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相手の譲歩を引き出す

交渉戦略を用い、相手の譲歩を引き出す方法

譲歩を引き出す、というのは、駆け引きの経験値が必要な、熟練したテクニックであるように思います。確かのその面はあります。
しかし、いくつかの基本条件を満たせば、ある程度の譲歩を引き出すことは可能です。交渉においては、「譲歩を引き出すこと」は重要なスキルです。
戦略的にアプローチすることで、『相手の納得感を高めながら』有利な条件を引き出すことが可能になりますので、ひとつひとつ、見ていきましょう。



1. 交換型譲歩(Give & Take)

まずは、基本中の基本。

概要

  • こちらから先に小さな譲歩を提示し、相手にも譲歩を求める。

  • 「もし◯◯を譲歩してくれるなら、こちらも△△を譲歩できます」という交換条件を示す。

具体例

  • 価格交渉で「支払いを前倒しにするなら、単価を少し下げることができます」と提案する。

ポイント

  • 先に譲歩しすぎると交渉力を失うため、小さな譲歩から始める。

  • 相手の譲歩が得られるまで、自分の譲歩を確約しない。


2. ドア・イン・ザ・フェイス(譲歩誘発戦術)

ここからは、少し、交渉のTIPSっぽくなっていきます。

概要

  • 最初に大きな要求を提示し、それを断られた後に本命の要求を提示する。

  • 相手は「最初の要求よりもマシだ」と感じ、受け入れやすくなる。

具体例

  • 「この機能を追加していただけますか?」(高すぎる要求)

  • 「では、少なくともこの点だけ修正していただけますか?」(本命の要求)

ポイント

  • 最初の要求は現実的である必要がある(極端すぎると逆効果)。

  • 相手が「譲歩した」と感じることが重要。


3. サイレント戦術(沈黙の力)

概要

  • 交渉の場で意図的に沈黙を作り、相手にプレッシャーを与える。

  • 相手が沈黙に耐えられず、自ら譲歩する可能性がある。

具体例

  • 「この条件では難しいですね…(沈黙)」と伝え、相手が次の言葉を発するまで待つ。

ポイント

  • 沈黙は相手に心理的なプレッシャーを与えるが、不自然にならないよう注意。

  • 相手が焦って譲歩を出すタイミングを見極める。


4. ゆっくりとした意思決定(遅延戦術)

概要

  • すぐに決断せず、検討時間を長く取ることで相手の焦りを引き出す。

  • 相手が時間を意識し、より有利な条件を提示してくることがある。

具体例

  • 「社内で確認が必要なので、少し時間をください」と言い、相手の反応を見る。

ポイント

  • 緊急性を演出しすぎると逆効果になるため、適度なバランスが重要。

  • 相手が時間制約を感じている場合に特に有効。


5. 比較対象の提示(アンカリング効果)

概要

  • 交渉の前に基準となる数字や条件を示すことで、相手の認識を誘導する。

  • これにより、相手が「妥当な範囲」と思うラインを自分に有利な方向に設定できる。

具体例

  • 「通常は100万円ですが、今回特別に90万円でご提案します」と言い、相手の基準を操作する。

ポイント

  • 先に相場や基準を示すことで、相手がそれを基準に判断しやすくなる。

  • 過度に高い基準を設定すると不信感を持たれるため、適切なバランスが必要。


6. 権限の限定(権限不足戦術)

概要

  • 自分の決定権が限られていることを示し、「これ以上は難しい」と交渉の限界を演出する。

  • 相手が「これ以上交渉しても変わらない」と感じ、譲歩を受け入れやすくなる。

具体例

  • 「私の決裁権ではこの価格が限界ですが、これでどうでしょうか?」と伝える。

ポイント

  • 過度に使うと「本当に決裁権がないのか?」と疑われるため注意。

  • 交渉の終盤で使うと効果的。


7. ウィンウィンを強調(フレーミング戦術)

概要

  • 相手が自分の提案を受け入れることで得られるメリットを強調する。

  • 相手が譲歩しても損をしないと感じるように誘導する。

具体例

  • 「この条件ならお互いにメリットがあると思います」と伝え、相手の納得感を高める。

ポイント

  • 相手のニーズや関心事を理解し、それに合わせた提案をする。

  • 「利益を共有する」イメージを持たせることで、譲歩を引き出しやすくなる。


8. 「最後のひと押し」戦術

概要

  • 交渉がまとまりかけた段階で、追加の小さな譲歩を求める。

  • 相手は「もう合意したい」という心理状態になっているため、応じやすくなる。

具体例

  • 「では、この条件で決定しましょう。ただ、最後にこの点だけ調整できませんか?」と提案する。

ポイント

  • 大きな譲歩を求めるのではなく、小さな調整をお願いする。

  • 相手が「合意を壊したくない」と思う心理を利用する。


9. 「一貫性の原理」を利用する

概要

  • 相手が過去に言ったことや約束を再確認し、それを守るよう促す。

  • 人は自分の言ったことと行動を一致させたいという心理を持っている。

具体例

  • 「以前、◯◯の重要性についてお話しされていましたよね? それなら、この提案は理にかなうと思います」と説得する。

ポイント

  • 相手が自ら言ったことを証拠として使うことで、反論しにくくなる。

  • 相手の発言をよく聞き、適切なタイミングで使う。


まとめ

譲歩を引き出す交渉術には、さまざまな心理的・戦略的テクニックが存在します。重要なのは、単に強引に譲歩を求めるのではなく、相手の心理や状況を理解し、納得感を持たせることです。

効果的な交渉の流れ

  1. 最初に基準を設定(アンカリング)

  2. 交渉を進める中で適度な譲歩を提示(Give & Take)

  3. 相手が譲歩しやすい心理状況を作る(沈黙・遅延戦術)

  4. 最終的に「最後のひと押し」でさらなる譲歩を引き出す

これらを組み合わせることで、相手の納得感を維持しながら、より有利な交渉を進めることができます。




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