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ちょこっと音楽話 2 映画音楽を聴きながら

 8月にアラン・ドロンが亡くなったとき、YouTubeで「太陽がいっぱい」や「地下室のメロディ」を聴いた。その後、おすすめに映画音楽が出てくるので、懐かしい映画音楽を聴くようになった。
 若い頃に聴いていた映画音楽レコードも引っ張り出してみた。
 収録されている曲目一覧を見ながらレコードを聴いていると、これも観に行った、あれも観たと、昔日が甦る。そのなかから、脳裏に鮮明に現れた映画にまつわる過去の幾つかのシーンを書いてみようと思う。

トロイ・ドナヒュー主演「恋愛専科」と「パームスプリングの週末」の主題歌

 自分で手に入れた初レコードはEP盤のトロイ・ドナヒュー「恋のパーム・スプリングス」だ。中学生の時、クラスの女子の多くが、当時のTVドラマ「サーフサイド6」に出演していたトロイ・ドナヒューに“首ったけ”。ポータブルプレーヤーを持っている同級生の家に集まり、レコードをかけてツイストを踊った。クレイジーな女子中学生。なかには歌うことが好きな子がいて、「アルディラ」をアカペラを歌ってくれた。
 うちにはプレーヤーがなかったので、母の従弟の家に持っていってかけてもらった。そのお兄さんは、流行歌のレコードを聴いていたので、最近の中学生は外国かぶれだと、思っただろう。
 トロイ・ドナヒューの映画は大人になってから観た。ドナヒューは青春スターのイメージから脱却できず、30代以降は不遇な時代が続いたらしいが、後年、日本の映画やCMに出演したり、社会活動にも関わったり、充実した晩年だったようだ。Live Young は永遠に!

昔は映画音楽をよく聴いたなぁ

 「エデンの東」は「理由なき反抗」とともに19歳頃に横浜の相鉄名画座で観た。一緒に行った相鉄沿線に住んでいた友達が、後日、自宅近くの米軍基地にジミー・ディーン似の人がいる、といって連れてきた。本当によく似ていて驚いた。女の子にモテモテのようだった。
 「エデンの東」を聴くと、明日の心配もせず、その日暮らしの青春真っただ中の日々が思い出される。

 「ドクトル・ジバゴ」は高校時代に同級生のSさんと観た。英文科志望の彼女に誘われて街の洋画専門の映画館で観た。
 そういえば、Sさんはどうしているだろうか、昔は町田市の辺りに住んでいたっけ、と名前と卒業した学校名で検索してみた。学校の同窓会報に彼女の名前を見つけた。訃報だった。2021年に亡くなっていた。愕然とした。さらに検索結果を見ると、英国留学の後、結婚して夫氏のサポートでライフワークを会社組織化して代表を務めていたことも判明した。
 会社のウェブサイトに写真が載っていた。昔の面影が残り、きれいに年齢を重ねていた。小顔でスタイルがよくて、ちょっとおすましさんで恥じらいが顔に出て赤くなる、好ましい女性像の人だった。
 これからは「ドクトル・ジバゴ」を聴くたびに、ジバゴがラーラを呼ぶ声が聞こえ、あの映画館の湿った空気とSさんの息遣いを感じることだろう。

Love Is A Many-Splendored Thing~♪

 「慕情」にまつわるエピソードは、笑っていいのか悲しむべきか、何とも言えないお話。この映画はジェニファー・ジョーンズとウィリアム・ホールデン主演の香港を舞台とした悲恋物語。
 昔、知り合いに、この映画の主題歌「Love Is A Many-Splendored Thing」が十八番で機会があると歌う人がいた。在米時代、その人が商用で訪米したときに連絡があり会うことになった。歌うことが好きなことを思い出し、日本人町の白いグランド・ピアノがあるピアノ・バーにMさんを案内した。当時はカラオケ以前で、ピアノの伴奏でお客さんも歌っていた。彼は英語も歌も上手な人だったので、店内の人たちから拍手喝采が湧いた。
 次の日に悲劇は起きた。夜中過ぎに市警察から電話がかかってきて、Mさんを知っているかと、尋ねられた。事件に巻き込まれ、怪我をし、調書が済んだので病院からホテルに連れて行くとのことだった。警察官の話によると、Mさんは通りを歩いていて車に乗った2人組の女性に声をかけられ乗ったところ、身ぐるみ剥がれて車から放り出されたのだとういう。
 翌日、空港に見送りに行くと、左手から腕にかけてギプスで固定されていた。勤務先には事故にあったと連絡したようだった。
 それ以来、Love Is A Many-Splendored Thing~♪を聴くと、Mさんの得意げに歌を披露する姿と意気消沈した姿が、交互に思い出され、笑いがこみ上げてくる。

マーロン・ブランド「波止場」

 で、最後に私が一番好きな映画・映画音楽は? 残念ながら、私が持っているレコードの曲目一覧には載っていない。私にとって、映画の中の映画は、マーロン・ブランド主演、レナード・バーンスタイン音楽の「波止場」。
 冒頭の音楽が波止場の場面でドラムの音に切り替わるときと、主人公が打ちのめされてよれよれになっても立ち向かっていく最後の場面で、血がたぎるのだ。マーロン・ブランドも、レナード・バーンスタインの音楽も、最高! 






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