デッドラインの決め方 ビジネスの交渉力
交渉には必ずデッドラインがあります。
その決め方はどうすべきでしょうか、どのように交渉の場に持ち込むのが良いでしょうか?
まずは、自社・自己の利益を最優先する方法ですが、相手があることですので、戦略が必要です。
また、「交渉」とは、相手を打ち負かすのではなく、結果としてお互いの利益を最大化することが基本理念です。 ”理想的”ではありますが、その理想を追求する中で、落とし込んでいくことが現実的です。
自己の利益を優先させつつも、相手にも不快な思いをさせないために、デッドラインを切り出すことが重要です。
まずは、”デッドラインそのもの”について少し理解を深めましょう。
デッドラインの良い面と悪い面について、少し詳しく述べます。
『デッドラインの良い影響』
意思決定の促進
デッドラインがあることで、交渉の長期化を防ぎ、関係者がより集中して迅速に意思決定を行うようになります。
特に、交渉が膠着状態に陥っている場合、締切が交渉を動かすきっかけとなることがあります。
優先順位の明確化
デッドラインがあることで、各交渉当事者は自分たちの優先事項や妥協できるポイントを明確にする必要に迫られます。これにより、効率的な交渉が進みやすくなります。
交渉力の強化
デッドラインを利用して相手にプレッシャーをかけることで、有利な条件を引き出すことができる場合があります。特に、自分側がデッドラインに対して余裕を持っている場合、交渉力が増します。
『デッドラインの悪い影響』
品質や条件の妥協
時間的な制約により、慎重な検討や交渉が行えず、不十分な条件で合意してしまう可能性があります。
短期的な締切に焦点が当たりすぎて、長期的な影響が見過ごされる場合もあります。
プレッシャーによるストレス
デッドラインが厳しい場合、交渉当事者に過剰なストレスを与え、生産性や交渉の質が低下するリスクがあります。
不信感の増大
デッドラインを無理に押し付けることで、相手方が「時間に追い詰められている」と感じ、不公平感や不信感を抱くことがあります。これにより、交渉後の関係に悪影響を及ぼすこともあります。
高度な戦略的行動の抑制
時間制約により、創造的な解決策や双方にとって最良の合意を模索する余裕が失われる可能性があります。
この”デッドラインの特徴”を知った上で、効果的に活用する方法について述べて行きます。
<効果的なデッドラインの活用>
柔軟性を持たせる:
交渉相手にデッドラインを知らせる際には、ある程度の余裕や「延長の可能性」を示すことでプレッシャーを和らげ、信頼関係を保つことが重要です。事前準備:
デッドラインまでに必要な情報や提案は何か、準備しておくことです。コミュニケーションの強化:
デッドラインが近づくにつれて、進捗状況を確認し合い、透明性のある対話を心掛ける必要があります。
基本的な活用を知った上で、いよいよデッドラインを設定していきましょう!
デッドラインの設定には、主に2つのやり方があります。
相手との信頼関係を築きながら双方にとってメリットのある合意に至るための重要なステップとして、相手とWin-Winの関係でデッドラインを決めるプロセスを、また、交渉を有利に進めるために、自分が有利になるためのデッドラインの決め方を、それぞれ解説します。
まずは、
『相手とWin-Winの関係でデッドラインを決めるプロセス』
目的の共有
デッドライン設定の前に、交渉のゴールや双方が解決したい課題を明確にし、共有することが重要です。
「この問題を迅速に解決することで、両者にどのような利益があるか」を話し合うことで、デッドラインの必要性を相手に納得してもらいやすくなります。
相手の事情を理解する
相手側のスケジュールや制約(内部承認プロセス、リソースの確保など)を聞き出し、それを考慮したデッドライン設定を提案します。
例: 「〇月〇日までに進展があれば、次のフェーズにスムーズに進めますよね?」
現実的で柔軟なデッドラインを設定する
両者の合意が得られるデッドラインを設定するため、余裕を持たせた「柔軟な締切」を提案するのが効果的です。
例: 「もし〇日までに決められなければ、次の対応が遅れる可能性があるので、この範囲で一緒に決めましょう。」
定期的な進捗確認を設定する
デッドラインまでの進捗を定期的に確認し合う仕組みを作ることで、相手も安心して交渉に臨むことができます。
相手の利益を強調する
デッドラインを守ることで相手にどのような利益があるかを強調します。
例: 「この日程で進めると、あなたのチームにも負担が少なくなると思います。」
次に、
『自分が有利になるためのデッドラインの決め方』
準備段階での徹底した情報収集
相手のタイムプレッシャー(内部承認の締切や市場のタイミングなど)を調査し、それを基に自分に有利なデッドラインを提案します。
例: 相手の年度末や納期スケジュールを把握し、その直前をデッドラインに設定する。
デッドラインの設定理由を戦略的に提示する
自分が有利なデッドラインを提示する際、納得感のある理由を示すことで相手に受け入れやすくします。
例: 「この日程で決めると、お互いのプロジェクトがスムーズに進むと考えています。」
バッファ(余裕時間)を確保する
実際に必要な期限より早めのデッドラインを設定することで、交渉が難航してもリカバリーできるようにします。
フェイクデッドラインを活用する
実際の最終期限よりも早い締切を提示して相手を動かす手法です。ただし、これを使いすぎると相手の不信感を招くため慎重に行います。
交渉力を高める交渉技術を使う
自分がタイムプレッシャーを感じていないように見せ、相手に「早く決めないと不利益を被る」という印象を与えることで交渉を有利に進めます。
例: 「他のプロジェクトも控えているため、〇日までに合意できない場合、スケジュールを見直す必要があります。」
条件と交換する
デッドラインを譲歩する代わりに、他の条件で自分に有利な取引を引き出す。
例: 「もしデッドラインを少し延長するなら、価格の条件を再考してもらえますか?」
Win-Winの関係を目指す場合は、相手の事情や利益を尊重しながら現実的なデッドラインを共同で設定することが鍵です。
自分が有利になる場合は、情報収集や戦略的なデッドライン提示で相手にプレッシャーを与えつつ、リスク管理を怠らないことが重要です。
どちらの場合でも、相手との信頼関係を損なわないよう、誠実かつ透明性のある態度で交渉を進めることが成功のポイントです。
このようにデッドラインを決め、活用していくことができます。
正しく活用するれば、より建設的な交渉結果を得られるでしょう。
ただし、これはあなたが「知識」に基づいた、真っ当な交渉を進めようとした場合です。必ずしも交渉相手が「知識」や「理念」を持っているとは限りません。「交渉」を勝ち負けだけだと思っている非知識人もいます。
そのような相手と対峙した時、降りかかる火の粉は払わなければなりません。
高圧的な相手への対処
交渉相手が高圧的に、自分に有利なデッドラインを設定しようとする場合もあるでしょう。残念ながら、自分だけが有利になるテクニックだけを身につけた相手は存在します。
このような場合は、冷静に対応することが大切です。むしろ、その状況をコントロールし、交渉の主導権を取り戻すための具体的な対処方法を以下に示します。』
1. 感情的な反応を避け、冷静に対応する
高圧的な態度に対して感情的に反応すると、相手のペースに巻き込まれてしまいます。冷静に話を聞き、「相手の要求の背景」を探る姿勢を示しましょう。
例: 「その締切を設定する理由をもう少し詳しく教えていただけますか?」
2. 相手の要求を再確認し、曖昧さを排除する
相手が高圧的に要求してきたデッドラインの具体的な理由や根拠を尋ねます。この過程で相手の要求が妥当かどうかを客観的に評価する材料を集めます。
例: 「その日程が必要不可欠な理由を具体的にお聞きしたいのですが、それが可能であれば他の選択肢も検討できます。」
3. 自分の事情や制約をしっかり伝える
相手のデッドラインが受け入れられない場合、その理由を具体的に説明し、自分側の制約を明確にします。相手に妥協点を探る余地を与えましょう。
例: 「弊社としてはこの日程での対応は難しい理由があります。そのため、別の案をご提案させていただきます。」
4. BATNAを用意しておく
相手の高圧的なデッドラインが受け入れ難い場合に備えて、最善代替案(BATNA)を準備しておきましょう。BATNAがあれば交渉のプレッシャーを軽減し、対抗策を提案できます。
例: 「〇日が難しい場合は、弊社での代替案として〇〇のスケジュールを検討することが可能です。」
5. 時間を稼ぎ、緊張を和らげる
すぐに相手の要求に応じる必要はありません。一度冷静に持ち帰り、内部で検討することで、相手の高圧的な態度を和らげる効果があります。
例: 「重要な決定になりますので、社内で確認の時間をいただけますか?そのうえで、より良い形でご提案いたします。」
6. デッドライン以外の条件を交渉する
デッドラインを譲歩する代わりに、他の条件で自分に有利な状況を作り出すことも一つの戦略です。
例: 「この締切に対応するためには、リソースの調整が必要になります。そのため、コスト面でご配慮いただけると助かります。」
7. 客観的な基準を持ち出す
公平性を示すために、業界標準や他のプロジェクトの事例など、客観的な基準を提示して交渉を再調整します。
例: 「通常、この種の案件では〇〇週間のスケジュールが一般的かと思いますが、その範囲で調整する余地はありますでしょうか?」
8. 高圧的な態度への対抗策を考える
相手の態度が協調性を欠いている場合、その行動に注意を促しつつ、関係を壊さない方法で対抗します。
例: 「私たちはお互いにとってベストな解決策を見つけたいと考えています。そのためには、双方にとって実現可能なスケジュールを協力して作ることが重要だと思います。」
9. 最後の手段として交渉をリフレーミングする
相手が一切譲歩しない場合、交渉の進め方自体を見直す提案を行います。
例: 「このままではお互いにとってメリットのある結果にたどり着けないかもしれません。一度、アプローチを変えて話し合いを進める方法を検討しませんか?」
冷静さと客観性を保ちながら、相手の高圧的な態度に対応します。
自分の事情や代替案をしっかり主張することで、相手のペースに巻き込まれないようにします。
必要に応じて時間を稼ぎ、交渉の余地を作ることで、最終的にはWin-Winの結果に近づけることが可能です。
高圧的な相手は、交渉を全く理解していない人たちです。
学んでいるあなたは、それを生かし、相手をこちらの手のひらで泳がせるつもりで、冷静かつ戦略的に対応しましょう。最終的には主導権を握ることができるでしょう。
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