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生物多様性を学ぶワークショップ「The Biodiversity Collage」参加レポート

こんにちは、国際社会経済研究所(IISE)の篠崎裕介です。ネイチャーポジティブとデジタルの可能性について情報発信をしています。

この記事では、2023年11月30日に参加した生物多様性を学ぶワークショップ「The Biodiversity Collage」からの気づきをレポートします。

今回のワークショップは、持続可能な社会の実現を目指す企業等が、住民・行政・大学等と連携して、サーキュラーエコノミーの推進に取り組む新事業共創パートナーシップである「ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(略称:J-CEP)」の分科会である「ネイチャーポジティブ研究会」の活動として開催されました。


The Biodiversity Collageとは


生物多様性を学ぶワークショップ「The Biodiversity Collage」は、IPBESの報告書の情報に基づいた39枚のカードを使い生物多様性崩壊の因果関係と基礎科学について学び、後半は、アクションについてディスカッションする構成になっています。同ワークショップの日本語ローカライズパートナーのCodo Advisory社のファシリテーションのもと開催されました。

The Biodiversity Collageで使用するカード

生物多様性と自然の恵みは世界中で劣化が加速している

*IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)は気候変動におけるIPCCに相当するもので、2020年3月に発行された「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書 」は、約150名の専門家による1.5万以上の科学論文などを分析した結果を取りまとめています。その結果を簡単にまとめると以下のようになります。

生物多様性と生態系サービスに関する評価結果

・生物の多様性と生態系が人類にもたらす機能やサービスは世界中で劣化
その劣化の進行は加速し続けている
・このままでは私たちの暮らしは持続し得ない

レポートのメッセージ
経済、社会、技術といったすべての分野に渡るトランスフォーマティブ・チェンジ(社会変革)を緊急に、そして協調して起こすことができるならば、持続可能な社会を形成することができる

科学的、視覚的、参画型、そして楽しい!

The Biodiversity Collage」のワークショップは、科学的、視覚的、参画型で楽しい、と宣伝文句にありますが、最初の「科学的」とは、このIPBESの報告書にもとづいて、「生物多様性、生態系サービス」と「経済・社会活動」の依存・影響関係を学べることにあります。

視覚的」とは、それらの要素が書かれた39枚のカードを用いること、そして、「参画型」とは、グループワークのメンバーが、カードの内容をシェアし、並び替えたりしながら、お互いの理解を深め、カード同士の関係性から生物多様性崩壊のメカニズムを学べるところにあります。

そして実際に参加してみて、何セットかに分けて、少しずつカードが渡され、メンバーと議論をしながらメカニズムを探求するタスクは、ミステリーの謎解きのようでもあり、そのプロセス自体が面白いものでした。

以下の写真が、私たちのグループの「Biodivesity Collage」です。ワークショップに参加する機会があれば、このCollageはあまりじっくり見ないで、グループワークを楽しんでいただくのがよいと思います。

アクションを考える


ワークショップの最後は、グループワークを通して「個人」「会社」「会社を超えて」できるアクションを考えました。私の考えたアクションの一部を共有します。

  • 個人

  • 会社

    • ワークショップの学びをIISEのnoteで発信する

  • 会社を超えて

    • J-CEPなど異業種連携の場を活かす

Editor’s Opinion


グループワークで話をしていて、季節の移ろい、その時々の自然の景観、そこからの恵み、そういった瞬間、瞬間を楽しむことが生物多様性の崩壊の危機から脱する上で、重要なのだろうと思います。

危機感を醸成することはもちろん重要です。一方で、ネイチャーポジティブという言葉は、経済・社会の流れを自然にマイナスの方向から、プラスの方向にもっていく、という側面だけでなく、それによって、生活が豊かになる、充実したものになる、明日に向けてポジティブな気持ちになる、という意味合いも併せ持っています。

自然関連の情報・データは不足

一方で、感情論だけでは、社会が動かないことも事実です。また、自然環境に良いつもりで行っていたことが、実際はその逆だった、といったこともあり得ます。そのようなことを防ぐためには、経済・社会活動と自然の関係についてのデータ・情報が共有され、それらが自然にプラスなものなのか、マイナスなものなのか、検証が可能になる必要があります。

今回のワークショップのベースとなっている「IPBESの報告書 」の付属資料4の中で、「自然とその変化要因に関するデータ」など多くの知識が不足していることが指摘されています。

TNFD:企業の情報開示に向けた動き

すでに社会が動きだしています。2023年9月18日に、企業や金融機関に対して、自然資本および生物多様性への依存と影響、それに伴う事業機会とリスクの情報開示を求めるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークが公開されました。

気候変動では、2022年3月期からすでに、プライム市場上場企業には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)またはそれと同等の枠組みに基づく開示が義務付けられています。この自然資本・生物多様性版がTNFDになります。

まだ、TNFDに関しては、企業に対して義務付けられているわけではありませんが、キリンホールディングス三井住友フィナンシャルグループMS&ADホールディングス農林中央金庫花王株式会社株式会社資生堂株式会社ニッスイ東急不動産ホールディングス九州電力グループブリヂストン積水化学工業株式会社など、すでに多くの企業がTNFDの開示を始めています。

デジタル×ネイチャーポジティブ

そういった中で、KDDI株式会社株式会社NTTドコモ日本電気株式会社(NEC)など通信事業会社やICT事業会社は、デジタルテクノロジーによるネイチャーポジティブへの貢献機会について情報開示をしています。

デジタルテクノロジーによるネイチャーポジティブへの貢献機会の例
出典:NEC TNFDレポート2023

カーボンニュートラルに向けてはバリューチェーンの中で、どこで、どれだけ温室効果ガスが排出されているのかを把握し、削減していくためのサプライチェーン管理トレーサビリティ管理を高度化していくためにデジタル活用が必須となっています。

TNFDのような動向を受けて、企業が自然との接点を知り、理解を深め、情報を開示する動きが加速していくことで、ネイチャーに関するデータが増え、デジタル技術によって、より良い自然との共生の術が見いだされていく、そういう好循環がまわる社会システムに向けて、世の中動き出しているといえるでしょう。

TNFDフレームワークについては以下の記事もご参照ください。

おわりに

ネイチャーポジティブに関心のあられる方は以下をご覧ください


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