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昔話

「昔話がしたいんだ」と彼が言った。私はとうとう彼が自分の事を話してくれるのかと嬉しくなった。思えば彼は付き合い始めてから何一つ自分の事を話してくれなかった。私はそんな彼に対して自分は信用されてないのとか。やっぱり遊びなんだとか色々疑って時々落ち込んでいた。だけど私は彼と付き合い続けていればきっと彼は私に全てを打ち明けてくれるはずと思ってその日をずっと待っていた。今やっとその日が来たのだ。私は彼を見つめて待った。いいのよ。あなたにどんな過去あろうと私は全て受け入れる。彼が犯罪者でも私の彼に対する愛は変わらない。さぁ話してあなたの全てを。彼も私を見つめた。そして私の顔を見て安心したのか微笑むと、ゆっくり話し出した。

「ある村におじいさんとおばあさんがいました。おじいさんはやまにしばかりにおばあさんはかわにせんたくにいきました。おばあさんがかわでせんたくしているとうえからおおきいももがながれてくるではありませんか。おばあさんはびっくりしておもわずももをりょうてでつかんできにむかってぶんなげました。きにぶつかったせいでももはわれてそのなかから……」

「昔話ってそれなの?」

「うん、そうだよ。俺昔話が好きでさあ、YouTubeとかで昔話観てるんだよねぇ」

「……あのさ。その桃から出てきた赤ちゃんそれからどうなるの?」

「ああ!あの赤ちゃんは木にぶつけられたショックで桃のなかで頭割れて死んでたんだ。これでめでたしめでたしってことさ」

「あなたって最低ね。失礼するわ。お金全部あなたが払ってね」

「おい、いきなりどうしたんだよ!まだ昔話終わってねえんだぞ!あと99話話さなきゃいけないんだ!帰るならせめて金ぐらい置いてけ!俺一人じゃ料金払えないだろうが!」

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