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春はいつも消えたかった。

春になれば、いつも死ぬことばかり考えていた。
意識しなくても、望まなくても来る春。

成長も退化も望んではいなかった。
ただ変わりたくなかった。
あの頃は、自分で自分の意思を尊重出来ているとは思えなかったし、周囲や誰かに尊重して貰えているとも思えなかった。

ただ過ぎる季節と重なる歳。
進路希望には、否定されない事だけ。

自分の人生を制御出来ている感覚が身につかぬまま、自分の人生を制御しなければならない時が迫っている事に、いつも恐怖を感じていた。

雪解けの時が近付いて、街の一級河川の流れが一番に早くなる春。
私は、いつもぼんやりとそこから飛び降りる夢を見ていた。苦しさも切なさも無かったけれど、私の体が川を下り、やがて海に戻る。

分解され、海中で生き物の中に還った瞬間。
私の死が完成される時。

その瞬間こそ、私は一番輝いているんじゃないかと思っていた。私が自由でいられるのはその瞬間だと、本気で祈っていた。

あれから八年も七年も経って、
成人も向かえた私は今も生きている。

あの時の感情、感性が間違っていたとは思えない。全て諦め、夢も見ずに自分の置かれた現状をただひたむきに見つめていた。

あれから、押し流され今ある環境を直視して進んだのが現状なら、生も受け止めた甲斐があったと思う。

成長も退化も望まないから、今の自分のままで、進めて生きたい。ただそれだけ。

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