連載小説『ネアンデルタールの朝』㉔(第一部第5章-3)
3、
麦茶をコップで一杯飲んでから、民喜は自転車に乗って近所の文房具店に出かけた。
曇ってはいるが、ジトッとするような蒸し暑さだ。セミの声を聴きながら、民喜は勢いよく自転車を漕ぎ進めた。
5分ほどで漕いだところで店に到着する。昔ながらの小さな文房具店で、数は多くはないが画材も取り扱っている。ここで新しい色鉛筆のセット、スケッチブック、そしてA3サイズの群青の色画用紙を購入するつもりだった。
色画用紙を店の棚から引き出したとき、民喜の心は微かに震えた。わずかに紫がかかったその深