完走はいつも選択で決まる〜わっかない平和マラソン_20230903〜
最北端の地、稚内。
そりゃそうだ。
風力発電の風車が林立してる。
風が強いのはデフォルトだ。
そりゃそうだ。
どんな地図だってここは海沿い。
高い建物もない。
日陰なんてあるわけがない。
2023年9月3日
ホテルのエントランスを出ると
「まじか!」ってほど蒸し暑い。
時刻は6:30
空は快晴
9:00のスタート時には
さらに暑くなっていることは確実だった。
「今日のレースはしんどくなるぞ」
スタート地点の宗谷岬からは
フィニッシュ地点付近が目視できる。
途方もない距離の日向の道が、続いていた。
ここから、
景色の変わらない42キロを走ろうというのだ。
どうかしてる。
向かい風7メートルは、
(一部では9メートルとも)
5キロ地点ですでに堪えてた。
いつもの感じでは走れず、
余計な力が身体をこわばらせる。
普段より体力の消耗が激しく、
早く疲労を感じる。
「これ、完走できるのか?…」
10キロを超える頃には半ベソだったけど、
まだ5時間を切れるペースで走れてた。
「とにかく次のエイドまで行ってみよう」
15キロを過ぎるとコースは海沿いを外れ、
向かい風が少しだけ弱まったように感じた。
折り返してきた仲間ともすれ違いはじめ、
ハイタッチでお互いを励ましあった。
些細なことだけど、とても大きな活力。
応援の不思議な力。
「よし、もうしばらく頑張ろう」
20キロを過ぎるとコースは再び海沿いへ。
日陰が欲しい…
この少し前から目がチカチカし始めていた。
「手を打たなきゃ。」
まずトイレに入ってみる。
冷たい水で手を洗い、
顔も洗って気分を変えよう。
エネルギーもミネラルも補給した。
しばらく歩いてボディスキャン。
「まだいけそう。」
23キロ給水ポイントまでは
走ったり歩いたりして
攣りそうな足を観察する。
痛みは想定の範囲内だ。
5時間を切ることは手放して、
完走に専念すると決める。
「次のエイドまで3キロ、走ってみるか。」
歩くより走ったほうが多分楽だ。
100キロウォークの経験がそう告げている。
26キロ。コーラがうれしい。
対岸に見えていたフィニッシュ地点の目印が
近づいてる。
沿道には地元の皆さんが暑い中
応援に出てくださってる。
『風に吹き飛ばされるんじゃないよ~』
相変わらず風は辛いが、
おばあちゃんの応援が優しくてうれしい。
小さな子どもも一緒に走ってくれる。
「あと16キロ。行こう。」
30キロ。12:50。
残り12キロ歩いてもおそらく完走は可能。
8分/㎞で走れば14:30にはフィニッシュ
と思ったとき閃いた。
「14:25を目標にしよう」
グロスで5時間25分を目指すことに決めた。
まずは8分のイーブンを保てるか。
2キロ程度実験してみた。
「いける」
補給をしながら、全身を観察しながら、
逆算と配分。
頭を使うと走りは無意識になるから、
しんどさには鈍感になる。
メンタルはずっと楽だ。
32キロを超えれば残る距離は一桁。
完走を確信してひたすら進む。
36キロ地点。
私設エイドで嫌いなはずのメロンを食べた。
今まで食べた中で一番おいしかった。
23キロのエイドよりずっと元気だった。
しっかりと走れているのを自覚していた。
フィニッシュ地点はもう目の前だ。
残り5キロの折り返しに差し掛かるころ、
すでにフィニッシュした仲間が見えた。
待っててくれたのが嬉しい!
折り返してくる仲間とも次々と会えた。
お互いに完走を確信して喜びあった。
沿道からは『あと少し!!』の応援。
嬉しいしありがたいけど、
「この5キロがとてつもなく長い…(苦笑)。」
時計とにらめっこしながら、
算数しながら頑張った。
昨日行ったノシャップ岬の灯台が見えてきたのに
折り返し地点はなかなか見えてこない。
もどかしい。
ようやく最後の折り返しを超え、
14:25のフィニッシュも確実になったところで
仲間に追いついた。
『一緒にフィニッシュしない?』
「14:25フィニッシュでもいい?」
ゴール直前で歩くという調整をした。
RUNを始めて12年。
初めて私は、
余裕ある気楽なRUNを経験していた。
沿道からは
『あと少しだから頑張って走れ‼』の応援!
そうはいかない(笑)
ゴールテープ直前
「5時間25分でフィニッシュしたいんです!
息子の誕生日が5月25日なの!」
『え~すてき~』と言っていただき、
スタッフの皆さんと10カウントダウン。
5時間25分01
大満足のフィニッシュだった。
マラソンが人生と似ているといわれるのは、
そこに選択の連続があるからだ。
何度走っても、
自分の中の天使と悪魔のやり取りを感じる。
完走はあきらめない選択をし続けた結果だ。
満足は自分の本当の望みを叶え続ける選択が
できた時にやってくる。
走ること自体は決して楽しいわけじゃない。
どうかしてるとも思うし、
決して好きではないのだけれど(笑)
でも、
走ることで得られたのは
かけがえのないことばかり。
数え上げたらきりがない。
なにより、私は、
走っている自分が大好きだ。
走れることにありがとう。
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