床に落ちたりんごと愛しい背中
「いやだぁ〜〜、食べたかったーーー‼︎」
ぼろぼろ流れる涙を小さな手でぬぐいながら、泣きじゃくる息子。
朝ごはんのりんごを大人のマネをして爪楊枝で食べていたのだけど、かじったところでりんごが割れて床に落ちてしまい、楽しみにしていたりんごの半分はパパに回収されてしまった。
「落っこちちゃったのは食べられないから、バイバイしようね。こっちのりんご、食べる?」
そんな声がけもむなしく、どうしても床に落ちたりんごが食べたかったと泣いている。
しばらく泣いた後、落ち着いたかなと思うと、再びりんごに挑戦していた。
爪楊枝にささったりんごを、そーっとお皿の上でかじっている。
かじっていたりんごが落ちそうになると、お皿の上に身をかがめて、ゆっくり慎重に“がじっ”。
泣きじゃくりながらも、私が言った「床に落ちると食べられなくなっちゃうから、お皿の上で“がじっ”ってしようね。」の言葉をちゃんと聞いていたのだ。
その素直さと小さな体の背中が丸くなっている姿がたまらなく愛しい。
息子は毎日、本当にスポンジのようにあらゆることを素直に吸収していく。
あの素直さはどこから湧いてくるのだろう。
あんなにも純粋で美しいものには、おそらく子供が生まれるまで出会ったことがない気がする。
お皿にりんごがぽろっと落ちたあと
「ママ、できたよ!」
と、報告してくれる息子を見て
「本当だ。できたね!」
と、私も純粋なよろこびで胸がいっぱいになった。