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『情熱先生』全身女優モエコスピンオフ

全身女優モエコのスピンオフです。情熱先生ってこんなドラマだったんですよ。

 教室では珍しく生徒たちが全員揃って新任教師の登場を待っていた。しかしこの問題児だらけのクラスの連中が真面目に教師が来るのを待っているはずがない。生徒の何人かが入り口の戸を見て意地悪く笑った。それを見た真面目な生徒たちは不快そうな顔をして目をそむけた。

 しばらくすると外から下駄らしきものを履いているような足音が聞こえてきた。もしかしてこの下駄の音は新任教師のもの?だけど今どき下駄だなんて。もう戦争が終わってから二十年近く立っているのにまだ下駄かよ!一体今度の教師は何歳なんだ?まさか腰の曲がったジジイじゃねえだろうな!

 その時大きな音を立てて戸が開いた。すると戸の間に挟んでいた黒板消しが入ってきた教師の頭に落ちて頭が真っ白になってしまった。教師は若い長髪の男である。彼はこの突然の出来事に驚いてその場に立ち尽くした。それを見たクラスの生徒たちは一斉に大爆笑した。教師は長い髪を振り払って粉を振り払うと、黒板消しを掴んでこんないたずらをしたのは誰だ!と生徒に向かって叫んだ。しかし生徒たちは誰も手をあげなかった。教師は生徒たちを睨みつけもう一度叫んだ。

「俺は今日から君たちの仲間になろうと人間に向かってこんな酷いいたずらをしたのは誰だと聞いてるんだ!答えろ!」

 しかしそれでも生徒たちは誰も手をあげなかった。だから教師はまた叫んだ。

「お前らいい加減にしろ!黒板消しが勝手に戸に挟まっていたとでもいうのか?」

「先生のいうとおりじゃないですか?多分黒板消し勝手に戸の間に入っちゃたんですよ」

 生徒の一人がこう言うとクラスの生徒達はまた大爆笑した。その笑いがどよめく中教師は履いていた下駄を脱いで、その下駄を今喋った生徒に向かって投げつけた。下駄は生徒に見事命中して生徒は激痛のあまり泣いて床にのたうち回った。教師は泣きながら生徒を掴んでボコボコにし始めた。

「新しく入ってきた仲間に向かってこんな事をするなんてお前は人間のクズだ!俺が身を持ってお前に人間とは何かを教えてやる!」

 これが後に情熱先生といわれる若い教師と問題児だらけのクラスの生徒たちの初めての出会いだった。

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