シェア
彼はヘッドフォンを外そうとしない 身じろぎもしない彼の深く透明な瞳は 私たちが知らない音の色合いに旅している もう15年ほど前のことだが 彼はよく蛇口から落ちる雫の音に魅せられていた 誰もいない風呂場の蛇口をほんのすこし緩め 浴槽の水面に弾ける水音に耳を傾け2時間も3時間もその場を動かなかった 「今日は泣いているよ」 「今飛んでるんだ」 「仲間はずれでかわいそう。。」 時々ポツンと言葉を漏らす 命くんがアスペルガーだとわかったのは2歳になった時… 4歳の