手の反応から真実に近づけることがあります。

例: 「このプロジェクトの開発が厳しいと感じていらっしゃるのでは?」と投げかけ、相手が合意または否定に言及するかどうかを見る。

5. 関係者マッピングを行う

  • 相手組織の内部で誰が意思決定者か、誰がインフルエンサーか、誰がサポーターかを理解する。

  • 複数の関係者が関わっている場合、それぞれの立場や関心事も考慮に入れる必要があります。

例: 交渉相手が「プロジェクトマネージャーと確認します」と言う場合、その人が実際の意思決定者です。または、実質的には他部門かもしれません。交渉相手の組織を理解することと、その辺りに探りを入れることも必要です。

6. 相手の視点でシナリオを描く

  • 自分の立場を一度離れ、相手の視点で交渉全体を俯瞰してみる。

  • 相手が何を手に入れたいのか、何を避けたいのか、彼らにとっての「成功」とは何かを考える。

例: もしあなたが大手メーカーと交渉する場合、そのメーカーが国際的なブランド価値を重視しているなら、コスト削減よりも品質や信頼性が重要視されるでしょう。

7. 関係構築を優先する

  • 初対面の交渉では、まず信頼関係を築くことにフォーカスする。関係性が深まるほど、相手はより多くの情報を開示してくれる可能性が高まります。

  • 直接交渉する場以外での会話やコミュニケーションも大切です。

例: 雑談を通じて、相手の会社の内部事情や最近の困りごとについて自然に情報を引き出すことができる場合があります。


交渉相手の背後にあるものを意識し、それを引き出すためには、リサーチ力、質問力、観察力、関係構築力が求められます。ただ単に表面的な要求に対応するだけでなく、その裏にある動機や背景を深く理解することで、相手にとっても価値のある提案を行い、より強固な合意を形成することができます。


例えば次の会話を見てみましょう。

これは取引先 A社 背山さんと B社 営業 深森さんの交渉シーンです。

  • 背山さん:A社の購買担当。厳しいコスト管理を求める。

  • 深森さん:B社の営業担当。


シーン:A社の会議室にて

深森さん:「背山さん、先日の見積もりについてお返事いただけるとのことですが、いかがでしょうか?」

背山さん:「ええ、確認しました。ただ、率直に申し上げると、少し高すぎますね。もっとコストを削減できませんか?」

深森さん:「なるほど、そうおっしゃるのは理解できます。ただ、今回の見積もりは品質と納期を重視して設定しておりまして、品質を維持したままでの値下げは難しいかもしれません。」

背山さん:「とはいえ、今の価格では私どもとしては承諾できません。もう少し検討いただけませんか?」

深森さんは困惑する。背山さんがここまで強く価格にこだわるのは珍しい。なぜここまでコスト削減を求めているのか、その背景が見えてこない。)


1. 質問で相手の背景を探る

深森さん:「背山さん、今期は特にコスト管理が厳しいのでしょうか?私たちとしても、可能な限りお手伝いしたいのですが、背景を理解できればもう少し柔軟な対応ができるかと思いまして。」

背山さん:「ええ、今期は特にコストが重要視されています。ですが、他にも事情があるんです。」


2. 仮説を立て、試しに投げかける

深森さん:「もしかして、新製品の開発が関連しているのではないでしょうか?市場投入のタイミングが厳しいので、予算調整が必要になっているのでは?」

背山さん:「...実はその通りです。新製品のプロジェクトで、私たちは予算を抑えつつ、品質も妥協したくないんです。」


3. 相手の視点でシナリオを描く

深森さん:「なるほど、それであれば納得できます。新製品の成功が優先事項なんですね。でしたら、私たちも協力の余地があります。たとえば、品質を落とさずに、納期や納入ロットに調整を加えることで、コストを最適化する方法をご提案できるかもしれません。」

背山さん:「どういう提案ですか?」

深森さん:「通常、私たちは月ごとに納品していますが、もしまとめてのロット納品が可能であれば、コストを抑えることができます。また、納期を少しだけ延ばしていただければ、費用面で検討します。」


4. 関係者マッピングの活用

背山さん:「確かに、そのような調整ができれば助かります。ただ、私一人では決められませんので、プロジェクトリーダーとも相談が必要です。」

深森さん:「プロジェクトリーダーの方ともお話できる機会をいただけますか?直接お話しすることで、より具体的な提案ができると思います。」

背山さん:「そうですね、わかりました。次の会議に同席していただけるよう調整します。」


5. 雑談から追加の情報を引き出す

(会話が一段落した後、少しリラックスした雰囲気になる)

深森さん:「そういえば、御社の新製品、最近業界で話題になっていましたね。高性能な仕様だと聞いていますが、開発は順調ですか?」

背山さん:「ありがとうございます。ですが、開発スケジュールがかなりタイトで、予算もギリギリです。」

深森さん:「それは大変ですね。わかりました。それであれば、こちらも最大限、協力させてください。品質を維持したままで、スケジュールとコストをどこまで最適化できるか、検討します。」


結果

背山さんの要求の背後には、新製品プロジェクトの厳しいスケジュールと限られた予算があったことが明らかになった。深森さんは、質問と仮説を使い、背山さんの真の意図を引き出すことに成功。これにより、建設的な提案を行い、双方が満足する形で交渉が進展した。


  • オープンエンドの質問:背景を探るために質問を活用。

  • 仮説を立てて試す:相手の意図を推測し、確認する質問を行う。

  • 関係者マッピング:交渉相手以外の関係者を把握し、交渉を進める。

  • 雑談を活用:リラックスした場面での雑談から、追加の情報を引き出す。

このようなアプローチで、深森さんは背山さんの背景を理解し、建設的な解決策を提案することができました。

普段の交渉でも、これら四項目(またはそれ以外でも)、少しノートに書き留めて会議の前に見返すだけでも、交渉時の気づきが違ってくるでしょう。

建設的な結論に結び付けれられれば、何よりです!




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