ドイツ チップは人生をラクにしてくれる?
みなさんは、チップと聞いて何を想像するだろうか?
チップとデール?
燻製を作る時の桜チップ?
パソコンや機械などの(半導体)チップ?
海外旅行をするとき、レストランやホテルで支払うチップ(お金)?
チップと聞けば、私はチップとデールを想像するのと同じくらいで、お金のチップを想像する。ちなみに、チップとデールで言えば、どちらがチップでどちらがデールなのかは未だに覚えられない。
日本やアジアではチップという習慣がないため、日本人である私たちにとってはヨーロッパやアメリカなど、チップの文化がある国に旅行するときにだけ意識するんではないだろうか。
学生の頃は、チップの文化がある国に行くのは少し面倒だなあ、と思っていたこともあった。
ドイツにはチップの文化がある。(それほど厳格ではないが)
私自身、ドイツに来てからチップを支払ったのは美容室に行ったときにドイツ語をうまく話せない私に丁寧に対応してくれたネビール(美容師さん)に”感謝の気持ち”を込めて渡した。
日本人である私からすれば、馴染みのないこのチップの文化。旅行もたくさんしてきたけれど、いまいちどんなタイミングで、いくらくらいのチップを渡せばいいかなどの相場はわからない。
そんな”得体の知れない”チップが教えてくれた人生を少し上手に生きる方法を共有したいと思う。
チップと上手く付き合うコツ
チップ(英: tip、英: gratuity)とは、規定料金とは別に、サービスを受けたことに対して心づけとして相手に渡す現金を指す。
と、「チップ」と検索するとまずは大抵この説明が表示される。
しかし、もう少し詳しく調べていくと、また違った見解が出てくる。
もしあなたがデラックス以上のホテルに滞在するなら、まず「チップは義務である」と心するところから始めましょう。日本人は習慣の違いのせいか、いつまでたっても「サービスは無料」、受けて当たり前と思っていますが、海外、特に高級ホテルにおいては、サービスはあくまで「有料」なのです。
なお、日本には「心付け」という習慣がありますが、こちらはチップとは異なり、「気持ち」なので、渡しても渡さなくてもいいもの。給与に組み込まれているということもありません。この「心付け」と「チップ」同一視してしまうと、大間違い。つい渡さなくてもいいか、と思ってしまいがちですので注意しましょう。
簡単に言えば、チップとは、「サービス料」のことを指す。
そう、”感謝の気持ち”ではないのだ。
丁寧なサービスを受けて”当たり前”な日本では、なかなかこのサービス料というのが想像しづらい。
「サービスが有料」というのがいまいちピンとこないのではないだろうか。
だが、日本にも実はチップは存在する。
チップ文化が定着しなかった日本。その理由は、日本ではホテルや旅館、レストランを利用する場合、サービス料が利用料金に上乗せされていることが多いからだ。
サービスは形のない、見えないものではあるけれど、対価が支払われるべきものなのだ。
私が1月から働き始めるレストランでも、給与とは別にチップが支給される。
欧米やヨーロッパでは、レストランやホテルスタッフなど、サービスをする仕事では給与にチップが組み込まれていたり、給与とは別にチップが支給されることがある。
今まではチップを支払う側しか経験したことがなかったけど、チップをもらえる側になるのは少しワクワクする。
今までは海外旅行のときに、目的地の国のチップの有無、相場などを調べて大体の金額を渡してみたりと正体不明だったチップ。学生の頃はケチることもあった(ごめんなさい)
それが自分の生活の身近なものになり、チップ文化がある理由、意義を知れば上手く付き合っていけるのではないだろうか。
チップは人生をラクにしてくれる?
オミクロン株などでコロナがまた話題に上がるドイツの日常。それでもクリスマスシーズンで街も人も普段よりは賑わっている。
私の彼の仕事は郵便屋さん。クリスマスシーズンということもあり、毎日、多くの小包みや手紙を配達しているようだ。
日本の郵便屋さんや配送業者さんのシステムはわからないが、私が暮らしている今の街(ドイツ・オイティン)では、エリアごとに配送担当者が決められていて、大抵は自分のエリアというのがあるそうだ。
そのため、郵便屋さんである彼は毎日、そのエリアに訪れる。配達先であるお店の方や住民は、彼にとって見慣れた顔ばかりなのだ。逆も然り、彼は見慣れた顔の郵便屋さんなのだ。
ドイツの北の小さな街ということもあり、近所付き合いも多いからこそなのかもしれないが、人と人との距離が近い。
郵便屋さんである彼もこのクリスマスシーズンは、チップを普段よりも多くもらうそうだ。
「サービス料」としてなのか”感謝の気持ち”としてなのかは人それぞれだと思うが、チップ(プレゼント)を毎日もらい、嬉しそうにしている。
チップもお金ばかりではなく、チョコレートやビスケット、手紙など、毎日いろんなものを持って帰ってくる。
配達時に直接、会えなくてもドアノブに「郵便屋さんへ」と袋が提げてあることもあるそうだ。郵便屋さん宛てだけではない。ゴミ回収の人宛てに、チップ(プレゼント)が入った袋がゴミ箱にたくさん提げられているのも見かけたそうだ。
人と人の距離を近付けてくれるチップ。素敵じゃないだろうか。
日本ではどうだろか。近所の人の顔や名前をどれくらい知っているだろうか。コロナが遠ざけた人と人との距離は離れていく一方ではないだろうか。
コロナのせいで、「人との繋がり」がいかに大切で、恋しいものか、誰もが感じたはず。
チップは、繁忙期こそ弾む。日本では、繁忙期と聞けば、「残業」「終電」「疲労」「睡眠不足」などマイナスなイメージが最初に来るのではないだろうか。
郵便屋さんにとって、クリスマスは超繁忙期に当たる。それでも彼は、クリスマスシーズンを楽しみにしている。なぜなら、チップが弾むからだ。
「チップ=お金」とは限らないが、仕事のモチベーションをあげてくれることに代わりはない。
チップが働く原動力になるというのは、仕事をして生きていく限り、すごく重要な要素になると思う。
仕事(働くこと)が、楽しみになると、人生も少しラクになるのではないだろうか。
チップはサービス料であると同時に、やっぱり感謝の気持ちでもあると思う。
「ありがとう」と言われて、嫌な気持ちになる人がいないのと同じで、チップをもらって、嬉しくない人はいないと思う。
自分がサービスを与える側の仕事をしているならば、給与ももちろんだけど、相手からの「ありがとう」の言葉が働く活力にもなる。
実際、私が旅行会社で働いていたとき、どんなに仕事がしんどくても、ブラック企業と言われる業界でも、お客様からの”ありがとう”や”またお願いしたいです”、という言葉に支えられていた。
いきなり日本でチップ文化を始めます、とはいかないにしても、「ありがとう」は伝えることはできる。
形式的な、機械的なありがとうではなく、心からのありがとうを。
与えてもらったサービスに、チップの気持ちを添える。
郵便屋さんや配送業者の方に、チップとしてお金は渡せなくても、クッキーやチョコレートなどは渡せるかもしれない。(受け取ってもらえないかもしれないけれど)
暑い夏の日なら、冷えた缶コーヒーを渡せるかもしれない。
寒い冬の日なら、心温まる甘いチョコレートを渡せるかもしれない。
そうやって、「ありがとう」をたくさん伝えて、
「ありがとう」をたくさんもらえば、
なんだか人生が満たされた気がしてくるかもしれない。
人生に必要な幸せや幸福感って、そんな小さなことで結構満たされる。