誰かの淹れた珈琲をのみたい
目まぐるしく変わる状況下では自分の足で立っておくことが精一杯だ
流されないように、でも抗わずに体重を預けつつ
わたしの人生の舵をとるのはわたしなのだということを忘れないようにして
いまより少し身軽な自分を思い描きながらカレンダーをめくる
ダークトーンの洗濯物が並ぶ中の、わたしの赤い靴下、ペールブルーの下着の上下、花柄のハンカチ
これは何の目印?
目印?
目印?
わたしがここにいる目印?
わたしはここにいないはずなのに
開け放した窓から風が流れる
床に寝そべるわたしの顔にカーテンがさわさわ当たるのだった
やさしいな、カーテンは
この風がやまないでと願っていると、陽が落ち月の明かりが降る
待ってよ行かないで
誰かの淹れた珈琲をのみたい
自分ではない誰かが淹れてくれた珈琲の香りでないと、治せない傷があるんだ
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