見出し画像

登校日と休息日を週間時間割表の点数化で決めていた息子(小学生時代エピソード)

現在は19歳の大学生で(難関国立大の首席合格だが、普段は脱力系。時に過集中になるASD傾向あり)、情報知能工学を専攻している息子ナオ(仮名)。
勉強、友人関係、趣味、アルバイト、マラソン同好会サークル…、そこそこ充実したキャンパスライフらしいです。実家を離れ、亡き祖父母が暮らしていたレトロ風マンションで、自炊にも励みながら一人暮らしを楽しんでいる様子。

しかしナオが小学生の頃は、約10年後にこんな生活をしているなんて想像ができませんでした。彼は学校になじめず、友だちと遊ぶことも少なくて、家に引きこもりがちの日々。息子の暗い表情やイライラしている言動に、わたしはお手上げ状態でした。

家族だけでは手に負えない。わたしは学校の先生をはじめ、スクールカウンセラー、小児科発達外来のドクター、臨床心理士、信頼できる友人など、さまざまな人や場所を頼りました。
そんな出会いのなかで、小学生のナオがリラックスして生活できるようになった手立てのひとつを紹介します。

コンディションを点数化して伝える

ナオは小学2年生から5年生まで、学校生活と折り合いがつけられず、休んだり行き渋ったりを繰り返していました。その様子にわたしも心が乱れましたが、無理に行かせようという考えはありませんでした(その理由については、またの別の機会に)。
ナオは当時を振り返って「学校に行くのはキツいし、休んで家に居るときでも辛かった」と言っています。

その頃の彼は、大好きなモータースポーツのコンテンツやオンラインゲームに没頭しているように見えても、たいていイライラしていました。クラスメイトや登下校班メンバーへの不満を口にすることが多く「学校なんて燃えてしまえばいい」というような悪態もついていました

人工知能研究者の黒川伊保子さんによると、女子に比べて多くの男子は、自分の気持ちを言語化して伝えることが苦手らしいです。ナオもその傾向が見られました。

そんな彼の助けになったのは、自分の気持ちやコンディションを1~10の数字を利用して、点数化する方法でした。これは小児科発達外来の臨床心理士さんのアドバイスを取り入れたものです。

通常の状態は5ポイント。気分や体調がよかったら「7ポイントぐらいのいい感じ」。不安に押しつぶされそうな時は「2ポイントぐらいのパワー」。このように、自分の気持ちや状態を数字で表現して伝えるのです。

例えばナオがイライラしていたら「今の気分は何ポイント?」と聞いてみる。「3」というだけのそっけない返事。「なにかに困っているの?」と問いかけると「漢字の宿題がイヤだ」というような会話を交わしていました。

息子は数字を使ったコミュニケーションをするうちに、ブチギレたりイラついたりすることが少なくなりました。わたしも「そうか今の状態は3なのね。ところで今、夕ごはんに君の好きなポテトサラダを作っているんだけど、よかったら味見してみる?」という感じで、落ち着いてやりとりするようになっていきました。

ナオは幼児の頃から、数字が大好きでした。車のナンバープレートやトランプやUNOカードの数字、雑誌の通し番号などにも興味津々。小2からはオンラインゲームに馴染んでいたので、自分のエネルギー状態をポイントに置き換えやすかったのかもしれません。

そんな彼に合わせたコミュニケーション方法を教えてくれた心理士さんには、感謝しきりです。やはり専門家を頼ってみるものだとなと思いました。わたしたち親子には、とても有効な手段でした。

週間時間割表を点数化して見通しをたてる

ナオの小学校では金曜日に、次週の週間時間割表が配布されていました。いつのまにか彼は、そのひとコマずつに点数をつけ、一日ごとの合計ポイントを計算していました。気持ちや状態を点数化する方法を、彼なりにバージョンアップさせているのだと、わたしは解釈していました。

ナオの時間割点数化の例。小学校生活は細かい決まりごとが多い💦


授業の内容だけでなく、朝の活動や休み時間の予定(縦割り学年グループでの遊びが決まっていたり、委員会活動があったりした)、給食のメニュー、行事のあれこれまで、自分の好き嫌いだけで点数をつけていました。

そして「来週に休むのは、◯曜日だな」と、わたしに予告。「なるほど来週は◯曜日が君のリフレッシュ休暇候補か。じゃあ母の予定もそれを踏まえて立てておくわ」←当時のわたしはほぼ在宅で仕事

こんなふうにサラッと返事していても、わたしの内心は戸惑いだらけでした。

う~ん、キツイところを避けて、あらかじめ休む日を決めてしまうっていかがなものか? 困難からいつも逃げる人に成長してしまうかも? 大半の子どもたちは、苦手なこともがんばっているような気もするし…

けれども週に1度ぐらいなんだし、計画休日を決めておくのは、悪くないのかも? わたしが学校を自主的に休むようになったのは、高校生や大学生になってからだったなぁ。小学生のときは、嫌なことがあっても無理に登校して、その後に高熱が出たり原因不明の蕁麻疹に悩まされたりした。そうなる前に調整することが、本来は大事なのかもしれない。

そういう観点からすると、ナオは小学生からストレスコントロールができているのでは? この調子でいけば、成人してからブラック仕事に翻弄されたり、過労でダウンするまで働いたりするような生き方はしない気もする。親バカな発想かもしれないけど、あれこれ心配するより、まず信頼して彼の好きなようにやらせてみよう。

逡巡した結果、「ナオが休む日は、彼がリフレッシュできるように、わたしもご機嫌で過ごそう」と決心していました。


休みを決められるから休まなくなる

自主的に休みを計画するようになって、ナオは気が楽になったようです。合計ポイントが低い日でも「まぁ行ってみようか~」という感じで、少しずつ登校するようになっていきました。

ハードルが高い日に覚悟を決めて登校してみれば、案外おもしろいこともあったり、また苦手なこともなんとかクリアできたりもする。逆に「楽勝だぁ」と考えていた日に、トラブルが発生して、ヘロヘロになることもある。シミュレーションどおりには、運ばない現実を学ぶ日々。

小学生時代のナオは、今よりずっと*感覚過敏がありました。そのせいもあり、見通しが立ちにくい新しいことが苦手でした。また、いやな体験の記憶が鮮明に残ってしまうタイプだったので、不安になる場面も多かったようです(自閉スペクトラム症の特性が強かった)。

「苦手なことが多くてもなんとかなるし、どうにかやっていけることもある」

そんなふうにナオが思えるようになったのは、彼が小学校6年生の頃。小4と小5の時に彼の担当だった、通級教室のT先生の影響が大きかったと思います。苦手なこととの折り合いのつけ方、気の合わない人との関わり方、ヘルプの出し方などを、T先生は彼と一緒に丁寧に考えてくださいました。

 そのT先生との詳しい話は、また改めて。

自主的に休みの方法を決めることで「考える」「実行する」「検証する」「納得する」というプロセスを、息子は体験することになりました。
その当時は、親子ともそのような意識もなく、ただ苦肉の策でやっていた感じでしたが。

自分に合った工夫や脱力の仕方、ピーキングの作り方。部活の陸上競技で学んだ部分も大きいと思いますが、高校や大学受験もその方法があったから乗り切ったのではないかと思います。

成人して一人暮らしをしている今も、その体験を生かしてほしい。
大学生活はこれまで以上に、自身でさまざまな選択をする機会が増えると思うからです。

引きこもり小学生だったから、観察できた息子の試行錯誤の日々。中学生、高校生、大学生となれば、どんどんわたしの知らない世界が増えていく。

「心配するより信頼する」

頭でわかっていても、子離れはまだ下手なわたしです。

*感覚過敏
聴覚や視覚、味覚、触覚などの感覚に敏感に反応し、日常生活に困難を抱える状態のこと

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集