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夜更けの挨拶

 こんな夜更けに突然どうしたの?と僕は彼女に聞いた。僕の問いに彼女は寂しかったからと答えた。夜更けの電話なんてのは決して悪くないシュチュエーションだ。だだ電話に出たタイミングが悪かった。今僕はトイレで大をしていたのである。彼女に優しく言葉をかけているこの瞬間も生々しく排便の音が鳴っている。彼女はその音に気づいたのか、僕に今何かご飯作っているのと聞いてきた。どうやら彼女はフライパンで何か炒めていると思ったらしい。僕は笑ってそうだよと誤魔化す。だが、誤魔化しの限界はすぐにきた。排便が最後に差し掛かって突然下痢状態の便とオナラの音が一斉に鳴り出したのである。それはまるで戦場のラッパのようであり、不幸の鐘のようなものでもあった。その音を聞いていたであろう電話の向こうの彼女はずっと黙っていた。そしてしばらくして彼女は言った。

「あ、あのお取り込み中のとこごめんね。電話切るね」

 それから彼女は全く僕に電話をくれなくった。それどころかLINEもメールもブロックしてきた。当然あの後一度も会話をしていない。彼女がひたすら僕を避けるからだ。せっかく付き合う寸前までいったのにたった一つのミスでこんな事になるとは。僕はこの経験で次のようなことを学んだ。

『トイレの最中は電話に出るな!』

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