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翻訳

数年前、翻訳家の方ととても間接的だけれどお仕事する時期があった。
ジャンルも本ではないけれど。
送られてくる翻訳料の請求書、
実際にお会いしたこともないのに、小さな手紙を添えてくださる方、
半分ちぎれたようなもの、

添えられた季節の言葉に胸を熱くしたり、
数字すら読めるかギリギリの文字に
ああこの人この事務仕事面倒なんだろうなとクスリとしたり、

孤独な職場だったので、その人の断片を見るようでどんなものもとても嬉しく楽しかった。

わたしが、翻訳の素晴らしさを知ったのは映画から。
感情が乗る翻訳をされた字幕は映画の世界をぐっと広げてくれる。

そもそも翻訳されなければ、海外の映画は日本語ネイティブのわたしには観ることもできない。
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昨年のインスタグラムライブでもお話ししたのだけれど、
ハン・ガンさんのノーベル文学賞の功績はとても大きいと思う。
82年生まれ、キム・ジヨン
アーモンド
このあたりから韓国文学がはっきりと日本でも売れるようになったように感じる。


20年以上前から、
韓国は国が映像作品にかける金額は日本の比ではなかった。
映像部門でもパラサイト「半地下の家族」の受賞は大きかったけれど、
それまでも脈々と質の高い映像作品が生まれいた。

その頃学生は、16mmフィルム
韓国は、35mmで映画を撮り
カンヌ国際映画祭の学生部門に出品していたのだから、、(フィルム自体のトータルコストは倍以上)
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それでも、韓国文学、女性、53歳の作家が受賞したことはあらゆる意味において重要だと思う。

キャッチーな観光スポットくらいしか
近くても「知らない、知ろうとしない国」がアジアの中にもたくさんあると思う。

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人間は言語は違えど通じるための言葉を習得して、成長する。
野生動物だって共通言語を持っているのかもしれない。

でも日本語同士でさえ解釈の違いで人は揉めたり、気に病んだり。

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わたしには翻訳は魔法のように思える。
もちろん日本文学からもらう作品に沢山の楽しみをもらえるのは素晴らしい。
思考の中に直接訴えかけてきたり、余白を残したり。

それと同じように
知らない国の人の紡ぐ物語を読むことができることは幸せだなと。

それは顔も知らない人から送られてくる請求書と同じように
温かな気持ちになるものだったりするのかもしれない。

書影:ムラブリ 文字も暦も持たない 狩猟採集民から言語学者が教わったこと
著:伊藤雄馬
集英社インターナショナル
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