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戦争の犬たち

The Dogs of War (1980)

 英国TV出身のジョン・アーヴィンによる初監督作。歴史が古い割に知られておらず、それゆえ実態が明らかでなかった傭兵の活躍を主軸に据えた映画は、もしかすると本作が初ではないかと。

【2021.8.29追記】
先に1978年の「ワイルド・ギース」があるので、これは勘違いでした。

主演は「ディア・ハンター」でアカデミー助演男優賞を受賞したクリストファー・ウォーケン。本作と同じくユナイテッド・アーティスツ(UA)が制作し、同年公開された「天国の門」にも出演していました。「天国の門」の凄絶な大コケによって、UAの息の根が止まったのはご存じの通り。

 原作は「ジャッカルの日」のフレデリック・フォーサイスによる小説ですが、スケールは大きいが地味で渋い原作に対し、映画は戦争アクションの性格が強いです。西アフリカの独裁国家ザンガロに眠るプラチナ鉱山の採掘権を独占しようとする企業が傭兵シャノン(ウォーケン)を雇い、偵察に向かわせます。鳥類学者を装ったシャノンは軍に捕まり拷問されますが、外交的圧力により国外追放に。雇い主の企業は、取引に有利となる新大統領を擁立するため、傭兵部隊を組織して独裁政権を倒すよう改めて依頼。一度は断ったシャノンですが、なんだかんだで承諾し、独裁者を倒すが……というストーリー。原題はシェイクスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」のアントニウスの台詞「Cry 'Havoc!', and let slip the dogs of war.」に由来し、映画のタイトルバックにも示されています。

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 同年、土方鉄人監督の同名の日本映画がありました。佐藤慶の「人は自分の意見を通そうとする。だから闘争をする」というしょっぱい台詞だけが印象に残ってます。

 さて本作、改めて見るとまんまマカロニウエスタンに転用できそうなプロットですよね。凄腕の流れ者、利権を得たい金持ち、町を牛耳る残虐なボスとその情婦、身バレからのリンチ、別れた女房……。シャノンが企業からの独裁政権打倒の依頼を一度は断るも結局引き受けたのは、傭兵稼業から足を洗って別れた女房とやり直したいと願ったのに、それが叶わなかったからで、要は自分を酷い目に合わせた独裁国家への復讐心(アンド寄りを戻せなかったことの八つ当たり)です。ご存じの通り、復讐はマカロニウエスタンの主要なテーマですから。

 大量の武器弾薬をヨーロッパで秘密裏に買い付け、海路ザンガロへ向けて運ぶくだりは、小説だとすごく面白く、クライマックスと言ってもいいくらいなんですが、映画ではスリルに欠け、少々退屈な感じがします。ここに緊張感があると、クライマックスの戦闘シーンのカタルシスがより増すのですが。あと、シャノンが元女房とよりを戻そうとするエピソードは、もうちょっと何とかならなかったかなあと思いますね。上にも書きましたけど、ほんと八つ当たりにしか見えない(笑)。

 とまあ、ダルい部分もありますが、80年代戦争アクションとしては結構見応えはあると思います。特に冒頭の中央アメリカでの脱出シーンはめっちゃカッコいいです。ラストにジープで去るシーンと繋がっているんですね。シャノンをゴリゴリマッチョではないウォーケンが神経質に演じているのも面白いです。

 のちに「プラトーン」で名声を得るトム・ベレンジャーが傭兵部隊のメンバーとして出演していますが、イマイチ影が薄いですね。企業が擁立しようとする欲の塊のような新大統領を演じたのは、グレナダ出身のジョージ・ハリス。「ハリー・ポッター」シリーズのキングズリー・シャックルボルトを演じた俳優です。

 上述の中央アメリカでの脱出シーンで傭兵達が持っているアサルトライフルは、AR15かM16のハンドガードとフラッシュハイダーを換装してXM177E1に似せたモックアップ。ザンガロ兵の銃はFALかと思いましたが、オーストラリア製のL1A1みたいです。
 クライマックス付近では大量のUZIサブマシンガンが登場しますが、よく見るとイングラムMAC10のフロント部分にUZIの部品を付けた通称ウジグラムが結構混ざっています。1950年代から製造され、現在も運用されているUZI、突撃スタイルに合いますねえ。エアガンとしては、東京マルイから20数年前に電動ガンが発売されましたが現在では生産終了、その後どのメーカーもまともな製品を出していません。ひと目でUZIだとわかるあのスタイル、ハイサイクルとかで出せば絶対売れると思うんですけどねえ。
 XM18E1Rの名で登場するリボルバー式のランチャーは、マンビル25mmプロジェクタイル・ランチャーを元にしたステージガンです。
 ザンガロ人女性がドリュー(ベレンジャー)を撃ったピストルは、ひと目でわかるワルサーP38。シャノンが冷蔵庫に入れていたベレッタM1934は、MGC製のモデルガンという説が。

 ウォーケンに学ぶ無敵中年講座。


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