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もっと失敗したらええねん。

私は日本企業はもっと早く失敗して、早く立ち直った方が良いと思っています。
なぜなら、失敗からしか学べない事の方がビジネスでは多過ぎる為と言えるからです。

まず、日本と欧米のイノベーションには大きな違いがあると言われています。
欧米は「新しい価値の創造」を重視するのに対し、日本は「技術革新」に注力する傾向が強いと言われます。しかし、どちらが優れているというわけではなく、それぞれに強みと課題が存在します。

それでは、イノベーションをどう定義しているかから考えてみましょう。
欧米では「破壊的イノベーション」が重視され、新しい市場を創出することが目的となります。ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授は著書「イノベーションのジレンマ」で、「既存の市場に依存しない新しい価値の創造こそが企業の成長に不可欠である」と説いていることからも明白と言えるかもしれません。
例えば、テスラのEV戦略を挙げてみましょう。テスラの産む価値は、単なる電動化ではなく、「自動運転+シェアリング+ソフトウェアアップデート」という全く新しい移動体験を提供するものと言えます。

一方、日本では「持続的イノベーション」が主流で、既存技術の改良や市場の拡大を重視する傾向があります。
例えば、トヨタのハイブリッド技術は、内燃機関の延長線上にあるエネルギー効率の改善が中心です。これは、既存の市場での競争力を高める方向性です。
この違いは、企業の研究開発戦略にも表れています。日本企業の新規事業の多くは「既存市場の拡大」を目的とするのに対し、欧米企業の多くは「全く新しい市場の開拓」に挑戦しているとも言われています。

では、なぜこんなイノベーションの創出スピードに差異が出ているのでしょうか。日本企業のイノベーションが遅くなりがちな理由には、以下の3つが挙げられます。

・多様性の活用
欧米ではクロスファンクショナルチームの導入が進んでおり、新製品開発には技術者だけでなく、マーケター、デザイナー、心理学者、データサイエンティストなどが関わります。このチーム体制を導入した結果の成功率は向上が見込まれるとされています。
一方、日本の開発チームは技術者中心になりがちで、製品の機能向上には強いものの、市場ニーズの変化に対応しにくい傾向があります。

・失敗への姿勢
Googleの「X(旧:Google X)」では、年間数百件の新規プロジェクトが試作され、その90%が市場投入前に中止されるといいます。これは「失敗を恐れずに学ぶ」文化があるためと言われています。
対して、日本企業では、完璧な製品を求めるあまり開発期間が長期化し、競争力を失うケースが少なくありません。とあるデータ(ハーバードビジネスレビュー)では、日本の新規事業の平均開発期間は欧米の約1.5倍とも言われております。

・意思決定の仕組み
米国企業の半数以上が現場に意思決定権を委譲していると言われるのに対し、日本企業では稟議書方式が主流です。よく言われる表現として、日本企業の新規事業の承認には平均3週間を要するとも言われます。これにより刻々と変化する市場変化への対応が遅れるリスクが高まります。偉い人にハンコリレーしているよりやる事がある訳ですね。

加えて、ブランディングの側面でも大きな違いが存在する事例があります。
欧米企業は「体験価値」を重視し、ストーリーを通じてブランドを形成する傾向にあります。
例えば、IKEAは「理想のライフスタイルの提案」を打ち出し、Appleはかなり前のコンセプトにはなるのですが、「Think Different」というスローガンのもと、「テクノロジーが人々の創造力を解放する」という物語を伝えてきました。
一方、日本企業の広告は技術の優位性を前面に押し出す傾向があります。例えば、カメラの広告では「画素数」「ズーム倍率」などのスペックを強調しがちです。スマホの性能がここまで高くなり、差異が肉眼で判断つきづらい時代にスペックに意味などあるのでしょうか。

この違いは企業価値にも影響します。
Appleの時価総額が3兆ドルを超えるのに対し、日本企業の多くは同等の技術力を持ちながら十分な評価を得られていません。なぜでしょうか?
これは、「技術をどのように生活を変えるか」というストーリーテリングの違いに起因すると考えられます。実際、日本の電通のトレンド分析調査によると、欧米企業の広告の約80%は「顧客の人生をどう豊かにするか」にフォーカスしているのに対し、日本企業の広告の約70%は「製品の機能説明」に終始しているという調査結果もあります。

そんな中、任天堂のSwitchは「いつでも、どこでも、誰とでも遊べる」という「体験価値」を強く押し出しました。その結果、新しいゲーム機の形を提案し、全世界で1億台を超える販売実績を達成しました。これは、日本企業が技術力を活かしながら、欧米型の価値訴求を取り入れた成功例と言えるのではないでしょうか。

ここまで見てきたように、日本企業の強みである技術の深化と、欧米の価値創造を組み合わせることが、今後のイノベーションには不可欠と言えます。
先ほど挙げた、クロスファンクショナルなチームの構成も一つです。
技術者だけでなく、デザイナーやマーケター、心理学者など、多様な視点を取り入れることで、イノベーションの幅を広げることができます。

また、シリコンバレーでは、「まず試す」「ダメならすぐ修正する」という考え方が定着しています。スタートアップの名著「リーン・スタートアップ」でも有名ですね。日本企業も「試作スピードを上げ、実験と学習を繰り返す文化」を根付かせることが重要です。
日本の事例として挙げられるのは、ユニクロは3Dプリンタを活用して試作品の開発スピードを大幅に向上させていると聞きます。従来は数週間かかっていた試作品作成を1週間以内に短縮し、トレンドの変化に素早く対応できる仕組みを構築しました。

また、物語を伝えるブランディング戦略も最重要と言えます。
技術の優位性を伝えるだけでなく、それが「顧客の生活をどのように変えるのか」というストーリーを語ることが必要です。
前述して紹介した、任天堂のSwitchは、従来の「据え置き型 vs. 携帯型」という概念を超え、「どこでも遊べる」という新しい体験価値を提供しました。このコンセプトは広告やマーケティング戦略にも反映され、単なる「高性能ゲーム機」ではなく、「自由な遊びのスタイル」というストーリーを訴求したと言えます。
このように、技術をスペックではなく、体験の変革として伝えることで、より多くの人に響くブランドを構築できると言えます。

まとめとして、日本企業は技術革新に強みを持っていますが、市場創出やブランディングの面では欧米に学ぶべき点が多いのも事実と言えます。今後の日本企業の成功の鍵は、「技術深化 × 価値創造」のハイブリッド型イノベーションと言えるのではないでしょうか。

そのためには、
・異業種とコラボし、新しい視点を取り入れる
・スピーディに試作し、失敗から学ぶ文化を作る
・技術を「体験価値」として語るブランディングを強化する
この3点を意識することで、日本企業は独自の強みを活かしながら、新たな市場を切り拓くことができると個人的には考えます。

結局のところ、上記の挑戦的な行動には、結局は失敗がつきものです。「もっと失敗したらええねん」の精神で、挑戦することが第一歩と言えるのではないでしょうか。

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