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12月にオススメのうどん

 12月になりました。今年もあと一ヶ月で終わりです。ということは今年の寿命はあと一ヶ月な訳です。どんなに今年を終わらせないと願っても、どんなに今年が死ななように願っても、無情な事に今年は後一ヶ月で死んでしまうのです。枯れゆく葉のように、死にゆく昆虫のように、時間と共に今年という得難い年は死んでしまうのです。そんな死にゆく今年をあなたはどうやって過ごしましたか?年初に今年こそはと大層な目標を掲げて実際に手をつけてはみたものの、やっぱりそのうち手をつければいいと今まで放っ散らかして、今になって慌てて手をつけてとりあえずやってはみましたよとアリバイだけ作ってまた来年となってはいませんか?

 こういう調子のいいことばかり言ってあとはそんなこと忘れたと言わんばかりに放っ散らかすという態度は意外にも関東人に多くて、それはやっぱり年越しそばなんか食べてるからだと思います。そばというのはツルツルと喉に入るから口に何も残らないんですよ。そばは歯応えもないし、食べた時にジャリジャリと砂のような感触はありますが、それだけなんです。それはやっぱり嫌なことを忘れて年を越そうということなんですかね。それはそれでいいことなのでしょう。だけど私は思うんですよ。そんな能天気に何でもかんでもアホみたいに都合よく忘れるからいつまで経っても君たちは成長しないんだよと。年を乗り越えるには何が必要か。それは強いコシです。何事にも揺るがないうどんの麺のような強いコシなんです。年越しにうどんを食べて来年に向かって英気を養う。これが真に正しい年の越し方なんです。

 というわけで私が正しい年の越し方を教えます。年を越すにはそばではなくて年越しうどんを食べるのです。しかしそれはただのうどんではありません。ただのうどんでは年は越せませんからね。では一から年越しうどんの作り方を教えましょう。まずはなまるうどんでかけうどんを注文して下さい。そしてかけうどんを受け取ったら薬味コーナーに行きましょう。薬味コーナーには年越しうどんを果てしなくめでたくする薬味の三福神と呼ばれる天かすと生姜と醤油があります。まずはその中から天かすを富士山より高く、中国の伝承に伝わる泰山のようにどんぶりに振りかけましょう。次にその上から水を含んで琥珀のようにみずみずしく輝く生姜を大さじ一杯掬ってどんぶりに落としましょう。最後に醤油です。醤油は古来より黒龍に例えられためでたい薬味といわれています。それを五回まわしでかけましょう。何故五回かというとご縁があるようにというおまじないのためです。

 こうして出来た年越しうどんは普段は天かす生姜醤油全部入りうどんとして全国で食べられていますが、皆さんはこのうどんのもたらす奇跡的な美味を毎日食べているせいで、このうどんの真のありがたみを忘れているようです。だからこれを機会に年越しそばから年越しうどんに鞍替えして真に年越しできるようになりましょう。今年の締めは来年への英気を養い、元旦も年明けうどんを食べて明日への活力を貯める。これこそが今日本人に求められる真の年の越し方なのです。


 というわけでこれで今月のうどん記事は終わりです。ではまた。ちゃお!

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